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L&D - 陽キャは光と、陰キャは闇と -  作者: 新島 伊万里


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もう1人の特別

「属性の配分が100%の相手の能力は無効化できない、なんてね」


そう言い放った星野の正体はもう聞かずとも分かる。いや、正体を言ったも同然と言った方が正しいか。


「つまりお前は《光》が100%だと……そう言いたいわけだな」


「そうさ。《光芒(こうぼう)》と呼んで欲しいな」


――《光芒》。一筋の光とかそんな意味だったか。


「そういう君は《闇》が100%なんだろ? 良かったら名前を教えてくれないか?」


「……《晦冥》だけど。別に聞くだけ無駄だと思うけどな」


「そんな事言うなよ。お互い様々な特権を持った者同士、仲良くしないか?」


そう言う割には向けられる敵意は1ミリも弱くなっていないけどな。


「ところでさっきさ、君、コピーできないとか口走っていたね」


「――!」


ヤバい。あまりの状況で反射的に口に出してしまったが耳ざとく聞かれていたと言うのか。血の気が一気に引くのを感じる。この後に待ち受けるのはまさか――


「口振りから察するに能力のコピーができるみたいだ。しかしいくら《晦冥》と言ってもそんな能力は易々と習得はできないだろうね。コピー能力にはいくらかの欠陥があると考えられる」


俺の事などお構いなしに名探偵星野は推理を続ける。あたかも周囲の人間にこの情報を伝えるように。


「じゃあコピーの手順が煩雑なのか? ……違うね。触れた瞬間にコピーできないと言っていた。ならばコピーのクオリティが低いと考えられる。妥当な調整だろうね」


明快にさらさらと俺の能力を暴いていくがまだ彼は止まらない。


「けれどもそれではコピー能力は一瞬でバレてしまうね。能力の漏洩はこの能力に関しては致命的だ。だから強化された《月光》をメインとして利用した。先の口ぶりから察するに、その《月光》に能力無効化が付いていると思わせて、それだけがいかにも自分の能力であるように見せた、というところかな」


「ご明察。訂正不要の見事な推理だ……やってくれたな」


《夜叉》の仕様もトリックも何から何まで暴かれた。しかもそれを聞いた奴は大勢。となると情報の拡散はもう止められない。


「ダンジョンみたいなフィールドで襲うならともかく、こんな街中で襲うのは許せないからね」


「とことん正義の味方気取りだよな」


鬱陶しいとは思いつつも外野は星野に感心する連中、拍手する連中、讃える連中で埋め尽くされている。何を言っても負け惜しみと捉えられるのが関の山だろうな。


「とはいえ、君の能力を暴いただけではフェアじゃない気がするんだ。だから僕の能力も教えてあげようじゃないか」


そう言って星野は剣を高々と空へ掲げる。すると突然、その剣は柄から刀身に至るまで全てが白く光り出す。沈む事の無い太陽がその剣を照らし輝く様は《陽光》の比にはならない。


これが《光芒》の実力だというのか。


「1つ目は《闇》の無効化。君と考える事は同じさ。お互い魔力消費には気を付けないとね。そして2つ目。それは周囲のプレイヤーから《光》の魔力を吸い上げるというものなんだ。そしてそれはこの剣に蓄積されていく」


