ヤグルマソウ
寒気を感じ、私は目を覚ました。
あのまま寝てしまっていたため、なにも掛けないまま今まで眠っていたようだ。
「寒っ」
身震いしながら起き上がると、ちょうど昼を過ぎたくらいの明るい日差しがカーテン
越しに見えた。
(よし…。今日はちゃんと起きられた。)
気付くと朝、気付くと夜、と言うことが多い私にとって、今日みたいにきちんと目標通りに起きられたことは珍しい。
「ふう…準備しよう。」
まだ寝ていたい気持ちを抑えながらのそのそと起き上がると、外の毛布を取り込みに行く。
取り込んだ毛布は、ちょうど日光をたっぷりと浴びてふんわりと柔らかい触り心地になっていた。
(まだ日が当たりそうだけど、取り込み忘れる方がまずいし。)
私ならやりかねない。
それで何度、冷たくなった布団で寝たことか。
取り込んだ後は、小さく小さく畳んで、大きめのシーツで包む。
それでも、両手では抱えられないほど大きい。
なんとか玄関まで包みを運ぶと、きれいに拭いた荷車の上に載せる。
その後はバスケットに軽い夕食を入れたり、外出用の服に着替えていると、あっという間に日も暮れ始めた。
夜に目立たないような暗い紺色の上下を身に着け、大きめのカバンに魔術書を入れる。
日が落ちると気温が下がるため、ローブも入れる。
(…念のため。)
カバンには、私以外中のモノを取り出せない様魔法をかけておく。
(信用してない訳じゃないけど…念のためにね。)
言い訳がましく自分に言い聞かせ、肩にかける。
「こんなものかな。」
ひとり呟き、一応箒も持って行こうと庭へ戻ると、以前に白蛇からもらった木が目に入った。
最初はただの細い枝だったのが、今では私の背を越すほどに成長している。
それでも、ある程度まで行くと成長を止めるらしい。
今ではミカンの木ほどの大きさで止まっているが、それでも一週間おきくらいに春夏秋冬を楽しませてくれている。
(今日は…秋なのかな?)
赤く色づいた葉にそっと触れると、黄色い実のついた枝がとれた。
「あ!」
慌てて受け止めようと手を伸ばすも、枝はそのままポトリと地面に落ちてしまった。
(えぇ~なんか不吉だな。)
そう思ったものの、この枝も一応持って行くことにする。
用意は整った。
あとはリオンが下りてくるのを待とう。
ビスケットをつまみながら、一階のダイニングに座っていると、リオンがやってき
た。
(あ、来た。)
手には、あのフードを持っていた。
テーブルに着いたリオンに、ビスケットの乗った皿を押しやる。
「あと30分くらいで出発でいい?」
食事を持ってこようと立ち上がった私を、リオンは手で制した。
「いや、今すぐでもかまわない。」
そう言ってビスケットを一口食べると、彼も席を立った。
「おっけー。じゃあ、行こうか。」
ヤグルマソウ:出発・幸福感
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