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ホテルのフロントでモーニングコールを頼み、朝6時に起きた霧島は身支度を整え、ホテルのレストランで朝食を食べていた。
こんな贅沢をしたからには絶対に勝って帰らないとな。頼むぞロレックス!
霧島は心の中でロレックスに語りかける。
気のせいだとは思うが腕時計が一瞬輝いた気がした。
朝食を食べた後、チェックアウトをし、東京駅まで歩いて向かった。
東京から船橋法典までは乗り換えなしで行けることはすでに調べている。
気合いを入れ直して電車に乗り、船橋法典に着いた。
船橋法典から中山競馬場までは地下通路で歩いて10分ほどだ。
かなり大きいレースが行われると言うこともあり、中山競馬場はものすごい人出だった。
中山競馬場の係員の方に聞いてみると、指定席というのがあるらしく、空きがあるかどうかを調べてくださり、たまたまS席に空きがあることがわかった。席料を払い、いよいよ、さて、馬券を買うかという段取りとなった。
どうやら、今日のレースではWIN5という買い方が出来るらしく、それは、指定された5つのレースの1着を当てることができれば配当金がもらえるという買い方のようだ。
係員の方に、そのWIN5とやらの買い方を聞き実践してみることにした。
霧島は、合っているのかどうかわからないが、腕時計に意識を向け、5つの数字を思い浮かべる。
しかし、何も思い浮かばず、やり方が違うのかと、ふっと気を抜いたその瞬間、5つの数字が頭の中に思い浮かんだ。
霧島はそれをとっさにメモし、頭に思い浮かんだ順番に並べ、その通りに買うことにした。
霧島(頼むぞ、ロレックス!)
霧島は神ではなく、ロレックスに祈る気持ちで
その順番通りに1000円分購入した。
WIN5の結果が気にはなるが、あえて気にしないことにし、霧島はその日の中山競馬場のレースを大いに楽しんだ。
WIN5を買ったことなどさっぱり忘れ、様々に馬券を購入しては勝ったり負けたりを繰り返した。
ホテルに泊まり15万円程減った手持ちはホテル代と交通費を鑑みても少し黒字が出る程度まで回復した。
WIN5で力を使い果たしたのか、その日の中山競馬場での勝率はまぁまぁと言ったところだった。
そして、その日の最終レースが終わり、いよいよWIN5を換金する時がやって来た。
霧島はいよいよか、という表情で、払い戻し機の方へ向かう。
払い戻し機にマークシートを挿入すると
そこには
しばらくお待ちください
の文字が現れ、係員から、おめでとうございますという言葉とともに霧島は有人窓口に案内された。
あ、あ、あ、あ、あたって、あたってしまった……!!!
と心の中で叫びながら、平静を装い
「は、はい…、どうも」
と言いながら有人窓口でWIN5のマークシートを差し出し、案内札をもらい換金を待つ。
案内札の番号が呼ばれると、別室に案内された。
なんでも当たり金額があまりにも高額なため、別室で受け渡しをするとのこと。
「い、いくらですか…」
「約2億円です。配当は2000万円程で、かなり荒れたレースという訳ではないのですが、10口買っておられたので2億円ですね、おめでとうございます。」
霧島は放心状態だった。
係員はそう言って現金で2億円を霧島に渡した。
係員から、取材の申し込みが多数きてますがどうしますか?と尋ねられたが、霧島は
「大学生なのであまり目立つことは遠慮したいです。」
と、取材を断った。
霧島は、現金でそのまま持っていくことはできないので、競馬場で紙袋をもらいその中に札束を詰め、競馬場の係員に同行してもらい、競馬場の裏口に呼んだタクシーまで連れて行ってもらった。
タクシーに乗った霧島は
運転手に、一番近くの、某メガバンクまで連れて行って欲しい旨を伝えた。
到着した銀行の窓口はすでに閉まっていたため、ATMで何度も霧島は自分の口座に預け入れし続けた。
霧島はすごい手間だなと思いつつも、500万円を手元に残し、何とか預け入れ終えた。
待たせていたタクシーに乗った霧島は運転手に次なる目的地を告げた。




