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カンナ

「ん~風が気持ちいいな~。」


元カカシの棒に乗って地面スレスレを飛びながら、涼しく吹くそよ風に目を細める。


これは、トウモロコシだろうか。

背の高い作物のおかげで、周りに人がいても、飛んでいる私の姿は見えないだろう。


(今日は久々に羽を伸ばせたな。)


足を再び痛めてしまったことを除けば、今日はとてもいい日だったように思う。


(足がちゃんと治ったら、蛇さんのところに早く行きたいな。)


私は森で助けてくれた白蛇のことを思い出していた。


シエナさんや村長に、心臓の病気を治せる薬草や魔法はないかと聞いてみたが、そういった類のものは知らないと言われた。


「知っているとしたら、都の医者とかだね。」


そう言うシエナさん言葉は、私を失望させるのには十分だった。


つまりまた、私はあの場所へと戻らなくてはいけないということか。


(変装の技術を上げれば、なんとか行けるかもしれないけど…。)


そうは言っても、お尋ね者の私の正体がバレれば、大変な騒ぎになりそうだ。


(かといって、村の人に行ってもらうわけにもいかないし。)


何か他の方法はないかと、一人の時間に魔術書を調べてみてはいるものの、今のところ良い解決策はない。


そもそも、イメージで見た蛇の心臓にはびこっていたあの気味悪い虫が何なのかが分からない。


(どうしたもんか…。)


解決策を見つけようにも、その原因が分からない。

調べに行こうとしても、まず足を治さなければいけない。それに、私はあの蛇の居場所を知らない。


考えても、分からないことばかりで堂々巡りをするばかりだ。


「ハア…。」


悶々としていると、周りから風の音とは違う音が聞こえてきた。


(あ、もう降りなくちゃ。)


どうやら村の入り口近くまでやってきたようだ。


(危ない危ない。)


私は木の棒から降りると、こっそり村に帰ろうとした…が、なんだか空気がいつもとは違うような気がする。

なんだか、ピリピリとしたような、おびえたような空気を感じる。


(なんだろう?)


木の陰に隠れてこっそり様子を伺ってみた私は、その光景に目を見開いた。


(嘘…。)


視線の先には、見間違えるはずもない、あの城の近衛兵がいた。


「ア…。」


思わず口から漏れ出た声に、慌てて口を塞ぐ。


心臓がバクバクと早鐘のように打っている。


(なんで…。)


近衛兵たちは村長と何やら聞いているようだった。

おそらく私のことだろう。


「この顔の者がここへ来なかったか。」


耳を澄ませると、近衛兵の低い声をわずかに聞き取ることができた。


「さあ…ここを訪ねてくる人はおりませんから。」


村長は首を振った。


他の村人が心配の面持ちでそのやり取りを見つめている。


言ったことが嘘だと分かれば、村長はおろか、村の人たちまで反逆罪として罰を受けるだろう。


(どうしよう…。私のせいで。)


早くここから去らなければと思いながらも、足がすくんでしまってその場から動けないでいた。


ふと、子供たちを守るように立っていたシエナさんがこちらに視線を向けた。

シエナさんは私を見て、驚いたように目を見張ったが、フルフルと静かに首を振った。


「来てはいけない」


そう口で伝えたシエナさんは、くいっと首を傾けた。


その先には、私が泊まっていた小屋がある。


(私のトランク!)


たとえ私自身が見つからなくても、この村にいた痕跡が少しでも残れば終わりだ。


今、村人たちはうかつに行動できない状況にある。


ここは私が行かなければ。


「では一軒一軒確かめさせてもらうぞ。」


いくつか村長に質問を終えた近衛兵は厳しい声でそう言うと、ほかの兵たちに家を見て回るよう指示した。


幸い、近衛兵たちは私が泊まっていた所とは反対側の家から見始めるようだ。


(早くしなきゃ!)


私は木の陰に隠れながら素早く進んだ。




窓から部屋を覗き込む。


トランクは窓のすぐ下に置いてある。


(このまま取れば…!)


しかし、トランクを取ろうとした私は、ベットの横に昼食が置きっぱなしであることに気づいた。


(そうだ…。私、食べるの忘れてたんだった。)


誰もいない部屋に食べ物が置いてあるのはさすがに不自然だ。


(どうしよう。)


とりあえず、私は窓を開けるとそこから体を滑り込ませた。


(片づける時間はないし…。仕方ない!)


私はベットを整え、トランクを先に窓から外に出した。


そして昼食の乗った盆を片手で水平に持ったまま、慎重に窓から外に出た。


もう行ける所はあそこしかない。

村はずれにある廃屋だ。


場所なら以前村長に教えてもらったから、なんとかたどり着けるだろう。


(またこれのお世話になるなんてね…。)


私は再び木の棒に乗ると、トランクを抱え、その上に昼食を乗せた。


(なんでいつも、こんなにバタバタした引っ越しになるのかな。)


こうやって着の身着のまま場所を追われるのはこれが初めてではないが、何回目でも嫌なものだ。


(まったく、せっかくいい日になるはずだったのに。)


自分の運命を呪いながら、私は村はずれの廃屋を目指した。



お読みいただきありがとうございました。


カンナ:疑い

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