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2話 ミルパは不思議な夢を見る

 ミルパ…

 ミルパ…


 誰?私を呼ぶのは誰?

 聞いたことが無い声。

 とても優しい声が私を呼んでいる。

 私は深い、とても深いところで溶けていた。

 私の意識が集まり浮上を始めた感じがあり、急に眩しさを覚えた。

 気がつくと私は神殿にいる。

 ここはどこだろう?

 私はそこで寝転がっていた。


「ミルパ、有難う。私の声に応えてくれて」


 声のする方向に視線を向けると、美しい女性が立っていた。


「ここは? それにアナタは?」


 体を起こしながら女性に質問する。

 どこかで見た気がするのだけど思い出せない。


「私はクラフティ。製造の神です」


「神さま?」


「私は長らく眠っておりました。今日貴女が私を起こすまで」


「私が起こした? 神様を?」


「そうです。貴女の願いが私を起こしたのです」


「私の願い?」


 先程からオウム返しで質問してばかりだが、私には何のことなのかわからない。


「アナタは私に癒しを求めた。されど私は製造の神。製作物のクオリティを左右できてもあなたの心を癒やすことは出来ません」


「あ!」

 

 私の意識は覚醒し、思い出した。


「あなたは女神像の!」


「思い出しましたか。私はあなたの願いを叶える力はありません。私ができることはあなたにスキルを与えられる程度です」


「スキル?」


「そのスキルを使ってアイテムを作ると、通常より効果の高いものを作ることが出来ます」


「ポーションも?」


「はい、通常の材料、製法でありながらスキルの効果により効果や質の高いものを作ることが可能になるのです」


「本当なら凄い!」


 本当ならお店を畳まずに済むかも知れない。


「ですが一つだけ制約があります」


「制約?」


「はい、今の私の力は弱く、制約を設けないと効果が出ないのです」


「わかりました。それでどんな内容なのですか?」


「そう深刻な話ではありません。スキルの使用にミルパの魔力の助力が必要になります」


「え、私には魔力はないよ」


「貴女には眠る魔力があります。ミルパはまだ覚醒していないだけ」


「ええ!?」


「貴女に眠る魔力を貰い、貴女の願いで私は目覚めました。スキルを使う内にミルパのも魔力も育って行くでしょう」


「わかりました。でもどうして私に助力してくれるのですか?」


「私も長く眠り、いつの間にか、かつての力を無くしてしまいました。ミルパが私の与えたスキルで作った物を広めてくれると私の力は増すのです。私の力が増せば、ミルパもより強力な効果のあるものを作れるようなりますよ」


「なるほど!私とクラフティ様の利害は一致しているんですね」


「そうなるでしょうか。私達は協力関係にあると言えますね。これから宜しくお願いしますね。ミルパ」


「こちらこそ宜しくお願いします。クラフティ様」


「スキルの発動条件は『製造』と言って発動を念じる事です。そうすると自身の変化を感じる事ができるでしょう。逆に解除する時は『解除』と言って念じて下さい。スキルの使用はミルパを必要以上に疲れさせるでしょうが、あなたの魔力が増していけばそれも徐々に慣れるでしょう」


「わかりました、クラフティー様」


 そこで私の意識がさらに急浮上を始めたのが判る。

 もうじき目が覚めるのだろう。

 夢の終わりだ。


「私は常に貴女の中にいます。ミルパ。頼みましたよ」


 女神様の声が聞こえたが私は返事をする事が出来なかった。

 現実世界に意識が引き戻されていく。

 その感覚に抗えなかった。






<夢? 不思議な夢?>


 朝だ。

 雀が鳴いている。

 私はベッドから身を起した。


<まさかね。私の焦りが見せた夢だよねきっと>


 そう思いながら枕元を見た。


「クラフティ様?」


 そこに在るはずのクラフティ様の女神像が無かった。

 ベッドの下もベッドも隅々探したけど見つからなかった。

 消えてしまったとしか考えられない。


<クラフティ様は本当に私の中に?>


 万が一、夢の内容が本当だったら。

 私は洗面所に向かいながら、期待してしまった。

 とりあえず洗面所で顔を洗い歯を磨く。

 逸る気持ちを抑えながら、夢のとおりにスキルの発動を行ってみた。


「製造!」


 ………

 何も起きない……やはりそんな都合のいい話なんて……

 と思った瞬間!


<何これ!>


 私は不思議な感覚に襲われた。

 鏡に意識を向けると、鏡に写った私の目は青く光っていた。

 そして、手に持っていた歯ブラシもその形状、重さなど全て判ってしまった。

 感覚が鋭くなり、指は器用になった気がする。


「凄い! 本当…だったんだ!」


 取り敢えず作るものがないので解除してみる。


「解除」


 スキルが解除され、目から青い光が消えた。

 少し起動しただけだったけど疲れた。

 使用中は一切感じることはなかったのに解除した途端、

 目眩がし、思わずへたりこんでしまった。

 きっと私の魔力がまだ少ないからだね。

 使う時はベッドに横になってから

 解除した方が良さそうだ。


 これなら、ひょっとするとイケるかも知れない。

 どれくらい効果が上がるかは判らない。

 まずはスキルを使用してポーションを1つ作ってみよう。

 わたしは急遽、お店をお休みにすることにした。

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