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病院に到着し、各種検査を済ませ、命に別状はないということがわかり、一安心した。
帰ろうとすると、ご老人の意識が戻ったらしく、挨拶をしたいとのこと。
否やはないので、ご老人の元に向かう。
「失礼します」
そういって霧島はご老人の部屋に入る。
「おぉ!霧島君だね!助けてくれて、ありがとう。持病があるので、あそこで君が助けてくれなかったらおそらく大変なことになっていただろう。私の母校でもあるあの大学で死ぬようなことにならず、本当に良かったと思う。ありがとう。」
予想外に元気そうなご老人の様子に、私は多少面食らった。
「阪大ご出身なんですね、じゃあ大先輩じゃないですか。自分としても、大先輩のお力になれたようで嬉しく思います。お体に気をつけてくださいね。」
「そういえば、自己紹介がまだだったね、私は中村義秀と言います。一応会社を経営しているよ。お礼と言ってはなんだが、ささやかなお礼をしたいと思うのだが、何が良いだろうか?」
「いや、気にしないでください。おそらく、誰でもあの場に居合わせたら、中村さんを助けたと思います。だから、どうぞお気になさらず!
でも、どうしてもというなら、お食事でもいかがですか?貧乏大学生なもので、美味しいものとはとんとご無沙汰でありまして。笑」
しれっと、食事を要求するあたりが図々しい霧島。
「若い者はそうでなくちゃならんな。よし、ぜひ美味しいものをご馳走しよう!日にちについては追って連絡するので、それでも良いかな?」
「やった!ぜひお願いします!それでは、くれぐれもお体に気をつけてくださいね!」
「そうだね、もう若くないんだから、くれぐれも体には気をつけて若い者には迷惑をかけないようにするよ笑」
「お食事楽しみにしてますね!それでは失礼いたします。」
病室を後にした霧島は、中村さんから頂いた名刺を眺めつつ、一食浮いたことを喜んで、食事に行くのを楽しみにしていた。