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東京駅に着くと時間はもう21時を回る頃だった。
改札を出て、理想郷ホテルを探しつつ10分ほど歩くとそのホテルが見えて来た。
噂と違わぬ高級感…。ちゃんとおしゃれして来てよかった…。
今更ではあるが、以前の寿司屋の教訓もあり、霧島は服装には気を使っている。
本日の服装は、以前購入したKUROの黒デニムに、SHIPSで買ったお気に入りのシャツを合わせ、一応春物のジャケットも着ている。ジャケットに関しては何年か前にユナイテッドアローズで買ったもので、買った当時はかなり背伸びをしているように見えたが、今では年齢が追いつき、よくにあっていると自負している。
奇しくも、大学生御用達ブランド四天王のうち、3つをコンプリートしているが、似合っているため、良しとしておこう。
ちなみに靴も、この前梅田で購入したNIKEのものである。
エントランスにはいると、その高級感に圧倒されそうになるが、グッとこらえ、堂々とチェックインに向かう。
チェックインカウンターに近づくとベルスタッフが近寄り声をかける。
「こんばんはお客様、チェックインでございますか?」
「予約していた霧島です…」
「かしこまりました、こちらへどうぞ。」
霧島は、初の高級ホテルにドキドキしつつも、滞りなくチェックイン作業を終え、部屋に案内される。
案内された部屋は、さすが高級ホテルと言わんばかりの高層階の部屋で、部屋から東京の夜景が一望できる。
喫煙者の霧島ではあるが、喫煙者の部屋は高層階にアサインされないという噂を耳にしたことがあったので、禁煙の部屋を予約した。
こんな部屋に泊まれるのも、人助けをしたおかげかな…。中村さんには感謝しても仕切れないな。
東京の夜景を見ながら霧島は心の中でそう思った。
とりあえずご飯食べよう、と霧島は思い直し、ホテルの中にあるレストランに向かった。
そのレストランは、なんとなく敷居が高く、また、クローズの時間が迫っていたため、ロビーラウンジにあるバーに向かった。
カウンター席に腰を下ろし、バーテンダーの方に食事が食べたいと話をすると、レストランと同じメニューをこちらにも持ってきてくれるということなので、そこでも高級ホテルのホスピタリティを感じた。
ちなみに、ホテルは全面禁煙だが、バーの中は分煙という形でタバコを吸うことができる。
霧島のタバコはアメリカンスピリットのオーガニッグミントライトである。
愛用のZIPPOのライターで火をつけ、注文した料理を待つ。
料理に関してはもはやいうことは何もないほど美味しかった。
しかし、
「中村さんに連れて行ってもらった寿司店には及ばないな」
と、大学生のくせに大生意気なことを思いつつ食を進める。




