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ディスタシア

「ア、アイル~?ただいまー?」


アイルの質屋に着いた私は、そーっとドアから中を覗いた。


質屋の中は明かりがついたままになっているが、シーンと静まり返っている。


リビングを覗いてみると、アイルがダイニングに座ったまま突っ伏していた。


私たちの帰りを待っているうちに眠ってしまったらしい。


テーブルの上には、私たちが(主に私が)買った屋台のご飯がきれいに並べられていた。


「…」


私は起こさないようにそっと彼の体を浮かせると、寝室まで運んだ。


静かにベッドの上に横たえ、布団をかぶせる。


「…おやすみ。」


そう呟き、寝室のドアを閉めた。




朝目覚めたアイルは、唖然として座っていた。


朝起きると、家中がピカピカに磨き上げられおり、目の前には、朝食とは思えないほどの豪華な食事が用意されていたためだ。


そして、ダイニングテーブルの反対側には、申し訳なさそうな顔をして座る同居人がいる。


突然の好待遇に彼は混乱していた。


というのも、昨夜自分が一人取り残されたことなどみじんも覚えていなかったのだ。


「わ、わぁ~。今日は随分と豪華だね。」


なぜかこちらの機嫌を伺う同居人に違和感を覚えながら、アイルは言った。


「う、うん。何となく…ね。」


一方の私はと言うと、改めて、自分のアイルへの態度を反省していた。


緊急事態だったとはいえ、こちらの都合で何度も置いてけぼりにしてしまった。


協力してもらっているのに、ひどい扱いだったと自分でも思う。


(せめてもの罪滅ぼしにと色々やってみたけど、やっぱり浅はかだったかも。)



周りの状況にすぐに流される自分を悔やむ。



「……いや、やっぱりそうじゃなくて。アイルには色々と悪いことしちゃったなって思って。」


「え、悪いことって?」


アイルはキョトンとした顔をしている。


「こんな危険なことに協力してもらっているのに、何回も置いて…いや、振り回しちゃって。ほら、昨日の夜とかも。」


私は「ごめんなさい」と頭を下げた。


しかし彼は「え、そんなことで!」と言って笑った。


「全然気にしてないのに!」


「本当にごめんなさい!協力する気も失せちゃうよね。」


「いいよ全然。それに、僕だって生半可な気持ちで手伝うって言ったわけじゃないんだからね!」


アイルはむんっと胸を張った。


「ほんと?嫌気さしてない?心変わりしてない?」


私は上目遣いにアイルを見た。


「してないって!」


アイルは困ったように笑った。


「あーよかった~!拒否されたら、無理にでも私たちの記憶を消さなきゃいけないかと思ったー!」


彼の反応に、私はほっと胸をなでおろした。


「え、記憶を消すって…ちなみにどうやって…?」


「んー内緒~。」


恐る恐る聞くアイルに、私は不敵な笑みを返した。


「ちょっ!ルリ、怖い!」


「フフフ…」


「も~!」


ダイニングには明るい笑いが広がり、私たちはちょっと味付けの濃くなった、いつもより豪華な朝食を楽しんだ。


お読みいただきありがとうございました。


ディスタシア:ごめんなさい

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