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L&D - 陽キャは光と、陰キャは闇と -  作者: 新島 伊万里


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これより目指すは正義の根城

「……パチンコの面白さが分からねえ」


 なんかレバーをガチャガチャ回して玉が出て銀の棒の上を跳ねる。自画自賛になってしまうが俺やツグミには比べ物にならない程不恰好に銀玉は跳ねる。跳ねる跳ねる跳ねる。そして無残にも奈落の底へと吸い込まれていく。残ってるのは虚無感のみ。


「……どうやって勝てばいいんだこれ」


 俺は今《黒都》の中のゲームセンター、そのパチンコ台に向かっている。想定よりも恐ろしくささやかになってしまった報酬を倍にしてやろうなんて短絡的な発想でここにいる。現実ではずっとそんな事を考えていた。


 全年齢用のゲームでパチンコができるのは如何なものかと思わなくもないけどまあ現実のゲーセンにもあるしなあ。あの百円入れるやつ。それにこの街らしいと言ってしまえばそれで片付けられそうな気もする。


 てな感じで売っているけれども残金は減っていくのみ。ただただ悲しい。


「まあ経験値が増えたと考えればマシな気もするけどさ……」


 パチンコで稼いだ経験値がどれだけ多いのかなんて見当もつかないが。


「やっぱ何か他の事をやった方がいいよなあ……」


 そうは思うがやるべき事が思いつかない。何かやらないとっていう謎の焦燥感には駆られるも肝心の中身が伴わない。なんつータチの悪い感情なんだ。


「……それにしても《夜叉》は上手い事決まったなあ」


 正式名称《夜叉の窃盗》。《光》を無効化してさらにその能力をコピーするというこれだけ聞くと最強の能力に見える代物。


 実際には詳細な能力をコピーするのが面倒、そもそものコピーが劣化版という改良の余地を残しまくっているものだが。


「……手っ取り早く強くするにはやっぱり強い能力でもコピーすればいいのか?」


 自分の能力の癖に中途半端な理解なのであれだがコピー元が強ければ強いほど劣化版とはいえそれなりのクオリティになるのではないか。


 結構理にかなっているのではないだろうか。誰もそんな問いかけには答えてくれないけれどもそんな事は問題じゃない。次なる目標はこれだ。とにかくそうしようと思う。他に何も思いつかないしな。


 となると次は標的探しだ。俺には頼りにできる人がいない。現実にもここにも。必然的に情報は恐ろしいくらいに入ってこないのだ。


 どこにどんなモンスターがいるとかNPCがいるとか一切不明。おまけにwikiすら存在しないとなるといっそ俺みたいなのを淘汰する気なんじゃないのか、なんて謎の陰謀論を唱えたくなったりする。誰得の話だよ。


 まあでも心当たりが無いわけではないんだが。俺はパチンコ屋を後にして常夜の街を歩きながら呟く。


「GM。俺を《白都》まで飛ばせ」


「いきなり呼びつけて命令口調ときましたか……。しかし何でまたそんなところに? 貴方が寄り付くような所ではないと思うのですが」


 確かにそうだ。《白都》は多分陽キャの陽キャによる陽キャのための都市だ。俺みたいなのが好き好んで行く理由なんてないよな、普通は。


「《白都》に行ったら《光》の強い能力を持った奴が結構いそうだろ。そいつらの能力を盗もうと思って」


「確かにあの都市なら石を投げれば《光》メインのプレイヤーに当たるくらいにはゴロゴロいるでしょう。当然良い能力を持った方もいるかと」


 ですが、とGMは付け加える。


「1人で大丈夫ですかあ?《光》の本拠地ですよ? 《陽光》の集中砲火を浴びれば《晦冥》と言えど死にますよ。昨日の日本刀を持った可愛い子を誘うのはどうです?距離も縮まり戦闘面も安心。最高でしょう?」


「無駄にベラベラ喋る奴だな……わざわざ誘う理由もねーよ。あっちにメリットもないし。第一連絡方法も知らないし」


「あー、昨日フレンド登録しなかったんですか?」


「そんな機能初めて知ったぞ。どのみち使わない機能だから責める気も起きないけどさ……」


「ヘタレというか流石というか……」


「つかもういいだろ。無理だと分かればすぐ退散するから。とにかく飛ばしてくれよ」


「ま、GMの一存でテレポートを拒否なんてできないので飛ばしますけど……後悔しないでくださいよ?」


 いつになく念を押してくるGM。少し不安になりつつ、何かイベントのフラグではないかと思ってしまう。もしくは死亡フラグか。


「テレポートの前にはこのように光ります」


 体が光に包み込まれながら忠告が続く。


「つまり、テレポートでトンズラを決めるにしても光量が凄いので見つかる可能性が高いです。場所を上手く考えてくださいね」


 今日はやけに過保護だな。聞くまで最小限の情報すら与えなかったあの調子とは大違いだ。いっそバグってるのではないだろうか。


 GMの言っているその眩しい光量が全て俺の体へと収縮していく。


「まあ何でもいいけどな。《夜叉》を使えばある程度は戦えるだろうし」


 この時既に俺は間違いを犯していたと今となっては認めざるを得ない。《夜叉》を作ったのもそれを利用するのも現実では何一つ満足に出来ないダメ人間が作り出したんだ。だから気づいてもよかったのに。


 いくらゲームの世界でも、いやゲームの世界だからこそ考えなしに行動してもロクな事にはならないって事に。

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