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L&D - 陽キャは光と、陰キャは闇と -  作者: 新島 伊万里


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誰もが狙われ、誰もが惑う

 魔女の声がした方向。それはあてもなく森を探索していた俺達からしてみれば唯一の手がかりたり得た。


 そもそもボスを倒してレアアイテムを持ち帰るのが今回の目的。ならば渡りに船だと喜ぶところなのだろう。


 いや、実際喜んだ。喜んだのだが、


「2人とも、これ無理じゃないの!?」


「口より先に足を動かせっての!」


 際限なく降り注ぐ《光》。森林の合間合間に刺す陽の光のようであったら微笑ましいものだが、ボス戦に呑気さなどは持ち込まれるはずもない。


 ツグミだけは属性を《光》に変えて多少の防御ができるが、残った俺達は喰らえば致命傷は確実だ。


 天から降り注ぐそんなふざけた攻撃。そして地には俺達が落ちるのを今か今かと待ち受ける《エクストリームウッド》の群れ。


 しかも魔女を追いかけているはずなのに一向に近づく気配を感じさせないというおまけつきだ。


「ボスも移動してるんでしょうか?」


「かもな……」


 そうこうしている間にも《エクストリームウッド》はわらわらと集まり、弾幕は激しさを増していく。


 追いかけているはずの俺達がどんどん不利になっていく、そんな理不尽な鬼ごっこ。


「絶対何かギミックがあるはずなんだけどな……」


 《バベルの長城》だって攻略法は存在した。絶対に勝てないゲームなど存在しないと俺は信じている。そもそも、絶対クリアできないゲームなんてのはゲームじゃなくただの理不尽に他ならないからだ。


 だから何かあるはずなんだが……。そう思った時だった。


「――!」


 俺達を襲うべく無差別に放たれていた《光》が《エクストリームウッド》に突き刺さる。


 無差別という事は敵味方の区別など些事だと吐き捨てる事だ。それだけなそんな風に一瞥して終わっただろう。だが事態はそれだけでは終わらなかった。


「――」


「――」


 《光》を受けた《エクストリームウッド》は案の定消滅したのだが、消滅したその地点。1体分のその隙間を埋めようとする個体がいなかった。


 いや、埋めようとするよりはあえて避けているようにも見える。そう例えば、


「全員、《光》を避けているように見えませんか?」


「やっぱりそう見えるよな」


 俺は首肯し、《エクストリームウッド》の群れを見やる。《光》の残滓すら忌避するかのように頑なに《光》を帯びた地に触れようとしないのが伺える。


「光合成を嫌がる木ってどうなのさ!」


 その台詞と同時に髪を明るいブロンドに切り替える。《光》の属性配分を100%にするツグミの特権だ。


 その状態で《陽光》を放ち、手近な《エクストリームウッド》を串刺しにする。


「――!!?」


 当たった部分から瞬時に灰となり消滅する様子は吸血鬼の類のようだった。


「効いたよ! 《光》ならあっさり倒せるよ!」


 詰んだような状況の中で見つかった1つの決め手。攻略する為には必要不可欠な要素なのは見れば明らかだった。だが、


「それでもツグミ1人じゃ倒しきれないだろ」


「私達の威力じゃ弱点にもならないみたいですし」


 即座に水を差す俺とユウハ。俺はそもそも《光》が使えず、ユウハがツグミに合わせて撃った《陽光》ではダメージらしいダメージが入っていないのが確認できた。


 つまり周囲の敵に対する特攻はツグミしか持っていない事になる。


 さらにそうこう言っている間にも天誅とでも形容されるような《光》が俺達を襲う。


「……ッ!」


 ツグミの息の根を止めるべく飛来する《光》をギリギリのところで飛び込んで無効化する。


「俺とユウハが《光》を迎撃、ツグミが雑魚処理をするにしても魔力が保たないぞこれ!」


 ここに来るまでに結構な量の強化ポーションは飲んだ。加えてドロップアイテムに回復用のいつものポーションも存在した。


 それでも激しすぎる弾幕に森林と見間違うほどに集まってきた《エクストリームウッド》を処理するには足りないような気もする。


「せめて上空の葉っぱさえ吹き飛ばせれば……!」


 乗っている木の幹を《蝶舞剣》で斬りつける。ビクともしない様子を見ながら叶いもしない最善手を口にする。


 俺が石版を利用しながら森をドームのように覆う葉を撃ち払った時、《光》が飛んできた。


 あれは最初は奇襲か何かかと思ったがもしかすると弱点を突こうとした俺に対する防衛反応ではないのか?


「ねえ。木を切り倒したいの?」


「ああ。木を倒して日光でも浴びせれば少なくとも《エクストリームウッド》は無力化できそうだろ」


「なるほどね。……けれどもこの木は硬すぎて普通にやってもどうしようもないと」


 日本刀で斬りつけ、ほんの少ししか刃が届いていない様子を見ながらそう返す。だけどもその声は明るい様子でまるで刀が効かない事を問題にしていないようだった。


「普通にやってもどうしようもない。じゃあさ、普通じゃなければいいんだよね。例えば、GMに認められた力とか!」


「ちょ、まさか……」


 なんで使えるんだ、その力。


 などと言う前にツグミは行動に移す。遅れて出した俺の声を搔き消しながらツグミはその反則紛いの魔力を放つ。


「行くよ! 私のGMに認められた力! すなわち公式チートだよ!」


 俺が以前使った口上を真似て、天高く撃ち上げたそれは易々とどす黒い森林に風穴を開けた。


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