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L&D - 陽キャは光と、陰キャは闇と -  作者: 新島 伊万里


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俺の対極

「……誰?」


 少女を襲うその瞬間に《陽光》を使って邪魔をしたその闖入者に告げる。


 格好としては完全にあっちが正義の味方で俺がクズ野郎になっているこの状況。人が少しずつ集まってきているので早く離脱したいんだけど。


「僕かい? 僕は星野ユウスケ。ただのプレイヤーだけど。そういう君は?」


「……」


 その問いには沈黙でもって返す。何となく俺に都合の悪い事になりそうだから。


「じゃあ、何をしようとしていたのか聞いてもいいかな?」


「……」


 これも沈黙。素直に《夜叉》の事を喋るわけにもいかないし下手な言い訳も思いつかないし。……ヤバいヤバい、俺はどうすればいい?


「そ、その! 《闇》っぽい技で殺されそうになったんです!」


 そんな一方通行の俺達の会話に突如として、被害者の少女が割って入る。


「……つまりPKをしようとしてたと?」


「いや……そういう訳では……」


 さっきから俺の事を訝しげに見ていた星野はさらに厳しい視線を俺に送りつけてくる。……不味い。どうにかして穏便に事を進めないと――


「それと! 私の能力について聞か」


 能力。その言葉が出た瞬間に勝手に手が動いていた。殺人犯がよく言う、ついカッとなってやったというそれに近いかもしれない。一瞬の沈黙の後、星野が口を開く。


「……今この瞬間、PKしたところを見たんだけど、どう言い逃れするつもりだい?」


「……流石に言い訳できねえよなあ……」


 光となって消える少女に思いを馳せても突破口は見出せない。そう、《光》にすがるべきではないのだ。真にすがるべきはそう、《闇》だ。


「……だったらっ!」


 ノータイムで星野とやらを睨みつける。GMは言っていた。手を突き出さなくても《月光》は放てると。


 瞬時に空中に現れる2つの魔法陣。そこから最高速度での《月光》が彼を襲う。が、そいつは怯えるでもなくましてや虚を突かれたという素ぶりすらも見せなかった。


「言い訳できないから実力行使か。その判断の速さには驚いたけれど……」


 そう言って星野は一度呼吸を整える。同時に《光》が彼の元に集まってある形を作っていく。


「それだけだ」


 現れたのは剣だ。スタンダードな洋風の剣。鞘や柄こそ青や金の装飾がなんとなく見て取れるが、刀身そのものはいたって普通の銀色だ。


 どのゲームでも見るような何の工夫もないその剣だが、星野が握ると歴戦の勇者のような風格をこいつに与えているように感じる。


「はあっ!!」


 その剣を片手で握り素早く振り回す。非線形なその軌道は迷いなく俺の《月光》を撃ち落としていく。


「今度はこちらの番だ!」


 《月光》を振り払った後もなお剣は踊るように軌道を描き、彼の腰の辺りで切っ先を後方、柄を俺に向けた状態で静止する。


「!」


 と、同時に星野が弾丸のようにこちらへと直進してくる。その速さは例のゴーレムに勝るとも劣らないといった印象だ。


「これで終わりだ!」


 間合いを詰めると同時に剣を振り抜き俺を襲う。しかし軌道は見える。何とか目で追える。《晦冥》の特権で動体視力まで上がっているのか? ゴーレムを倒してレベルでも上がったのか?


 まあ今はそんな事を気にしてはいられない。軌道は多分俺の左肩を切り裂いてそのまま首まで到達させる。そんなところだろう。いずれにせよ下から上への切り裂き攻撃。


「……ッ!」


 瞬間、体を仰け反らせてブリッジのような体勢を作る。刀は空を切り、星野の体に隙ができる。腹部が無防備になっているからそこに《月光》でも撃ち込んでやろうか。


 そう思ったのは剣を振り抜いた後にもう一度切り返すのにはタイムラグができる。そこを突けると考えたからだが、その見通しは甘かったと知る事になる。


「僕を見くびるなよ」


 その呟きが聞こえた時には既にこちらへ向かって剣が迫っているではないか。


「速い!? ……くそ!」


 ブリッジの姿勢のまま両手から《月光》を放つ。足をコンパクトに折りたたんでそのまま後方へ飛翔する。


「悪くない身のこなしじゃないか」


 放たれた斬撃はギリギリ膝を掠める程度で済み、ダメージらしいダメージは感じない。


 そのまま空中で何回転かして地面に着地するという瞬間、その回転の勢いを利用して地面を蹴る。


「このまま逃げるだけだと思うなよ」


 肌が引き裂ける程の風を受けながら一気に星野との距離を詰める。右手には既に《夜叉》を纏っている。もちろん目的はこの剣のコピーだ。劣化版でもこれは主戦力になりうるはずだ。


「いけ、《夜叉》!」


「受け止めろ、《皆輝剣(かいこうけん)》!」


 光の剣と闇の爪がぶつかり合う。それをいとも容易く俺は塗り潰し、鍔迫り合いを想定している星野の首を搔き切る。


 ――そのはずだった。


「は? なんでだ! なんで《夜叉》でコピーできないんだ……!?」


 剣と爪は未だ鍔迫り合いの真っ只中。虚を突くはずが逆に虚を突かれた形となり、思考がホワイトアウトする。


 しかしこの瞬間、明らかな隙ができたにも関わらず追撃が飛んでくる事がなかった。見ると星野は星野で信じられないというような顔をしている。


「おかしい……なぜ僕が《闇》を無効化できないんだ……!?」


「……このっ!」


 左手にも《夜叉》を宿し再びコピーを試みる。両手を使い何回も何回も剣にプレイヤー本体に攻撃を仕掛ける。


「しまった!? ……けれど、手数で勝てるとは思わない事だ!」


 が、それも全て剣で対応する。いつもはとっくに塵となっている《光》は忌々しく俺の眼前で煌めいている。


「オオオッ!!」


「ちっ……!」


 星野の大振りの一撃。両腕を交差させギリギリでダメージを受け流すが、その勢いはどうにもできず後方まで滑らされる。


 それにしても《光》相手にこの戦い方はどういう事だ。今までの奴らと何かが違う。


 ……待てよ。あいつはさっき、《闇》を無効化できないとか言っていたよな……。


「……まさか、お前……」


「その顔、君も察したようだね。……いや、正直僕も驚いたよ」


 そうしてこいつは俺の仮説を、まるで心を読んだかのように唱え出す。


「属性の配分が100%の相手の能力は無効化できない、なんてね」

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