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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第九十四話 イオリと緊急の指名依頼

 次の日、俺は朝早くから組合に行くことにした。

 組合の様子を見るのと、叶うのであれば昨日の事件の詳細について聞ければと思ったからだけど、今回は事件を後から知った部外者の立場なので、十中八九は詳細について聞けないだろうと、俺自身は思っている。

 一応はフィーネ達が起きてくるまでには宿に戻ってロビーで待ってるつもりだけど、出る時に思いついたことがあり受付で聞いてみると、言付けを頼めるらしいので頼んでおく。

 まあ、そう言う訳なので泊まって(探索者組合経営)いた所(簡易宿泊施設)を抜け出し、隣の組合まで歩く。

 組合の前は、昨日とは様子が変わり人が集まって居るといったことはなく閑散としていた。

 中を覗くと未だに片付けの最中らしく、ケーネさん達と同じ服装をした人が掃除をしている。

 一応、受付の周辺だけは綺麗に片付けてあり、受付業務だけは何とか可能なように、体裁だけは整えたといった感じのようだな。

 資料室や食堂への扉には進入禁止のためか、バツマークと関係者以外立ち入り禁止の文字が書かれている板が打ち付けてあった。


「あのー、すいません」

「はい。何でしょうか? 受付業務はもう暫くしたら再開予定ですが…… あら?」

「えっと?」

「あ! 失礼いたしました。もしかして、あなたがケーネ先輩の言っていた『ストレンジャーズ』のイオリ様でしょうか?」

「はい、そうですが…… なにか俺たちに用事でもありましたか?」

「えっと、はい。あっ! 先に、カードを確認してもよろしいでしょうか?」


 どうやら俺か俺達のパーティーに対して用事があったようだ。

 俺が渡したカードを確認し、すぐにカードを俺に返すと、その場で待っているように言ってから慌ただしく駆け出し、窓口の奥に消えていく。

 一体何なんだろうと考えながら待っていると、しばらくして、ロベルトスさん(組合長)が大股でドタドタと騒がしくしてこちらに向かってきた。


「おう、またせたな。で、ちょうどよかった。応接室で話を聞いてもらいてぇんだが、時間は大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です。それでどんなお話でしょうか?」

「それは、応接室で話した方がいいだろうな」


 何の話かわからないが、どうやら周囲に居る人に聞かれると拙い話をするようだ。

 もっとも、今はまだ職員以外は誰もいないけど。

 応接室に入ると、ロベルトスさんは、扉を締め、俺に座るように言うと、俺の正面にどっかと腰を下ろす。


「どこから話し始めたものか…… そうだな、まず、昨日の組合で起った件はどこまで知ってる?」

「えっと……」


 俺は、昨日の件について、フィーネが集めた情報を頭でまとめながら話す。

 まあ、話の内容自体はそう大したことじゃないので、それほど時間をかけることなく今の時点で知って居る情報を全て話し終わる。


「と…… まあ、こんな感じです」

「ふむ、大体の話は組合が掴んで居る話しと合っているな。付け加えるなら実は逃げ出した者にはこの街でだけ有効なマーカーを付けてある」

「マーカー…… ですか?」


 どうやら、俺が使える『錨』みたいな事が出来る魔道具か何かがあるらしい。

 どういう仕組なのか、あとで見てみたいけど、こう言う類の魔法は秘匿される傾向にあるからダメかもしれないな。


「そうだ。で、そのマーカーが指示ている場所が問題でな? どうやらここのダンジョンの八五層を示しているんだが、潜れるやつが居ない」

「えっと、俺達じゃなくても、このダンジョン街の最前線のパーティーが居るのでは?」

「まあ、居るに居るが…… 今時点で該当の全てのパーティーがダンジョンで探索中でな、連絡がつかん。あと、そもそもの話として、奴らはダンジョンの探索にしか興味がないから、今回のような依頼だと動かん可能性が高い」

