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58 霧島 一時帰国 ☆


ルームサービスの担当者が来る30分ほど前に、フロントからかかってきたモーニングコールで目を覚ました霧島。



パパッと身支度を済ませ、人に見られても問題ない見た目に仕立て上げた。


手際よく朝食の準備を進めていくホテルマン。

霧島は気になったので、準備をしている彼に、それらの銀食器はどこのものですか?と聞いてみた。


「これはクリストフル社のものです。ルイフィリップ フランス王から王室御用達の認定を受けたメーカーで、世界中で愛されているメーカーです。」


霧島は、このホテルのスタッフには、もはや何を聞いても答えが返って来るのではないだろうか?と思い始めていた。


美味しい朝食を食べ終え、最後の身支度を済ませた霧島は荷物を持ってフロントに向かう。


霧島はチェックアウトをし料金を支払おうと思ったのだが、すでに会社から支払い済みだった。

そもそも、サンズグループはオテルドゥパリと年間契約をしているらしく、ダイヤモンドスイートの一つ下の普通のスイートルームにならいつでも泊まれるらしい。

しかし、運良くというか運悪くというか、たまたまスイートルームが満室であったため、その一つ上のダイヤモンドスイートに泊まることができたということらしい。


霧島は、なるほどと思い、この高待遇に納得した。

フロントを後にした霧島はドアマンに車を持ってきてもらい、488ピスタでコートダジュール国際空港に向かう。


ピスタの運転に慣れてきたことも手伝い、高速では少し飛ばしてしまったため予定よりなかなか早く空港に着いた。


空港のスイートラウンジでゆっくり時間を潰し、優先搭乗で飛行機に乗る。


なまじ、行きではプライベートジェットだったため少し狭くすら感じた。


ロンドン・ヒースロー空港から成田空港の道のりは大変快適で過ごしやすかったが、やはりプライベートジェットには劣る。

霧島は贅沢になってしまったなぁと恥じ入る気持ちでいっぱいだった。

だからこそ、積極的にお金を使っていこうと、新たに目標を立てた。

自分が率先してお金を使って経済を回していこうと。


成田から伊丹はドリームライナーで向かった。

ドリームライナーは新しい機体ということもあり、すこぶる快適なフライトだった。




伊丹空港に着き、駐車券の処理をしてもらい、行きの時よりもだいぶ重くなったリモワのスーツケースと、細々した荷物でいっぱいになった新しい相棒のエルメスのバーキン60を引っ張りi8まで向かう。


なんとなくi8を見ると嬉しい気分になるため、ニヤニヤしつつも車に乗り、荷物を乗せる。

一気に狭くなった気がするがそこはご愛嬌ということで霧島は無視する。

エンジンをかけ、静かな音がする。

ちなみにi8のアイドリング音はスピーカーから出ている音だ。


伊丹空港から阪大近くの自室に戻る。

荷物を一度家に置き、車を近くのコインパークに置き。また部屋に戻る。

今は二度手間三度手間だが、来年にはもっと楽になる。


やはり、車を置きに行ったりするのは不便なので、大学の近くに土地を買って、秘密基地的なガレージハウスを作ろうと心に決めた霧島だった。

日本に帰ってきた日、霧島は泥のように眠っていたが、次の日からはかなり精力的に活動していた。



まず、霧島は自分が持っている全ての口座のうち、今通帳記帳ができるものは記帳しておこうと、まず、証券会社の口座を確認した。


そこで明らかになったが、霧島が保有している数十社の株式のうち何社かが、配当日を迎えたらしく、証券会社の口座には60億円ほど振り込まれていた。

その時まで気づかなかったが、自身の保有する株式資産がもうすぐ1000億円を超えそうであったため妥当な結果である。


その振り込まれていた60億円を自身の口座に分散して送金処理する霧島。

処理が済んだところで、通帳の束をもち、i8で銀行巡りに向かう。


その際全ての銀行で頭取が出て来て、ぜひ運用しませんか?といわれたが、もう間に合ってますと断る霧島だった。

記帳ついでに1000万ほど現金を下ろしておく霧島。その現金をバーキンに無造作に突っ込む。



銀行の次は税理士である。

淀屋橋の顧問税理士のところに向かい、話をするとその話はもう向こうの税理士とついているとのこと。

顧問税理士さんはサンズの税理士が世界4大会計事務所のデロイ◯トーマ◯だとは知らなかったらしく、向こうから突然メールと電話がかかってきたときはかなり緊張したとのこと。


その時に加えて付け加えられたのが、所得税の問題だ。

かなり荒稼ぎしたので、おそらく相当持っていかれるという話を受けた。

年末にはより詳しい話をするのでまたきて欲しいとのことだ。



その後も細々した用事を片付け、そろそろ晩飯かと行った頃になると霧島はソワソワし出した。

実はこのあと約束があるのだ。

日本に帰るにあたり、連絡を取ったのは、全ての始まりとなった中村さんである。


その中村さんとご飯を食べにいくことになったのだ。

場所はもちろん、さえ◯。

全ての始まりの場所で全ての始まりの人と会うのだ。いくら霧島とて緊張しないわけがない。


ホテル日航に行き、車を預けタクシーで店まで向かう。

約束の時間まではまだ少しあるが、霧島の緊張は解けない。

今の自分を見てなんていうだろうか?

どんな感想を持つだろうか?

怒られるだろうか?

そんな感情が霧島を支配する。



そして、そろそろ約束の時間というところで店の引き戸を開ける音がする。



2019年2月7日

所得税の問題を記述するため、税理士の文言に付け加えました。

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