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34 霧島二人旅編


「熱海に行きます。」


「はい。」


そんな会話からスタートした、八月上旬のある日。


定期テストが終わり、張り詰めたものがふっと解き放たれるのは、この2人も例外ではない。


霧島は、テスト終わりで自分たちをねぎらう意味も込めてかなり高級なホテルを予約していた。


それは、かの有名な星のリゾートが展開するブランド、界 熱海である。



星のリゾート一回泊まってみたかったんだよなぁ。


と、ホテルマニアでもある霧島は考えて予約した。


「それでは出発しましょう。」


そう言いながらひとみはETCカードを差し出した。


「ひとみ、ありがとう。ちなみに、車で今回は熱海まで行くので5時間の移動と考えています。」


「ひゃー、5時間!長旅やねぇ!」



「車買ったから、ちょっと長旅に挑戦してみたくて笑」


結城「そいえば、この車自分で買ったの?買ってもらったんでしょ?親御さんお金持ちなの?」



「いや。自分で買ったよ。これを買うために頑張って貯めた。」


霧島は資産のことがバレないように少しの嘘を交えながら、そう話した。


「そうなんだ!でも最近羽振りいいよね笑

スーツケースも私が知ってる高級なやつ3つも買ってたし、しかもバイトもしてないし笑」


そう。霧島はバイトを辞めていた。

四月にシフトを減らしたが、資産が10億を突破した頃に辞める旨を会社に伝え、四月いっぱいで塾講師の職を辞していたのだ。


「まぁ、これまで貯めた分もあるし、ネットで色々稼いでるからねー笑」

少しぼかして霧島は答えた。


「ネットビジネスかー。なるほどなぁ。羽振りがいい人は羨ましいですなぁ!」


「そういう結城さんこそあんな豪華なファミリー向けマンション住んでおきながら、人の羽振りがどうのこうのよく言えますなぁ笑」


霧島はすでに結城の家を何度か訪れていた。

しかし、なんとなくタイミングが合わずに、まだ2人でお泊まりはしたことがなく、この旅行が初お泊まりとなる。


「まぁあれは自社物件だから。笑

実家が箕面の方で不動産屋さんやってるんだよね笑

そのおかげであんないいマンション住めてます笑」


「なるほどね、じゃあ正真正銘のお金持ちってことか!

いやぁ、羨ましい限りで。」

総資産300億の大学生がよく言うよな、と霧島は内心で思いながらひとみと会話を楽しんでいた。



期間がまだ盆に入ってないと言うこともあり道は比較的空いており、レクサスLXに搭載されているクルーズコントロールを存分に活用するととができた。


「クルーズコントロールって便利だよなぁ。アクセル踏まなくても自動でスピード維持してくれて進んでくれるんだもんなぁ。」


「あ、それ知ってる。うちの車にもついてる。」


「いい車乗ってんねぇ笑」


「うちの親は金持ってるからねぇ笑」


そんなたわいもない会話を楽しみつつ、途中のサービスエリアで何度も休憩を挟みつつ、とうとう熱海までやってきた。


沼津インターチェンジを降りたあたりから、ひとみが霧島に尋ねた。


「今回泊まるホテルは?」


「界熱海。」


「お、星のやつ?笑」


「そうそう、お星様の。笑」


そう答えた霧島の言葉にひとみは期待と興奮を隠せないようだった。

ひとみは楽しみだなぁ〜としきりにつぶやいていた。


朝7時過ぎに大阪を出発し、現在は昼の12時を少し過ぎたあたり。

2人はホテルに到着した。


2人が泊まる本館の駐車場に入るとすぐに係員がやってきて、霧島に声をかける。


「本日はようこそ、星のリゾート 界熱海へいらっしゃいました。お客様のお名前をいただいてもよろしいでしょうか?」


「予約しておりました霧島です。」


「失礼いたしました、霧島様。

お荷物がございましたらお預かりいたします。」


別に失礼ではないのだが、高級なところではこのような物言いをすることが多い。霧島はそんな感想持ちつつ、「ありがとうございます。」と返事をする


霧島はエントランス前の車止めに車を置き後ろの荷物スペースからご自慢のリモワと結城のトランクを取り出す。


積むときもしかしてと思ったけど、ひとみのグローブトロッターじゃん。やっぱり金持ちなんだなぁ。


霧島は二つの荷物を係員に渡す。


「とりあえずチェックインの手続きだけしておきたいのですが。」


「かしこまりました。ではご案内させていただきます。」


係員はそう霧島に告げ、案内を始めた。


チェックインカウンターに着くと、


フロントのスタッフによって、宿帳はすでに用意されており、ようこそ霧島様と声をかけられ、霧島はまたしてもホテルのホスピタリティに感激していた。

案内する際に係員がインカムでフロントに伝えていたようだ。



高級ホテルのホスピタリティしゅごい…。



チェックイン手続きをした霧島たちは荷物を預け、昼時ということもあり食事を兼ね観光に向かった。


2人は車を出し、伊豆半島ジオパークに向かった。


「龍宮窟っていうのがあるらしくて、それ行ってみたいんだよね。


「よしそれいこう。」

ひとみは即決で返事を返した。


伊豆半島ジオパークについた2人は、龍宮窟に向かい、大地のハートを鑑賞したり、海の青さに心奪われしばらく呆然としたりしていた。


「ほんとに神秘的な空間だったね…」


「でも夏休みだからか、ちょっと人多かったね。笑」


2人は笑い合いながら伊豆半島ジオパークを探検した。


そうこうしているうちに18時ごろとなり、2人はホテルに一旦帰ることにした。


ホテルに着くとすでに部屋が用意されており、その部屋を見てひとみが大騒ぎした。



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