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ペチュニア

「!」


思わず方向転換して横の森へ荷車ごと飛び込んだ。


「うわ!」


自分で自分の行動に驚きながらも、道に戻るにも戻れなくなった私は、そのまま茂みの中に身を潜めて、歩いてきた人が通り過ぎていくのを待った。


茂みの後ろからそっと道のほうを見ていると、歩いてきたのはお母さんと一人の娘だった。


「ねえ、おかあさん!まちについたらおかしかって~!」


「はいはい分かってるわよ。もうすぐでつくから待っててね。」


幼い娘の可愛らしい声と、それに優しく返す母親の声が聞こえてくる。


(あ、親子だったんだ…。)


慌てて隠れてしまった自分が恥ずかしくなる。


「まちについたらね、おとうさんのおみせにいってね、おみやげあげるの!」


少女は誇らしげに、手に持った風車を上に掲げた。


「いいわねえ。お父さんきっと喜ぶわよー。」


「えへへー」


母親に褒められて、少女は嬉しそうに笑った。


「さあ、早く行きましょう。」


「うん!」


二人はそのまま手をつないで町へと歩いて行った。


親子が去ったのを確認した後、私は茂みの裏から立ち上がった。


(ついつい隠れちゃった…。)


しかし、私はもう元の道に戻るつもりにはならなかった。


このまま森の中を進むことにしよう。


(森の中なら魔法使えそうだし…。)


一応周りに人がいないか確認し、荷車の上に乗った。


そして魔法を使って荷車を浮かせ、森の中を進んでいく。


「やっぱりこっちのほうが楽だなあ…。」


スイスイ進んでいく荷車の上に乗りながら、私は森の景色を眺めた。


色の木の幹と色艶の良い蒼い葉が、見ていて心を落ち着かせてくれる。




しばらく進んでいくと、見覚えのある場所に出てきた。


そろそろ屋敷も近くなってきたようだ。


(ああ、もうすぐつく…。)


そう思うと、なんだか安心した気持ちになってしまう。


もうあの屋敷は、完全に心の支えとなっているようだ。


そうして帰路を移動していると、青色のペンキで塗られた道に出てきた。


私が道に迷わないように、自分にしか見えないように目印をつけておいたものだ。


私以外の瞳は見えないし環境にも優しい、便利な魔法のペンキだ。


「もう屋敷だ!」


うれしくなった私は進むスピードを速めた。


「あーついたあー!!」


結界の中に入り、思わず大きな声で叫んでしまった。


ここから出発した今日の朝が、ひどく昔のように感じる。


「ああ~疲れた~。」


荷車を台所の裏口まで運び、扉を開けた。


「ふう~。」


魔法で荷物を食糧庫に運び込む。


すべての荷物を運び終わると、私は荷車を定位置に戻した。


「よおし終わった!もう休もう~。」


再びキッチンに戻って、今日町で買ってきた小麦粉と卵、そして牛乳を取り出す。

それらを適当にボウルに入れ、だまがなくなるまでこね、できたものを小さくちぎってオーブンへ入れる。


「これに火をつけて~。」


魔法で焚火のいらない火をオーブンにつけ、私は食糧庫から今日購入した魚を取り出した。


籠を冷やしていたおかげで、新鮮さはそのままだった。


そして古本屋で買った料理本を開いて、載っていた魚のさばき方を見よう見まねでやってみる。


なるほど魚屋のおじさんが言っていた通り、この魚の鱗は相当固い。


鱗を一枚一枚剥ぎ取るように削いでいくが、包丁を入れていく度に鱗が吹き飛んで仕方がない。


「あー!もう!」


イライラしながらも地道に鱗を取っていると、オーブンからいい香りがしてきた。


「そろそろかな。」


オーブンを開けると、中からクッキーの焼けた香ばしい香りがフワッと出てきた。


「ん~いい香り。」


それらを皿に盛り、冷ますためにわきに置いておく。


そして再びまた板の前に戻り、鱗を取る作業を続けていく。


もはや最後のほうは素手で取っていたような気もするが、何とかすべての鱗を取り終えた。


鱗は後日処理するとして、今日はこれを刺身で食べよう。


またこれも本の説明通りに何とか捌いていき、皿に盛る。


この世界に醤油はないため、塩を小皿に持っておく。


(ふふ、なんか通みたい。)


そうして出来上がった刺身とクッキーを二階の自室へともっていけば、あとは風呂に入ってのんびり疲れを癒すだけだ。


その後私は早くにお風呂を上がり、ベッドに乗る。


左には本棚から取ってきた本が、右のサイドテーブルには夕飯の刺身とおやつのクッキーが準備済みだ。


「なんか優雅だなぁ~。…料理のチョイスが気になるけど。刺身とクッキーって…。」


自分で作ったが、あまりにも風情に欠ける料理チョイスだと思う。


「…まあまあ。おいしければいいでしょ。」


そうして、私は刺身とクッキーをつまみながら一人読書を楽しんだ。


しかし、本を読みながらゆっくりしている間も、「魔女」について町で聞いたことが頭を離れることはなかった。


この世界に迷い込み、そして魔女として処刑されてきた、私と同じ世界から来た少女たち。


そして、今度は私が、彼女たちと同じように…。


その時、定刻を告げる柱時計の音が部屋中に響き、私はビクッとして意識を戻した。


「あ、いけない!今日はもうゆっくりしようと思ったのに…。」


しかし、「魔女」は私にとって無関係とはいえない。恐らく、私が城のパーティーで魔法を発動してしまったから、魔女としてみなされるようになったのだろう。


魔女について詳しく知れれば、この状況を変えれるヒントが見つかるかもしれない。


それに、もしかしたら私を見張っているあの謎の人物についても知れるかもしれない。


もう少し彼女たちについて調べる必要がありそうだ。


(明日、魔女について書いてある本を探してみよう…。)


そう思いながら、私はベッドに横になった。




お読みいただきありがとうございました。

七時ごろに幕間のお話を投稿しますので、読んでいただければ幸いです。


ペチュニア:心の安らぎ

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