56 ☆
二日目ともなると霧島も慣れたもので、颯爽とVIPルームに向かう。
ウェイターからサロンのシャンパンサロンのシャンパンを受け取り軽く口をつける。
最近シャンパンといえば、サロンしか飲んでない気がする。
そう感じた霧島であったが、そうではない。
実際はサロン以外も飲んでいるのだが霧島の印象に残ってないだけの話である。
ウェルカムドリンクにモエ・エ・シャンドンをもらったり、店でヴーヴイエローを飲んだり。
しかし、サロンを飲み慣れた霧島にとってはもはや印象に残らない。
霧島の印象に残る酒といえば、それこそドンペリのプラチナや、クリュグなどを持ってくる他ないということになってしまうのだ。
昨日と同じように、ハイローラー用のルーレット卓に腰かけた霧島。
両隣をゲストに挟まれるのはなんとなく嫌だったので、端っこの席に。
霧島は昨日預けておいたチップのうち20枚だけ出してもらった。
その20枚を座っている座席に応じた色のチップに交換すると一息ついた。
すると隣に、上品なダークブルーのスリーピーススーツに身を包み、ややグレーがかった金髪で、ヨーロッパ人にしてはやや小さい身長の男性が座る。
やや神経質そうな笑みを蓄え、彼は霧島にあいさつをした。
この真夏にスリーピースのスーツを着ていることから興味を惹かれた霧島は彼の動向に気を配ることにした。
好き勝手生きているように見える霧島とて他の人間が気にならないことはない。
まずいくら交換するのかと見ていたら、彼はおもむろにカジノのボーイを呼んだ。
何を伝えているのかは分からなかったが、指示を受けたボーイは銀のトレーに乗せられた大量のチップを持ってきた。
ざっと見て200枚はあった。
しかも、霧島が預けている5万ユーロチップよりも高額な10万ユーロチップだった。
霧島は動揺したが、逆にこの太客が壁になってくれて、少しの大勝負では自分は目立たなそうだなと感じていた。
「今日はもうすこし大きく勝てそうかな。」
霧島は小さな声で独り言のように呟いた。
5万ユーロチップを細かくしてもらい、様子見をしつつちまちまと賭けていく。
すると、となりの上品なヨーロッパ人の方が勝つ。
勝つ。さらに勝つ。
あっという間に膨れ上がる10万ドルチップ。
「すごいですね…!」
思わず声をかけてしまった。
「たまたまですよ。ついている時はとことんついてるんです。」
彼は機嫌良さそうに話を返してくれる。
そして、彼は負けない。
数字を直接指定する掛け方はしないが、常に勝ち続ける。
みるみるうちに、数え切れないほどのチップが彼の前に積み上げられた。
すると彼は目の前に積み上げられたチップを見て満足そうに頷くと
「それじゃ。」
と言って帰っていった。
ボーイがまた銀のトレーにチップを乗せて帰っていく。
霧島がぽかんとした顔でそれを見送ると、常連らしき男性が教えてくれた。
「彼はヨーロッパやアフリカで多数の鉱山を経営する鉱山王だよ。大きな仕事の前にはここにきて運を試すみたいだよ。
ちなみにここで大負けした日はその大きな仕事も流すらしい。」
「へぇ、そんな人がいるんですね。
確かに鉱山経営は運に左右されるところもありますからね。」
結局その日も少なく負けて、大きく勝つことを繰り返し、預け入れたチップは二日間で100枚
500万ユーロになった。預け入れた残りの端数は交換してみると2万ユーロほどになり、その中から数枚の紙幣を現金でディーラーにチップを渡す。
財布にその現金を、入れるといよいよパンパンになってしまったが、霧島はまぁいいか。とカジノ内を探索する。
初日は気付かなかったが、霧島なんて目じゃないような金額を現金で賭けている人もチラホラ見受けられる。
札束をアタッシュケースに入れてお付きの人に持たせている大富豪なんていうのも見た。
霧島は、すごいなぁと思いつつ併設のバーでお任せで頼んだワインと軽食を腹に詰め込み、カジノモンテカルロ を後にした。
玄関を出ると、アストンマーチンやロールスロイス、ベントレー ミュルザンヌやフェラーリ、ランボルギーニなど世界の名だたる高級車がパレードのように並んでいた。
眼福だな…。
そんなことを思いながら霧島はオテルドゥパリの部屋に帰り、良い出会いに感謝しながら眠りについた。
2019年 1月24日
霧島の横に座ったヨーロッパ人についての掛け方(マーチンゲール法)について、感想欄にて間違いを指摘いただきました。
ここに関しては、該当箇所を全て削除いたしまして、後ほど新しい技術を追加させていただきます。
間違いをご指摘下さいましてありがとうございまし
た。
2019年2月8日
ヨーロッパ人に関する記述を追加しました。




