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ハーデンベルギア③

私は手に料理を持ったまま、キッチンの扉を見て固まった。

あの少年がこちらをじっと見ている。


その様子から、私を攻撃する機会をうかがっていたのが分かった。


心に一瞬恐怖がよぎったが、すぐに平常心に戻す。


「起きたんだ。」


私は無意識にトレーをぎゅっと握りしめた。


大丈夫。平常心を保とう。


「調子はどう?」


微笑もうと努めたが、表情筋はピクリとも動かなかった。


少年は何も答えず、こちらを警戒しているようだ。


(「魔女め」)


あの時の声とともに、いつか本で見た、少女たちの処刑の様子が蘇ってきた。


少年と私との間に、緊迫した空気が流れる。


少年の目を見ていると、段々と心が押しつぶされそうになっていく。


(だめだ。)


耐えきれずに、私は思わず後ろを向いた。


料理を置き、流し場に手をついて深呼吸する。


大丈夫。落ち着け。


相手を刺激してはいけない。


何を言うべきかは決めている。


しかし、いざ口を開くが、


「出ていって。」


と、一言絞り出すので精いっぱいだった。


緊張で体がこわばるせいで、肩の焼けるような痛みがぶり返してくる。


(っ!)


痛みよりも、不安感を抑えるように強く肩を握る。


傷口からジワリと血がにじんできた。


「お願い。」


そう言って出口を指し示す。


しかし少年は、出口ではなく、私の方へと歩いてきた。


「見せろ。」


少年は私の腕を取ると、肩に手を当てた。


すると優しい魔力が流れ込んでくるのと同時に、焼けるような痛みがなくなった。


(なるほど。当たった魔法に、毒が含まれてたんだ…。)


あの一瞬の攻撃で、付与魔法までつけていたのか。


敵ながら感心していると、少年が口を開いた。


「毒は消したが、私には治療ができない。」


少年は私から離れると、気まずそうに下を向いた。


「…すまない。」


聞き取れないほどの小さな声で言う少年に、私は面食らってしまった。


(謝った…。)


いや、この少年だって謝ることぐらいできるだろうが、まさか「魔女」に謝るなんて信じられなかった。


(案外素直な子なのかも。)


少しだけ好感度が上がった。


話してみれば、分かり合える相手かもしれない。


私は勇気を出して対話を試みることにした。


「ね、ねえ。」


話しかけると、少年はそっとこちらを振り返った。


「あの…体調は大丈夫?」


少年は「あぁ」と小さくうなずいた。


「えと…あの、もしよかったら、ご飯…食べていきますか?」


自分でも何を言ってるんだかとあきれながらも、私は提案した。


(まあ…私も毒を盛ったような…ものだし?)


意図しなかった提案だったのか、少年は少し考えこんでいるようだったが、頷いてくれた。


「そっか。じゃあ、部屋に戻ってて。運びに行くから。」


私がそう言うと、少年はいぶかしげな顔をしつつもおとなしく部屋へと戻っていった。


お読みいただきありがとうございました。

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