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翌日、ゆっくりと目を覚ました霧島は熱めのシャワーを浴びて体を活動できる状態にする。
フランスでは朝は軽めに済ませるのが主流なため、モナコもその例外では無くホテルの朝食は充実しているとは言い難い。
しかし、高級ホテルともなれば、その例には当てはまらない。
朝から割と豪華な食事を頂き、霧島は行動を開始する。
ホテルのスパで体をいたわり、プールで泳ぐ。
程よく汗を流したところで併設のプールバーにて体を休める。
余談ではあるが霧島の体は、ゴリゴリの筋肉達磨ではないが、かなり引き締まっている。
車移動が増えたため体を動かさなくなり、全体的に緩んできたとひとみに指摘されたことから、バイトを辞め空いた時間でなるべくジムに通うようにした。
ジムで体を鍛えるためのモチベーションとして何かスポーツを始めることを勧められ、小6まで続けていたゴルフを再開したりもした。
大阪の家の近くに止めてあるレクサスの荷物スペースには霧島のゴルフバッグとゴルフシューズが積んである。
ゴルフクラブはブリジストンでゴルフバッグもブリジストンだ。
そんな引き締まった体をした長身で黒髪のアジア人が一人でプールバーにいると、なかなかに目を引くらしい。
ブロンドの女神のような美しい女性や、赤毛で活発な印象を受ける素敵な女性からたくさん声をかけられた霧島だが、ヨーロッパで軽率な真似をできるほど霧島の肝は座っていない。
軽く会話し、その場の雰囲気を楽しむことにとどめておいた霧島の判断は堅実と評して余りある。
バーテンダーから、せっかくのお誘いなのにもったいないと苦笑いされるが、霧島は余り押しの強い女性は苦手でね。とおどけておく。
そうこうしているうちに昼前となったところで、プールから上がりシャワーを浴びて町歩き用の格好に着替える。
モナコの街にふさわしくあるように、ヴェルサーチの上品なサマージャケットを羽織り、オリバーピープルズのサングラスをかける。
ドアマンにフェラーリ488ピスタの鍵を渡し車を受け取る。
車を駆り、霧島が向かったのはエルメス。
財布とバッグを買うためだ。
霧島は昨日カジノに行って気づいたが、ポルトフォイユブラザは普段使いにはちょうど良い大きさだが、タキシードなどのスーツスタイルには少し大きすぎる。
内ポケットには入ることは入るが、かなり胸が膨らんでしまうし、手に持つというのもどことなく不恰好。
クラッチに入れて昨日は持って行ったが、どことなく居心地が悪い。
そこで霧島はスーツ用の財布を調達しにきたのだ。
買うのはもちろんベアン 。
エルメスらしいデザインで、キーケースとお揃いにしようというのだ。
霧島は店に入り、ベアンを物色する。
店員さんに声をかけると、特別に限定品のベアンを出してくれるということになった。
店員さんが持ってきたのはサックスブルーのベアンだった。
霧島はなんとなくその色がとてもモナコらしく思えたので、すぐに購入。
バッグを見るがバーキンの小さいサイズしかない。
霧島はまた同じ店員さんに、バーキンの大きいサイズはありませんか?と聞くと
実はまだ入荷したばかりで店頭に出してないものがエトゥープ色ならあるとのこと。
サイズを聞いてみると60サイズだという。
奥から出してきてくれたので、ためしに持ってみると、体格が良い霧島にはちょうど良く見える。
これも即購入。
値段を聞いて、これがバッグの値段か?とも思ったがもう遅い。
大事に使おうと心に決めて持ち帰る。
ピスタの助手席に大きなエルメスのショップバッグを置きドライブがてらホテルに帰っているとトムフォードを発見。
すぐに車を置き、服ではなくサングラスを物色する霧島。
最初にお金ができたときにサングラスを買ったように、霧島は無類のサングラス好きだと思われがちである。
しかし、実際のところはサングラス好きというよりはむしろ小物好きという感が強い。
店内で、普段使っているものよりレンズの色がだいぶ濃い黒のサングラスを発見。
霧島は、ためしにかけてみる。
自分が思っていたよりも違和感なく受け入れられる。
結局、黒のSNOWDONともう一つパイロットタイプのAARONというサングラスが気になった。
特に具体的に使い道を考えたわけではないが気に入ったため購入。
購入した後に気づいたが、見る人が見たら一発でわかるレベルの00オタクファッションになってしまったと後悔する霧島。
しかしそれも、気に入ってしまったのだから仕方ないと割り切る。
先ほど買ったばかりのSNOWDONとオリバーのサングラスを交換し笑みを浮かべながら次の目的地に向かう。
昨日行ったレストランル・トレインブルーできいたリロンデルというレストランである。
リロンデルではマーケットメニューというシェフのおすすめを食べる。
本日のシェフのおすすめは、メバルのアクアパッツァであった。
白ワインの香りとオリーブの香りがなんとも芳しく、霧島の脳髄を刺激する。
思わずワインを注文しかけたが、車で来ていることを思い出し、踏みとどまる。
自身の宿泊する部屋に帰ると、早速ベアン の中に紙幣とクレジットカードを入れる。
入れてみるとわかるが、なかなかに容量が大きいことに霧島は驚いた。
500ユーロ紙幣を持っているだけ入れてみると、ちゃんと入ったので、大満足である。
ベアンには3万ユーロだけ残し、残りはポルトフォイユブラザに移しセーフティに入れておく。
カジノに行くにはまだ早い時間だったので、霧島はフロントに連絡しアフタヌーンティーの準備をしてもらう。
部屋のテラスで地中海を眺めながらアフタヌーンティーを楽しむ。
初日は気づかなかったが、食器にもかなり気を使っていることがわかり、本日の食器は全てジノリだった。
ホテルのランドリーから受け取った勝負服に身を包み、ベアンを内ポケットに装備する。
完璧。
そう感じた霧島は満足する。
お気に入りの勝負スタイルで霧島はカジノモンテカルロに行く。




