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車を走らせて1時間足らずで目的の店に到着した。
「雰囲気のある店構えですなぁ!」
結城ひとみ嬢は興奮して霧島の同意を求めた。
「でしょ?これは一回行っとかないとなって思って、同じ和食派のひとみ嬢をお連れしたんですよ!」
と霧島もやや興奮したように結城ひとみ嬢に返事をする。
店に入ると霧島は
「予約していた霧島です。」
と店主に告げる。
おかみさんがカウンターの内側から出てきて
「霧島さまですね、お待ちしておりました。」と告げ2人を個室に案内した。
おかみさんは2人を案内するとドリンクの注文を取り個室を後にする。
「ここ相当高そうだよ!?!?!?!?
私あんま持ってきてないよ!?!?!?!?」
結城がそう慌てて霧島に告げるが、霧島は大丈夫だ問題ない。と返事をするのみである。
まだ彼氏でもないっていうのもあるだろうけど、おそらく本気で払えるかを心配してるっていうとこもポイント高いな。
などと、霧島は生意気なことを考え飲み物と料理を待った。
いわ○は基本的にコース料理しか提供していないため、注文を取りに来るということがない。箸の進み具合を見に来ることはあるが、個室客へは店側からの声かけは滅多にないのだ。
霧島が結城ひとみ嬢と戯れていると、最初の料理が運ばれてきた。
鱧とスッポンを使った先付けで、夏らしく、とても素晴らしい味付けだった。
「ほぉぉ…鱧…。あと、煮汁はすっぽんやね。」
「そうやねぇ、鱧食べると夏って感じするなぁ。」
「たしかに!特に京都の方行くと祇園祭と鱧の組み合わせめっちゃよく聞くもんね!!
京都の川床で鱧食べに行きたいなー」
「もうすぐ祇園祭だし、京都まで行く?笑」
「いいねぇ!ガソリン代と高速代私出すから行こう!笑
そのかわり鱧代は奢ってくれたまえ。笑」
結城ひとみ嬢はおどけてそう言った。
「ガソリン代と高速代より鱧代の方がよっぽど高くつくわ!笑」
霧島が突っ込むと、結城ひとみ嬢は、冗談だよ、鱧代払うくらいのお金は持ってるよと笑いながら言っていた。
嫌な雰囲気にならずにお金のことをちゃんと話せるっていいなぁ。
霧島はひとみに対する評価をまた一段と引き上げた。




