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豪運 突然金持ちになったんですけど、お金の使い方がよくわかりません。  作者: ノニジュース


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カジノモンテカルロはオテルドゥパリの目の前にある。


霧島はモナコ中を散々探し回って、最後ホテルに帰るときに、ホテルの目の前の建物がカジノモンテカルロだとやっと気づいた。


カジノモンテカルロには名前がいくつかある。

ある人はグランカジノと言ったり、またある人はカジノドモンテカルロと言ったりもする。

しかし霧島はカジノモンテカルロという名前がシンプルで好きだった。


いよいよ霧島は世界中のカジノの聖地、カジノモンテカルロに入場する。


オテルドゥパリのダイヤモンドスイートに宿泊する霧島は、それだけでVIPルームに入場する資格を持つ。服装もちゃんとタキシードを着ている。

霧島が入場する際、パスポートで身分証を確認されたときに、スタッフがニヤリと笑った。


「霧島様は随分カジノがお好きなようで。


ラスベガスの話もマカオの話も伝え聞いてますよ。」


「随分と話が早いんですね。


今日はたっぷりと遊ばしていただきますよ。」

霧島も余裕たっぷりにそう返す。


「霧島様はVIPルームと一般ルームどちらになさいますか?


一般ルームではもう物足りないのでは?」


「そんなことありませんよ。


でも今日は大きな勝負をしようと思ってるので

VIPルームに。」


スタッフの額に一筋の汗が流れた。



「かしこまりました、それではご案内いたします。」


VIPルームは一般ルームのちょうど反対側に位置し、入り口も一般ルームとは異なる。

一般ルームには割とカジュアルな服装の客も見受けられたが、VIPルームにカジュアルな客は一人もいなかった。ディーラーも勿論タキシードだ。


霧島は案内されながら、建物の説明を受けて気づいたが、普通の人間ならカジノモンテカルロの内装も外観も見る人を圧倒する。

シャルルガルニエ設計のベルエポック様式の建物や、豪華な劇場もある。ちなみに、その劇場はかの有名なエッフェル塔を設計したギュスターフエッフェルによるものだ。


おそらく霧島もなんのプレッシャーも無い普通の精神状態であったなら心から景色や建物を楽しむことまで来たのだろうが、今は勝負の時である。


霧島はまずヨーロピアンスタイルのルーレットに案内してもらい座った。


ヨーロピアンスタイルとはアメリカンスタイルと異なり、ルーレットの数字が0〜36までの37個の数字で構成されている。

ちなみにアメリカンスタイルは0に加えて00もあるため38個である。また、アメリカにはアメリカンスタイルしかないし、ヨーロッパにはヨーロピアンスタイルしかないというわけでもなく、大体どこのカジノにも両方ある。


霧島が卓に着くと、ディーラーの顔が一瞬引きつった。

それもそのはず。霧島はすでにルーレットで、実質的に、カジノを1つ潰したからである。

カジノにおいてはJRAなどの日本のギャンブルとは違い、誰がどれだけの額をかけようともオッズの変化はない。

そのため、ルーレットで1万ユーロを一つの数字に賭けようと、1ユーロを賭けようと両方同じ32倍なのである。

そのために、理論上はカジノが潰れるという話があり得るのだ。こと、霧島に至っては、それが可能であることが実証されているために、カジノから恐れられるのだ。

しかもタチが悪いことに、霧島の爆勝ちは全て運によるものなのでイカサマでは決して無い。カジノとしてもルーレットはイカサマができないゲームであるためにイカサマを疑うこともできない。


