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グラジオラス②

(う…緊張する…)


体の内から湧き上がってくる緊張に、私は飲み込まれまいと深呼吸を繰り返した。


今日はついに魔法学院初登校日だ。いや、今日は試験を受けるだけなので、正確には登校日ではないのだが。


(すぅ…はあ~…)


何度も深呼吸を繰り返す。


「ねえ、ルリはさっきから何をしてるの?」


カタカタと揺れる馬車の中、対面に腰かけているアイルが不思議そうな目を向けてきた。


「さっきから変な動きしてるけど。」


「し、深呼吸だよ。緊張してるから。」


「失礼な…」と目を細める私に、アイルはクスクスと笑った。


「え~!なんか方がぴょこぴょこしてて面白い動きになってるよ。ね、リオンもそう思うよね!」


アイルは馬車の外に話しかけた。


「うるさい。見えない。」


御者席から低い男性の声が返ってくる。


今この馬車を動かしているのは、成人男性に変装しているリオンだ。


「それと、本名で呼ぶなと言っただろ。余計なボロを出してどうする。」


厳しい口調でリオンが言うと、


「わかりましたよー。スミスさん。」


と、アイルは顔を引っ込めた。


リオンは「スミス」という姓を名乗り、私―「ラピス」の後見人として魔法学院入学のための付き添いに来てくれている設定だ。


昨日、アイルの家で初めて変装したリオンの姿を見た時は、侵入者と勘違いして大騒ぎしてしまった。


(…。)


あの時の私の慌てっぷりを思い出すと、恥ずかしさに顔が引きつりそうだ。


「それにしても、こんな立派な馬車が良く手に入ったね。スミスさん。」


アイルが馬車の窓枠を撫でて言った。


昨日の侵入者事件と並べて私たちを驚かせたのは、この馬車の存在だ。


高級品とまではいかなくとも、人二人がゆったり座れるスペースに加え、学校生活に向けての荷物もしっかりと収まる。


リオン曰く、


「隣の国からわざわざ学院に入学してくるんだ。馬車くらい必要だろ。」


だそうだ。


「たしかに。どこで手に入れたの?叔父さん。」


私たちはニヤニヤしながらリオンに話しかけたが、見事に無視された。


リオンはこの呼び方が嫌いみたいだ。


(私は好きだけど。)


名称で呼ぶとまるで本当の家族みたいだ、などと思っていると、カタカタと鳴っていた馬車の揺れが、ガタガタと大きくなり、はずみで膝の上に置いていたカバンを落としてしまった。


ふたが開いていたカバンから、魔術書が滑り出てきた。


お読みいただきありがとうございました。

長らく間が空いてしまいましたが、時間があるときにまた続きを書いていく予定です。

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