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ユキワリソウ

「ふう…」


少年がキッチンから立ち去ると、一気に体から力が抜け、私はそばの棚に寄りかかった。


緊張で心臓がバクバクと高鳴っている。


恋の高鳴りでないのが残念だ。


(でも、ひとまず場が収まってよかった…。)


私は気を落ち着かせるように何度か深呼吸をすると、棚から離れて皿を取り出した。


さっき作ったばかりのフィッシュパイを切り分け、皿に盛りつける。


一応、体にいい薬草を煎じて作った薬湯も持って行くことにする。


「よし…いくか。」


気を持ち直すように掛け声をかけると、私は台所を後にした。




(それにしても…あの子の魔力はすごい強いみたいね。)


昨晩、魔力を封じる魔法をかけておいたはずなのだが、あの少年はそれでも魔法を使っていた。


(すごいな…魔力どれくらい強いんだろう。)


同じ魔法を使える身として、少し興味がわく。


(まあ、私の場合は身を持って体験したようなものか。)


廊下の窓から、昨夜からそのままの結界が目に入った。


張りなおす時間もなかった結界は、かろうじて機能してはいるが、ほとんど壊れかけている。


「あとで直さないと…。」


ぼそりと呟き、廊下を進んでいると、少年のいる部屋に着いた。


「はあ…。よし。」


心を落ち着かせ、ドアを開ける。



少年はベッドに座っていた。


「体調はどう?」


おずおずと聞いてみる。


「…平気だ。」


少年はそっけなく言ったが、まだ魔法が効いているせいか顔色が悪い。


「これ作ったから、置いておくね。」


そう言って、サイドテーブルに料理を置き、香を窓際へ移動させる。


(香はまだ残っているみたいだけど、追加しておいた方がいいかな…。まだ余ってたっけ?)


手持ちの薬草はどれくらいだったかと頭で考える。


「…なあ。」


「ん?なに?」


この薬草はどこで採集しただろうかと思い出していたため、思わず軽い調子で返してしまう。


(あ。)


「…なに?」


私は気づいてすぐに調子を戻した。


少年も、いきなりフランクになった私に驚いているようだった。


「どうしたの?」


もう一度聞くと、少年は思い出したようにハッとすると、


「なぜ、助けてくれるんだ?」


と聞いた。


私はしばらくキョトンとしてしまったが、少年は真剣そうだ。


(う~ん…。)


特に理由もなかった私は、どう答えていいものか迷った。


「放っておけなかったから?かな。なんか、悪い人じゃなさそうだし。」


私の返答に、少年はいぶかしげに眉をひそめた。


「だが…私は敵ではないのか?」


「まあ…そうだけど…。ケガさせたのはお互い様でしょ?」


しかし、少年は納得していないように私の様子をうかがっている。


「じゃあ、何であなたは私を助けたのよ?」


そう聞くと、少年は何か言おうと口を開いたが、そのまま黙り込んでしまった。


(あ…言い方強かったかな…)


内心少し反省する。


私は、窓辺に立って、ずっと黙ったままの少年を見つめた。


(…ん?)



お読みいただきありがとうございました。

ユキワリソウ:信頼・あなたを信じます・内緒

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