ルーレットでイカサマを疑ってしまうと、そのカジノの信用に関わるのだ。

BJなど、ディーラーとプレイヤーの心理戦のようなゲームであるならイカサマのしようがある。

しかし、物理法則に従って動くボールの行方をカジノ側ないしプレイヤー側が、予知または操作できるとなると、もうそのカジノに信用はない。

以上のことから、カジノ側は霧島を疑うこともできない。

ちなみに、ギネスブックには黒が連続して24回出たという記録もある。


霧島は手持ちのユーロ紙幣のうち5000ユーロをルーレット専用チップに換えた。


「黒、オールイン」


ボールは黒に入る。


「赤、オールイン」


ボールは赤に入る。


「赤、オールイン」


ボールはまた赤に入る。

この時点で霧島の手元には4万ユーロ分のチップが積み上がる。


ラスベガスやマカオなら少し卓がどよめくところだが、ここカジノモンテカルロにおいて、それは全く珍しいことではない。


世界中の富裕層が集まるここ、モナコで、さらにその中の限られた一部の富裕層のみ立ち入りを許されるVIPルーム。

掛け金の額も半端ではない。

一晩で1000万ユーロ負ける者もいれば、一晩で1000万ユーロ勝つ者もザラにいる。

このカジノモンテカルロに来ている人物が桁外れなのだから、もちろんそこで動く金額も桁外れだ。

伊達にロールスロイスが渋滞する街でナンバーワンのカジノの看板を背負っているわけではないということである。


霧島は周囲のプレッシャーを感じることなく、黙々とプレイしていく。

その状況が霧島にとっても心地よいため、その雰囲気を壊さまいと頑張る。

適度に負けて、大きく勝つ。

これをひたすら繰り返すだけである。

オールインなどと目立つような発言は控える。


すると1時間ほどで4万ユーロが80万ユーロに。

チップを目立たないようにさりげなく高額チップに交換する。

側から見ると、そんなに枚数が多いようには見えない。

しかしながらそのチップ1枚が1万ユーロの価値を持つことに気付けるのは一部の遊び慣れた富裕層だけである。

そもそも本物の大富豪はチップ1枚がどれほどの価値を持つのかなど気にもしないが。

霧島も、分散して掛けたり、負けてみたり、大きく勝ってみたり、隣の席の紳士や淑女と会話をしてみたり、自分からの注意を逸らしにかかる。


これがなかなかスリルがあって面白い。


なかなか勝ってるようですねと紳士に言われれば、たまたま調子がいいだけですよと、社交辞令を返す。

そのすぐあとに少し負けてみれば紳士からの追及の手は緩む。

紳士も別に霧島を糾弾しているわけではないのだが、これは霧島の気分の問題である。

横断歩道の白くないところを踏むと死ぬルールと似たようなものがある。


そうして順調に勝ち進み、溜まったチップは300万ユーロほど。

5万ユーロチップが60枚と端数のチップが数枚だ。

5万ユーロチップを5枚だけ換金してもらい、端数の少額チップはディーラーにチップとして渡す。


換金すると500ユーロ紙幣が500枚。これくらいならギリギリ持てるなと思った霧島は愛用のルイヴィトンポルトフォイユブラザに突っ込む。入りきらない分は内ポケットにねじ込む。。

残りの55枚のチップのうち10枚を共通チップに交換する。

残り45枚はカジノに預けておく。

明日も遊ぶためだ。



交換した10枚の共通チップを持って霧島が向かったのはバカラのテーブル。

ここ、カジノモンテカルロではプントバンコという名前である。


このプントバンコも、プント(プレイヤー)に賭けるかバンコ(バンカー)に賭けるか、タイ(引き分け)に賭けるかの3択しか無いためほぼ完全に運任せである。

しかしそのルールを考えると、バンコの勝率がわずかに高い。勝ちに行くならタイに賭けるのはまずありえない。

なので微妙なときや迷ったときはバンコに賭けるのが基本である。

ちなみに、プントに賭けて当たると2倍、バンコに賭けて当たると1.95倍、タイに賭けて当たると掛け金が戻ってくるのがオーソドックスな倍率だ。


ここでもオールインなどと目立つ掛け声はせず、大人しく勝負を楽しむ。

霧島はこの場所で必死に金を稼ぎにかかることがひどく無粋に感じられた。

とは言っても負けるのは嫌だという煩悩はまだ捨てきれないでいる。


豪奢な調度に囲まれ、ゆっくりと流れる時間を大切にする。

時折運ばれてくる一流のシャンパンを口に含み、香りを楽しむ。


まだ二十歳そこそこの霧島に味の違いは大してわからないが、うまい。ということだけはわかる。


もとは10枚だったチップも気づけば5万ユーロチップが40と数枚、少額チップがほどほどに。


少額チップを全てチップとしてディーラーに渡すと、5万ユーロチップを先ほどと同じようにカジノに預ける。


まだ時間はそれほど経ってないように思えたが、夕食には少し遅いくらいの時間になっていた。


プントバンコの卓を立ち、カジノ内を探索する。



そういえば、ここのカジノは00シリーズで何回も見たよなぁ。


ブリオーニのオーダーのスーツ着て、ジョンロブの靴履いて、時計もロレックス。


まぁ本家の時計はサブマリーナだし、今はオメガだからちょっと違うか。


映画の中に入ってきた気分だなぁ…。



霧島は、この素晴らしい建造物と、それを維持する努力、そして客に夢を与える華やかさ、それらの全てが好きになった。


霧島は今回の旅行だけでなく、ひとみも連れてまた来ようと思った。


ちょっと夕食に、と霧島はカジノモンテカルロの中にあるル・トレインブルーに向かい食事をする。


ル・トレインブルーはオリエント急行をイメージしたレストランで、店内の雰囲気も、カジノと同じベルエポック調でよく調和している。


霧島は店員さんにオススメの店をいくつか紹介してもらったので、明日は行こうと思いつつ店をあとにする。


オテルドゥパリの部屋に帰った霧島は今日着ていたスーツをホテルのクリーニングサービスに出し、靴をシューケアサービスに出す。


ゆっくりとシャワーを浴び、備え付けのバスローブを着込み、満足のままふかふかの最高級ベッドで寝る。


大阪に帰ったら家のベッドを買い換えようと思いながら。






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