ビナンカズラ②
バンッ!
ノックしようと手を伸ばしたのが、勢いで扉を押し開けてしまった。
中にいた人たちが、驚いた顔を一斉に向けた。
ハアッハアッハアッ
しーんと静まり返る部屋の中に、肩で息をする私の呼吸だけが響く。
音に身をすくめたままの子供たちの真ん中に、懐かしい友人の顔が見えた。
「……ルリ―――!!」
ワッと子供たちの歓声が響いた。
「ルリが戻ってきた!!」
一気に子供たちに囲まれて身動きが取れなくなってしまった。
「わ、わ、みんな…!」
「ねえねえどこ行ってたの!?」
「本物!?」
一斉に質問攻めにあい、私は困惑してその場に固まった。
「ルリ。」
高い子供たちの声の中で、力強い女性の声が聞こえた。
顔を上げると、メアリさんが泣きそうな顔をしながら、こちらに歩いてきた。
「…メアリさん…。」
メアリさんはガバッと私を抱きしめた。
「まったく…あんた、あたしがどれだけ心配したかわかってるの…!」
少し震えた声でいつものようにお説教をしながらも、メアリさんはぎゅっと腕に力を込めた。
「ごめんなさい…。お会いできてうれしいです…。」
私はこらえきれず、大粒の涙を流した。
メアリさんはポンポンと私の背を叩き、そして抱きしめていた腕を解いた。
「あたしもうれしいさ。あんたの元気そうな顔を見れて。」
メアリさんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「うぅ~…め゛あ゛り゛さ゛ん゛~…。」
「なんだい、そんなに泣いて。ほら、シャキっとしな。」
そう言って、メアリさんはタオルをグイッと私の目に当てた。
「あーメアリもないてる~。」
「泣いてなんかないよ!」
メアリさんは慌てて目をぬぐった。
「まあまあ、せっかくの再会じゃないか。今日はみんなで楽しくし過ごそうじゃないか。」
家の奥から、シエナさんが手を拭きながら出てきた。
「元気そうだね、ルリ。」
「シエナさん…お久しぶりです。」
私はぺこりと頭を下げた。
「さあさあ、疲れただろ?少しお座りよ。」
シエナさんは大テーブルの一番真ん中の席を指さした。
(お誕生日席…。)
なんだかこっぱずかしい気持ちになりながらも、私はおずおずと席に近づいた。
「いいんですか…?」
「ああ、あんたのために用意された席なんだからね。」
しかし、久しぶりに帰省したメアリさんを差し置いて、自分だけこの席に座るのもなんだか気まずい。
そもそも私は村人ではないのに。
座ろうかどうか迷っていると、私の気持ちを察してくれたのか、
「メアリ、あんたは隣に座るんだろ?」
とシエナさんがメアリさんの方を向いた。
「ああ。そうするつもりさ。」
そう言うと、メアリさんはさっと私の隣の椅子に座った。
「ほら、ルリ。あんたも座りな。」
二カッと笑うメアリさんに、私は小声で「ありがとうございます」と言って席に着いた。
「さあ、お祝いを始めよう!今日はたくさんご馳走を作ったからね!」
パンと手を打ち、シエナさんが声高らかに言った。
「ご馳走」と聞いて、私はハッと自分の手のひらを見た。
せっかく持ってきたバスケットを茂みの中に置いて来てしまった。
「バスケット!」
「うわっびっくりした…。忘れたのかい?」
思わず大声を上げると、メアリさんがビクッと肩を震わせた。
「はい…えーと、茂みの中に…。」
「なんでったってそんな変なところに置いてきたんだい。まあいいさ、あたしが取りにいくよ。」
「いえ、私が取りに行きます。」
「主役がいなくなってどうすんのさ。あたしがいくよ。」
「いえいえ、私が…。」
お互い譲らず、押し問答が続く。
「もうっ!あたしが行くって言ってるんだから、あんたはここに座ってなってば!」
「いえ!私が行きます!」
「たく、何やってんだか…。二人とも、取りに行くのはあたしが行くから…。」
「ねえ、これだれの~?」
私たちのやり取りを見かねたシエナさんが割って入ろうとしたとき、入口の方からのんびりとした声がした。
「ルリを探しに行ったのに~、こんなもの拾っちゃったよぉ。」
こののんびりとした可愛らしい声は…。
私はバッと入り口を振り向いた。
お読みいただきありがとうございました。




