フジ③
それから一週間ほど、シェアハウス状態は続いた。
リオンは相変わらずの無表情だが、昼は客室で寝、書斎にこもって本を読んでいるだけで私とは生活時間が真逆だったため、特に負担に感じることもなかった。
(食べ終わったお皿も洗ってくれてるし。)
変化と言えば、多少話すことが多くなったくらいだろうか。
それでもまだ、おしゃべりと言うほどではなかったが。
(それにしても…。)
私はちらりと、ダイニングで夕食、まあ彼にとっては朝食だが、食べているリオンを盗み見た。
(全然魔力が戻ってない…。)
一週間たっても、リオンの魔力は中々元のようには戻らなかった。
(なんでだろ…。体調はよさそうなのに。)
やはり何か理由があるに違いない。
(う~ん…。)
「何を見ている。」
じっと見つめる私はぎろっとにらまれた。
「どう?魔力の調子。」
私が聞くと、リオンは表情を暗くした。
(やっぱまだなんだ…。)
どうしたものだろうか。
私には魔法を相談できるような知り合いも特にいないし、それに二人とも今はうかつに外出できない。(知り合い…?)
いるではないか。
安心して会うことができる一人、いや、一匹が。
(でもいきなり知らない人を連れて行って会ってくれるかな。それに魔力のことも知っているかどうか…。)
でも、ずっとこのままの状態でいるわけにはいかないだろう。
イチかバチか、会ってみるしかない。
「ねえ、合わせたい人がいるんだけど。」
私の言葉に、リオンの警戒が一気に高まった。
「いや、正確には人…じゃないの。蛇…なんだけど。」
「蛇?」
リオンの表情が、警戒から「何言ってんだこいつ」と言うものに変わる。
「そう。森で出会った蛇なんだけど。今は蛇さんくらいしか、会える人が思いつかないから。」
「それで、何のために会うんだ?」
「あなたの魔力を回復させるために決まってるでしょ。」
私はそう言って、スープを一口飲んだ。
(蛇さんが知っているかわからないけど。)
「そいつは信用できるのか?」
リオンはまだ警戒しているようだ。
「まあ…多分?」
どちらかと言うと、白蛇がリオンを信用するかどうかの方が重要だ。
これは先手を打っておいた方がよさそうだ。
「ただ、条件がある。」
「またか?」
「そう。蛇さんがあなたに会ってくれるかは確信が持てない。でも、もし会えたなら、きっと何か進展があるはず。その代わり―」
私は、なぜだかあの白蛇なら何か知っているのではないかという予感がしていた。
「つまりこのことは、誰にも公言するなと?」
リオンが言った。
「…そういうこと。」
私は頷くと、相手の返事を待った。
「…そうだな。私もずっとここにいるわけにはいかない。できることは何でもやろう。」
少し乗り気になってくれたようだ。
「よかった。じゃあ明日の、日が沈んだらすぐ出発ね。道は案内するから。」
私はスープを飲み干すと、お皿を持って立ち上がった。
「準備しておいて。あ、武器は持って行かないでよ。」
そう言ってダイニングを後にした私は、少しうきうきした気持ちでキッチンへと向かった。
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