ゴボウ
「私たちが注目を浴びているうちに町の外れまで行くんだ。安全な場所まで行って、静かに隠れてろ。後で見つける。」
「了解。」
シーツを頭からかぶった私たちは、裏口へと向かったが、カーテン越しに何人かの人影が見えている。
「…裏口にも人がいる。」
仕方がないため、裏口から出ることはあきらめ、玄関の陰になる位置に立った。
「あなたは私の話に合わせてください。」
リオンは少し後ろに立つ老人に言った。
「わ、わかった。」
老人は頷き、ドアの陰に隠れる私たちに目をやると、シャンと背中を伸ばした。
「パパ…」
「大丈夫ですよ。」
私は横でおびえるように身をかがめている女性にそう声をかけた。
「行くぞ。」
リオンの合図と共に、私は呪文を唱えた。
「あ、おい…」
「静かに。」
老人は姿が見えなくなった私たちに驚いて声を上げたが、リオンに牽制された。
「計画通りに。」
そう言ってリオンは玄関のドアを大きく開いた。
「なんですか、あなたたちは。」
家の外からリオンの声が聞こえてきた。
どうやら外にいる村人何人かと話しているようだ。
「今のうちに。行きましょう。」
私は女性に声をかけると、静かにドア陰から出て外へと歩き出した。
「だから、なんで王室のお偉いさん方が何人も来てたのかって聞いてんだよ。」
外ではガタイの良い中年男性がリオンに詰め寄っていた。
「この老人に虚偽の疑いがかかっていたため、調査隊に報告するためにきたんですよ。」
大ぜいに囲まれているにもかかわらず、リオンは相変わらずの無表情で対応している。
「やっぱりな。このジジイは前から怪しいと思ってたんだ!」
「俺も人影を見たことあるぜ!こんなひょろっこい奴じゃなくてよお、もっとデカかったぜ!」
その言葉に、女性の方がびくりと跳ね上がった。
何人かの村人に彼女は見られていたようだ。
「やっぱ魔女を匿ってたんじゃねえか!」
「こ、こ、こいつを差し出せば何か報酬もらえんのか!?」
村人たちが興奮して口々に話し始めた。
しかし、目線はしっかりと老人を捉えていた。
自分の父親に集まる獣のような視線に、女性はガタガタと震えだした。
その時、
ドカーーン!!
ものすごい衝撃と共に、老人の家から火の手が上がった。
「え…?」
突然のことに、村人たちは唖然として家を見つめていたが、すぐに
「火を消せ!」
「燃え移るぞ!」
といって四方に散っていった。
「気を取られてるうちに、急ぎましょう。」
私は驚いて身を固める女性の手を取り、火を消そうと走り回る村人たちにぶつからないように足早に村の外へと出る。
森の中を進む後ろから、ドンッドンッと爆発音が聞こえてくるも、私たちは振り返ることなく走った。
お読みいただきありがとうございます。
ゴボウ:私にさわらないで・しつこくせがむ・用心・いじめないで




