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カラスウリ

それから、私は毎日少しずつ魔女に関する本探しを進めていった。


やはりこの世界で「魔女」という存在はタブーとされているらしく、魔女について詳しく書かれている本はこれだけ探してもとても少なく、しかも内容もあいまいに描写されているものがほとんどだった。


それだけでも、この世界の人々がいかに魔女を嫌っているのかが分かるのだが、不可解なのは、魔女がどんな被害をもたらしたのかについて書いていないことだ。


「小麦が不作になった」、「嵐が起きた」ということは書いてあるのだが、それがどのようにして起きたのかについての記述が全くない。


(これは別に魔女じゃなくてもできるんじゃ…。)


それに、古本屋の少女が言っていた、「魔女は異世界から来る」という言葉も引っかかる。


(私と同じ世界から連れてこられた女の子たち…。「巫女」と「魔女」…。これにはどんなつながりがあるんだろう。)


この世界に召喚されたとき、人々は私に興味すら示さなかった。

つまり、巫女でないからと言って魔女と判断されるわけではないようだ。


それが、パーティーで魔法を使ってから態度が急変した。


私のことを忌み、怖がっていた。


(判断基準は…「魔法」?でも、巫女だって魔法を使うはず。種類が違うのかな。)


少女は、巫女は「浄化の魔法」を使うと言っていた。

それはきっと、私が使っているような魔法とは違うものなのだろう。


「なら、モカちゃんは浄化の魔法、使えるんだぁ。どんな魔法なんだろう。魔法の本には載ってなかったけれど…。」


どんな呪文を唱えるのだろう。

どんな効果があるのだろう。

ここにある本のどれかには書いてあるのだろうか。


自分の知らない魔法に好奇心がわくが、自分には使えないのが少し残念だ。


「メアリさん村の人たちは知っているのかな…。会えたらいいのに。」


なんだか村を飛び出してから随分と長い時間が経ってしまったように思う。


「会いたいな。」


しんみりとした気持ちになってしまい、あわてて首を振る。


一人で屋根裏のような暗いところで暗い気持ちになるのは危険だ。

どんどん悪い方向に考えが進んでいってしまう。


「危ない危ない。またやっちゃうところだった。」


こういうときは甘いものを食べて気分をリフレッシュするに限る。


「クッキー食ーべよ!」


私はキッチンへと駆け下りた。






その日、私は夢の中で懐かしい場所にいた。


幼稚園の校舎の裏にある、物置小屋の中だ。


ここは普段からあまり使われてなく、小さい頃は泣き虫だった私の秘密の場所だった。


意地悪な男の子たちに容姿のことや、泣き虫な性格のせいでからかわれるたびに、よく隠れて泣いていたものだ。


《うっううぅ…ひっく…》


なつかしさを感じる私とは正反対に、夢の中の私は背中を丸めて泣いていた。


《ねえ、だいじょうぶ?》


《…え?》


ふいに、外から声がした。


《だれ…?》


しかし、記憶が曖昧なせいか相手の顔はぼやけてしまっていて、男の子か女の子かもわからない。


《なんで泣いてるの?》


《な、なんでもない…!》


夢の中の私は、秘密の場所に人が来てしまったことへの動揺と、泣き顔を見られた恥ずかしさで急いで涙を拭いて立ち去ろうとした。


《あ、ねえ、まって!》


その子は走って出ていく私を呼び止めた。


《な、なに…。》


《あのね、くらいところで泣いてると、おばけがやってくるんだよ!》


《おばけ…?》


《そうだよ!だからね、そういうときはおかしをたくさん食べて、おばけをやっつけるんだよ!はい、これあげる!》


《え、これなに?》


《じゃあねー!》


困惑する私の手に何か握らせると、そのこはさっそうとどこかへ行ってしまった。


手を開くと、そこには小さな飴玉が握られていた。






フッと夢が消え、私は目を開いた。


とても懐かしい思い出だ。今まですっかり忘れてしまっていた。


あれ以来、私はあの子に会うことはなく、顔も声も本当におぼろげにしか思い出せない。


(あの子、今どうしてるんだろう。)


きっと私と同い年ぐらいだろうから、テストに追われたり、部活に精を出したりと普通に暮らしているのだろう。


「…。」


なんだか、意図せずに自分がどんなに稀有な状況にいるかを痛感してしまった。


「まあいいや。うちはうち、よそはよそ~。」


お母さんの常套句を口ずさみながら、私は着替えて庭に出た。


この前買ってきた野菜から種を取って地面に植えたところからは、小さな芽が出始めていた。


最近は野菜たちの成長を見るのが日々の楽しみだ。


「…ん?」


ふと顔を上げると、結界の外の木に何かが括り付けられている。


「リボン?」


ちょうちょ結びされたリボンに手を伸ばして取ってみると、そこには小さく「メアリ」と刺繍されていた。


「…これ、メアリさんのだ!え、うそでしょ!」


もう一度確かめてみるが、そこには間違いなくメアリさんの名前が入っていた。


「まじで!?」


私は喜びで目を輝かせた。


つまり、この村にメアリさんが来ているということか。


「今メアリさんが来てるんだ!すぐに会いに行こう!」


私は踵を返し、屋敷の中へと舞い戻った。

お読みいただきありがとうございました。


カラスウリ:良い便り・良い知らせ

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