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ポーチュラカ

アイルの店を後にし、荷車を取りに戻った私は町中を市場に向かって歩いていた。


質屋に寄ったことで予定よりだいぶ遅くなってしまったが、そのかわりにとても不思議な人物に出会うことができた。


(面白い子だったな。)


私はつい先ほどの出来事を思い出してクスリと笑った。


結局、私はアイルが買ってきてくれた薬をすべてもらうことになった。

ご丁寧に包帯まで買ってきていたことには驚いたが。


しかし、薬を塗ったおかげで手の平のやけどの跡もすぐに治りそうだ。


(これってどういう薬草でできてるんだろう?私も作ってみたいなあ)


私にも作れるものだったら作って売りたいものだ。


(もう職業を薬屋にしようかなあ。そうしたらあの質屋で売ってもらおう。)


そんなことを考えていると、私は市場にたどり着いた。


朝来た時から随分と時間が経っていたが、相変わらずの賑わいだった。


「らっしゃいらっしゃい!今日もいい魚が上がったよお!」


「あら奥さん、パンはひとついかが?」


市場の中を歩いていると、お店の人々の呼びかける声や焼き立てパンのおいしそうな香りが私を包んだ。


なんだか、歩いているだけで気分が上がってくる場所だ。


両側には新鮮な魚や瓶詰めされたジャムなど様々な商品が並べられ、私はついせわしなく首を左右に動かしながら市場を歩いた。


(あ、いけないいけない。ちゃんと必要なもの買わなきゃ。)


慌ててポケットからメモを出し、私は買おうと思っているものが売っているような店を探した。


(あったあった。)


市場の中心に、香辛料の売っているお店を見つけた。

あそこならきっと料理に必要な調味料も売っているだろう。


私は塩と胡椒、それから隣にあったお店で小麦粉を買った。


(やっぱり荷車持ってきておいてよかった~。)


荷車に買ったものを乗せまたしばらく歩いていると、古本を売っている出店を見つけた。


(あ、あそこにレシピの本が売ってるかも。)


古本の売っているお店へ近づこうとしたとき、


「へい、そこの嬢ちゃん!活きのいい魚はいらないかい!」


と、横の魚屋のおじさんが話しかけてきた。


「へ?私?」


「そうさ!今日は特に大きいのが揚がってるから一つどうだい?安くしとくよ!」


そう言って、おじさんは灰色の細かい鱗のある魚を指さした。


(大きさは鮭くらいかな…?)


私は今持っているお金がどれくらいだったか考えた。


「えっと、それはいくらですか?」


「そうだなあ、銅貨10枚でどうだい?」


(あ、無理だ。)


完全に予算オーバーだ。

しかし、食べたことのない魚を買ってみるのも悪くはないかもしれない。


「ちょっとそれは高いかな…ほかにおススメはありますか?」


「そうだなあ、どんな魚がいいんだい?」


私はしばらく考え込んだ。


「えーっと、味がしっかりしている魚がいいです。あと、骨とか鱗とかが薬になるものがあれば…」


「え?」


「あ、いえ何でもないです。味付けがなくてもおいしい魚でお願いします。」


魚屋のおじさんは、私のリクエストを聞くと、すぐに二匹の魚を掲げて見せた。


「これなんてどうだい?塩もコショウも一切いらない、焼いたのが一番うまいんだ。あとはこれだな。蒸し魚にすると甘みが出てうまいぞ。」


私はおじさんの示す魚をよく見てみた。


鱗も目もキラキラと澄んでいて、どちらも本当に新鮮なようだ。


一つは黒い大きな鱗のある魚で、もう一つは鱗のない細長い魚だった。


(一匹はよくわからない魚だけれど、もう一方はウナギみたい…どっちにしようかな?)


「あの、この鱗の取り方って…?」


私は鱗のある魚を指さした。


「ああ、これかい?これは硬いから取るのが大変でねえ…味はうまいんだが手間がかかるから人気がないんだよ。」


「鱗は何かに使えますか?」


「面白いこと聞くね。そうだなあ、確か薬になったはずだよ。ただこれがまた面倒な作業でね。沸騰した湯に入れて柔らかくしたものを天日干しして乾燥させるんだ。それから…えーッと何だったか思い出せないなあ。爺さん、なんだったか知ってるか?」


おじさんは向かいの八百屋に呼びかけた。


「えー?なんだって?」


八百屋のおじいさんは耳を傾けて聞き返した。


「この魚の鱗の処理方法はなんだったけ?」


おじさんは大きな声で言いなおした。


「…あんだって!?」


八百屋のおじいさんはさらに聞き返した。


「だーかーらあ!この鱗の処理方法だよ!」


「何の…なんだってえ!?」


「あー!だから―」


魚屋のおじさんと八百屋のおじさんが、私を挟んで大声の言い合いを始めてしまった。


どうすればよいのかわからずに周りを見ると、周りの人たちは笑いあっていた。


どうやらこの二人のこのやり取りは日常茶飯事のようだ。


「あ、あの!私が代わりに伝えますから…。」


目立つのを避けたかった私は、顔を真っ赤にしながら一生懸命伝えようとしてくれる魚屋のおじさんに言った。


「…ああ、そうしてくれると助かるよ。」


おじさんはそう言って、見せたほうが早いだろうと魚の鱗を一枚渡してくれた。




お読みいただきありがとうございました。


ポーチュラカ:いつも元気

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