表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/109

グラジオラス

(これまでのあらすじ)


 異世界に強制召喚されたにもかかわらず、見た目で「魔女」だと決めつけられたルリ。


国から追われるも、ククル村の人々や王宮召使いの仲間に助けられ、村はずれの屋敷に身を隠し、悠々自適な生活を満喫していた。


 しかし、異常なほどの王宮の追跡や、「聖女」と認められた少女「モカ」の存在に、自身だけでなく助けてくれた多くの人々の身の危険を感じ始め、自身を追っていた王宮魔法使いのリオンと共に、彼女たちを阻止しようと決意する。


質屋の若主人アイルーロスの協力も得、ついに聖女と王子が通う魔法学院潜入が現実味を帯びてきた。




「―よし。まずは設定の確認ね。私の名前は「ラピス」。アイルの曽祖父の兄弟のひ孫で、出身地は隣国。」


「うん。」


「魔法は使えるけど、地元の魔法学校には通わずに、この国の魔法学院に通いたいと思ってる。」


「うん。」


「体調を崩しがちで入学が遅れちゃったから、編入制度を使って学院に入学する。」


「おっけー!ばっちりだね!」


しばらく時間を持て余した私とアイルは、改めて私の設定の確認をしていた。




 魔法学院潜入に際し、私はアイルの親戚という設定で編入試験を受けることになっている。


だいぶユルユルな設定のように感じられるが、この世界は元の世界とは比べて情報技術がとても遅れている。


検索すればすぐに情報が手に入るわけではないこの世界において、隣国のいち庶民の個人情報など分かるわけがないのだ。


(つまり、いくらでも個人情報を偽装できるってわけよ。)


そこを突いて、私たちは「ラピス」という架空の人物を作り上げたのだ。


ちなみに「ラピス」という名前を提案したのは私だ。




「…リオンいつ帰ってくるかなあ。」


アイルが足をぶらぶらさせながら呟いた。


私たちが時間を持て余しているのも、リオンが外出しているためだ。


リオンは今、瘴気の影響で獣人化してしまった女性とその父親を、住む場所に案内しているのだ。




「瘴気」


この異世界に蔓延する、正体不明の物質。


いや、物質かもわからない。ある人は「病気」、ある人は「呪い」という説を唱えているほど、正体が明らかになっていないのだ。


私も実物は見たことがないが、獣人と化してしまったあの女性を目の当たりにすれば、その存在を認めざるを得ない。




そして、瘴気を浄化する力を持つ「聖女」。


瘴気が発現するたびに別世界、つまり私が元いた世界から召喚される、この世界の救世主。


しかし、「浄化する」こと以外どのような能力があるのか、詳しいことは全く分かっていない。


それに…


私の脳裏に、いつかの日に読んだ絵本の一ページが浮かんだ。


魔女だと糾弾され、処刑された少女たち。恐らく、私と同じ、この世界に召喚された…


あの絵を思い出すだけで寒気が走る。


同じ世界から来たはずの「魔女」と「聖女」の間にどんな違いがあるのか、魔女とは、聖女とは一体何なのか、魔法学院に行けば何かわかるかもしれない…




「…ルリ?大丈夫?」


返事のない私を心配してか、アイルが聞いた。


「―ぁあ、ごめん。ちょっと考え事してた。」


「不安かもしれないけど、きっとうまくいくから大丈夫だよ。」


私が不安に駆られていると思ったのだろう、励ましの言葉をかけてくれた。


「ありがとう。」


アイルの言葉で、肩の力がいくらか抜けていくのを感じた。


実際、不安な気持ちはあったようだ。


「そうだよね、アイルもリオンもいるんだもん。失敗するわけがないよ。」


おどけた顔を向けると、彼はフフッと顔をほころばせた。


(失敗するわけにはいかない。)


「じゃ、私は一回部屋に戻るね。」


そう言って立ち上がると、私は部屋を後にした。

グラジオラス:準備・誠実

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