見ると周囲の人間からはキラキラと光る粒子が出ていき、それがあの剣に集まっている。という事はつまりあの粒子こそが《光》の魔力なのか。


「皆の《光》で輝く剣、だからその名を《皆輝剣(かいこうけん)》というのさ。……これくらいは覚えて帰ってほしいな!」


言うと同時に刀身が伸びる。集まった《光》が刀身を覆うように集まり、編み込まれ、それは《皆輝剣》を大剣のような見た目に仕立て上げる。


「伸びたくらいで負けてたまるかっての……!」


正直伸びただけだとは微塵も思えない。他の要素もガチガチに弄られているのだろう。そうは思っても周りには人も集まり逃走を図ることすら難しい。


いや、周囲の人間だけなら逃走は多分どうにでもなった。その辺りは想定内だった。《夜叉》を使えば何とかなると思っていたから。


しかし目の前の星野。コイツはダメだ。あまりにも想定外過ぎる存在。下手に背中を見せるのは逆に命取りとなる。


そんな事を一瞬で考えると取る行動は正面から迎え撃つしかない事に気づく。


破れかぶれでもとにかく《夜叉》を纏い、石版の能力で足場を作り撹乱を試みる。うまく背後に潜り込めば剣は届く事はない。


そのための道を石版は作り出し、俺はそれに飛び乗り進み出したのだが――


「そんなにわか仕込みじゃ僕は倒せないと分からないのかい?」


一閃。その斬撃は新たな刃となって石版を残らず砕いていく。丁度、ツグミの斬撃のような真似を軽々とこいつはやってのけた。


「その剣……斬撃も飛ばせるのかよ……」


「集まった《光》は僕の意思でどのようにも使えるのさ。万能の能力と言うのならば《皆輝剣》の方が近いんじゃないかな」


たった今見せられたデモンストレーションでコイツは遠近両方のどちらでも対応できるという事はまざまざと感じられた。


そして空中の俺よりも高く飛び、頭上からその万能の得物で俺を打ち落す。


「ダメか、押し切られる……!」


《夜叉》を纏っているのに相殺すら敵わない。同じ100%同士の対決とは思えないほど一方的だった。


俺は地面に打ち付けられ、それを眺めるは銀髪の勇者。そんな構図が完全に出来上がっていた。


「あんまり長引かせていたぶるっていうのは面白くないと思うんだ。だからこれで終わらせよう」


そう言いながら剣に魔力を集中させる。《光》の魔力がチェーンソーの刃のようにギザギザとした形になり刃の部分を覆っていく。


あれで体を真っ二つにでもされるんたろうか? その時の演出は? 全年齢ゲームだからグロテスクな事にはならないだろうなあ……。


そんなお得意の現実逃避をこれまた非現実の空間で始めてしまう。もはや癖になっているなあと思うが降って湧いた思考は止められない。


そう言えば《バベルの長城》ではこんな時にツグミが助けてくれてたんだっけか。不意に今はもう会うこともないであろうパーティメンバーの事を思い出す。


しれっと現れて助けてくれれば……と思うがここは《白都》だ。《光》を操りし陽キャ様の楽園。アイツが紛れ込むのは無理がある。


最後の最後に誰かを頼ろうとするとは我ながら虫のいい話しだよなあとも思う。


「これに懲りたら二度とPKはしないでくれ……そうすればいつだって僕達は君を歓迎するからさ」


凶暴そうな得物とは裏腹に慈悲深くそんな事を宣ってくる星野。普通の人間なら改心、ないしは反省でもするのだろうが目の前にいるのは陰キャの頂点、《晦冥》様だ。


「お前らに歓迎とか勘弁してくれ……死にたくなるから」


死にそうな奴が何言ってんだと自己嫌悪に駆られるが、言葉は口に出さないと通じない。ソースは現実世界の俺。……少しくらいは憎まれ口を叩いた方が俺らしいだろう。


「……そうか。それは残念だ」


もうこれ以上は話す事はないと言った様子で《皆輝剣》を振り下ろす。腹に一直線に向かうその剣筋は上半身と下半身を一刀両断にするつもりなのだろう。その様子を想像して思わず目を瞑る。


……がいつまで経っても痛みが襲ってこない。痛みを感じないレベルのダメージを受けたのか?それとも痛みは一瞬で既に光にでも包まれているのか?


恐る恐る目を開けるとそのどちらでもない事に気がつく。


「……胴体が繋がってる?」


剣は俺を襲っていない。じゃあ当の剣はどこに行った?そんな疑問は発せられると同時に解決した。


振り下ろされた《皆輝剣》は鍔迫り合いの真っ只中で忙しそうにしている。その相手をしているのは白く輝く日本刀。それを携えた少女は長い金髪をなびかせ、俺を守るように立ち塞がっている。


「……大丈夫?」


そう言って笑いかけるその顔には見覚えがある。髪の色こそ違うが、彼女は昨日《バベルの長城》で行動を共にしたアイツに他ならなかった。


「……ツグミ?」


ありえないと一蹴した展開が実現し、動転した俺は開口一番、たったそれだけしか言葉を発せられなかった。


「そうだけど?」


「えっと……その髪……染めたのか? 黒くなかったっけ……」


「んー、そういうわけじゃないんだよね」


そんな歯切れの悪いやりとりをしている横でさらに戸惑いを隠せない人間が1人。


「ツグミ……!? ツグミなのか!? それなら話したい事がある! 僕の話を」


「兄さんと……あの家の人に話す事なんてもうないから」


星野が何か言おうとするも最後まで待たずに日本刀を振り下ろすツグミ。その神速の乱撃は会話を挟む余地など一切与えない。


「待て……僕の話を……!」


互いに剣を扱い慣れているのか、互角の勝負を繰り広げる2人。だが、そこに介入の余地が無いわけでもない。


「使え!」


ポーションを飲んだ俺が石版を実体化させる。俺が声をかけるより、星野が反応するよりも速く、ツグミはそれを利用し背後へと回り込む。


「いくよ、《黒百合》!」


その刹那、ツグミの髪色が変色してこれまでの見慣れた黒髪へと変貌を遂げる。見れば刀もそれに合わせて黒くなっている。


「しまった!」


星野の隙を的確について斬撃を飛ばすツグミ。《光芒》の特権だろう、恐るべき身体能力で飛び退ろうとしたがツグミはそれすらも読んでいて、さらにもう一閃、斬撃を飛ばしていた。


「ぐああっ……あああっ!?」


「兄さんは《光芒》だもんね。《闇》の100%の攻撃は思った通りよく効くね」


悶え苦しむ星野に対して聞き捨てならない事をさらりと言った気がした。


「え? お前も《晦冥》なのか……? でもさ……1人だけのはずだよな……」


「ううん、私は《晦冥》なんて持ってないよ」


そう言いながら踵を返しこちらの方へと向き直る。その顔にはいつも通りの悪戯っぽい笑みを含ませこう言った。


「でもね、私もちょっとした能力は持ってるんだよね。名前は《黄昏》! いい響きでしょ?」

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