非人間たち
ハロピーナ!(頑張って編み出した挨拶です。使いません)
TJトラの初投稿です。自分で面白いと思ってるので、ぜひ読んでもらいたいです。
第1章A
〜非人間たち〜
この時間帯は空いていた。立っている人はおろか、座っている人すらまばらにしか確認できない。
寝ている人、本に視線を落とす人、彼氏の肩で寝息を立てる人、スマホをじっと眺め続ける人。
終電間近の車内で、僕は深いため息を吐いた。
天性という文字は、一体何を指すのだろう。今日も言われた。どうやら僕は、およそ天性と呼ばれるものを、欠片も持っていないらしい。
君には才能がないと、突きつけられたのだ。
家は、駅からさほど遠くはない。
各店が閉店し、薄暗い明かりのみの商店街を抜けて行く。時間は夜の12時を回っており、人1人見えなかった。
誰もいなかったからなのか、今まで張り詰めていたものが弾け、何か熱いものが頰を伝った。
数秒経ってようやく気がついた。それが、涙だと。
涙で歪む景色をそれ以上見たくないと、目を閉じて深呼吸する。そして、持っていた鞄を地面に置き、握りしめた両の手でゴシゴシと擦った。
「どうして、泣いてるの?」
後ろから飛んで来た突然の声に、自分でもびっくりするくらい肩が上下した。
目に当てていた手を離し、ゆっくりと振り返る。時間も時間なだけに、少しの恐怖があった。
深夜の薄暗い景色は、まだ霞んで見えたが、人の表情が読み取れない程ではない。
そこに立っていたのは、少女だった。
「綺麗だ……」
ほんの1メートル前にいる少女に漏らした言葉は、子供騙しに可愛いというものでもなく、ましてや少女を心配するものでもなかった。
少女は、白かった。
透明にほど近い白い髪も、肩先まで伸びていた。こちらを覗く双眸も、濁ることのない白だった。白い肌に浮き出る唇も形容のし難い白であり、足先まで達する服すら白だった。
とても人間とは思えなかった。
「どうして、泣いていたの?」
少女はもう一度聞いた。その瞳が、心配そうにこちらを覗く。
少女らしからぬ少女を前に、言葉は勝手気ままに歩き出していた。
「編集者さんに、才能がないって言われちゃったんだよ。うちにはいらないって言われるのも時間の問題……って、こんな事話しても分かんないよね!」
気付けば、子供相手に弁解の策を考えてしまっていた。
学生作家の僕にとって、仕事と勉強の両立はかなり体力を削るものだった。それなのに、なかなかヒットも出せず仕舞い。
もう諦めて、大学に行く勉強しようとすら思っていた。
「ねぇ、私と面白いことしよ」
痛みと拒否反応で顔面が歪む。目の前に広がった赤い孤は、僕の意識を攫っていった。