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1話 ミルパは女神像と出会う

「まいどー!」


 私の名前はミルパ。

 14才になったばかり。

 道具屋の娘、いや『道具屋プレタ』の2代目である。


 プレタは父の名前なのだけど、実は父は現在行方不明中だったりする。

 半年前ポーションの材料となる薬草採取に出掛けたきり戻って来なかった。

 死んだと思っていないので、店の名前はそのままにしている。

 いつかひょっこり帰って来ると信じて。


 しかし残された私は一人で食べて行かなければならない。

 だから、勝手に跡を継いだ。


 たった今、ポーションが売れたところ。

 父の代の常連さんである冒険者さんが、私の代になっても贔屓にしてくれて買いに来てくれる。

 ありがたいことである。


 しかし現在、道具屋プレタは存続の危機に立たされていた。

 お店は基本的にポーション類の販売で成り立っている。

 ポーションは消耗品だから。

 現在ポーションの材料の仕入れは、冒険者ギルドを通じてに頼っていて、その分売値に反映されてしまう。

 私が継いでから売価を上げざるを得なかった。

 元冒険者の父は売価を抑えるために自分で採れる材料は自己調達していた。

 父の代では 父が採り、私が作る、で安く売れた。

 しかし私は採取が出来ない。


 しかも、悪いことは重なるもので父が行方不明になってすぐの頃、町の近郊にダンジョンが出来た。

 それで、そのダンジョン目当てに冒険者が来るようになり、それから2ヶ月後にはダンジョン効果で町の活気が増した。


 しかしながら、ダンジョンが出来たことで王都の大商人資本の道具屋がこの町にできたのだ。

 ポーションの売値は私の店より安かった。

 今の所ダンジョンの最奥に行けた者はおらず、先のわからないダンジョン探索に冒険者は大量のポーションを必要とした。

 だから少しでも安い方を買うのは当然のこと。


 私もお店を維持できるのは今月いっぱいというところだろう。

 現金払いで仕入れているので借金は無い。

 しかし、ポーションの材料を買うだけの資金がもう少ない。

 私だって食べていかなけれなならないのだ。

 お店を畳んで在庫を二束三文で売って、後はどうしようか。

 いざとなったら、食べれる草くらいはわかるので食べつないでいくことはできる。

 でもそれは最後の手段にしたい。


 私は父と違い、戦う能力も才能も無い。

 しかし、調合、錬金、彫金のスキルを生まれ付き持っていた。

 だから後で学んだ人よりはスキルLVも高い。

 材料さえ安く入れば、向こうより質のよいポーションをせめて同じ値段で売れるんだけどな。


「今日の売上はポーション3本か。」


 今日は大変だった。

 向こうの店でポーションが在庫切れを起し、こちらに買いに来たお客さんに向こうと同じ値段にしろと難癖つけられたのだ。

 こちらのほうが質が良いのにそんな事できるはずもない。


 以前私は、常連さんに1本だけ向こうのポーションを買ってきて貰ったことがある。

 向こうのポーションはなんというか薄かった。

 精々HP30回復くらいか。

 私のポーションならHP50は回復する。

 回復するんだけど、向こうのポーションはこちらの半額。

 こちらの1本で向こうは2本買えるのだ。

 対費用効果なら向こうが上。

 向こうにお客が行くのも当然ではあった。


 いくらなんでも同じ金額では売れない。

 助けてくれたのはこの町の冒険者ギルドの所長さんだ。

 父の親友で私の事も気にかけてくれていた。


 日も暮れる。そろそろ仕舞うかな。

 と考えていた時に、幼馴染がやってきた。

 冒険者になって1年。

 いまだルーキーではあるが将来有望らしい。


「ようミルパ、まだ潰れてなかったか!」


 わざと私を怒らせて元気付けようとしてくれているんだね。

 うれしいけど、今日はもうそんな気力もない。


「いらっしゃい、キース。かろうじてね。今月いっぱいが限界だよ」


「おいおい、冗談だよ。そんな事言うなよ」


「頑張ってはいるけどね。いつもポーション買ってくれて有難うね」


「親父さんが戻ってくるまで頑張るっていってただろ!」


「もっと頑張りたけど簡単な話でもう資金が無いんだ」


「そんな」


「それで、キースは何か必要?」


「あ、あぁ 実はさっきまでダンジョンいってたんだけど、こんなもの見つけてな」


 キースはそういって木彫りの女神像を取り出した。

 大きさは手の平に乗るくらいで、コップに入ってしまうだろう小さなものだ。

 細工は細かくまるで生きているようだった。


「綺麗だね。でも私は鑑定はできないよ?知ってるでしょ」


「ああ、もちろん、鑑定はギルドで済ませたさ。これは唯の木彫りの女神像でなんの効果もないよ」


「ふーん、それでこれの買取?」


「いや、パーティーでも引き取り手が無くて俺が引き取ったんだよ。それで」


「それで?」


「それで、まぁ ミルパにあげようと思ってな。困った時の神頼みっていうだろ」


「なるほど、キース有難うね。ありがたく頂くね」


「ああ、貰ってくれてよかった。じゃあまたな」


「キース、またね」


 私は像とか特に興味もなく、信心深くも無い。

 でも何故かはわからなかったけど、この像には惹かれるものがあり、素直に貰ってしまった。

 この像を見ると何故か癒やされる。

 鑑定の結果は何の効果もないということらしいから、気分の問題かも知れない。


 私は家に帰ると、この像を枕元に置いた。

 何故かわからない、

 そうするのが正しいと思ったし、そうしたいと思った。

 ひょっとしたら実は鑑定間違いで癒しの効果があるのかもと思ったからも知れない。

 私は癒やされたかった。

 そしてその晩、私は夢を見たのだった。

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