「なるほど」


 何となく話が見えてきた。

 どうやら、今回の話は、そのマーカーを追って八五層まで潜って欲しい、と言ったところだろう。

 まあ、おそらく八五層でも問題なく探索ができるようなきがするが、流石にパーティーメンバーに確認もなしに決められないな。


「で、ここからが本題だ。八五階層へ逃げたその罪人を生け捕り、もしくはそれが難しいのであれば討伐するのが、今回の緊急指名依頼の成功条件だ。今回の依頼に対して失敗時のペナルティは設定していない。そもそもの逃げた場所からして到達するのに困難だからな」

「なるほど。依頼の内容はわかりました。とりあえず、一旦パーティーメンバーと相談したいので返答は後ほど、でもいいでしょうか?」

「今ここで決めてほしいのが本音だが、まあ構わん。構わんが、半日、いや出来れば三刻(約三時間)以内には結論を出して欲しい」

「分かりました。もうしばらくしたら、皆も起きてくる頃なので結論はすぐに出ると思います」


 返答は保留にして応接室を出る。

 事件について聞けたは良いけど、余計な事に首を突っ込んでしまった様な気がする。

 ともあれ、まずはフィーネ達と相談するのが第一だな。

 宿に戻りロビーの方を見ると、まだ朝も早いと言うのに何人かが席に座り寛いでいた。

 俺も、その中の一人として空いている席に腰を掛ける。

 そういえば、フィーネ達と連絡を取る手段がないな。

 しばらく待つも、誰も降りてこないので、受付で相談してみようかと思い始めたところで、フィーネ達がロビーへ降りてきた。

 ただその中にはアイツは居ないので、どうやらアイツは今回も一番最後のようだ。


「降りてこないですね。他の宿泊客の迷惑になるので寝て居る部屋のドアを叩いて起こすわけにも行きませんし……」

「受付で相談してみるか」

「そうですね」


 受付で話を聞くと、どうやら個室に泊まっている宿泊客に対しては、パーティーメンバーからの依頼のみという制限はあるが、部屋に対して呼び出しを行うモーニングコールをしてくれるそうだ。

 それはちょうど良いと、一も二もなくお願いすることにした。

 そうして、暫く待っていると、エレベーターホールからロビーへと慌てて転げ込んでくるアイツが見えた。


「いやー。急に声がしたんでびっくりして飛び起きたぜ。うち、朝弱いから目が醒めても起きる気力がなぁ」

「はぁ、まあ朝が弱いのは分かってるが、それならそれで目覚ましを掛けるとかしとけばいいものを……」


 あまり反省して居ない様子での言い訳を聞き、呆れて思わず愚痴ってしまうが、まあ諦めるしかないか。

 全員揃った所で、気を取り直して、組合で今朝聞いた話を皆にする。

 宿のロビーでする話でもないとは思うけど、まあそこはそれ、結界を張ってあるので声が漏れる事もないだろうし問題ない。


「うーん…… まあ、僕は特に反対はないですね。積極的に賛成もしませんけど」

「はいはい! うちは、賛成だぜ!」

「私も、討伐に賛成です」

「妾は、お任せするのじゃ。足手まといというのであれば、街においていってもらっても構わんのじゃ」

「おなじく」


 賛成が俺を入れて三人に、保留が一人、棄権が二人といったところか。

 まあ、反対されることはないと思っていたけど、おおむね予想通りの結果かな。

 問題はリーン達の扱いをどうするか、だけど……


「俺は…… リーン達も連れて行ってもいいと思っている。目的の階層は、リーン達単独だと厳しいところはあるとは思うけど、ある程度自分の身は自分で守れるはずだしな」

「そうですね。私もこういう経験も大事だと思いますので、連れて言ったほうがいいと思います」


 フィーネ以外のソータ達二人もリーン達を連れて行くことに反対はなさそうだ。

 リーン達自身も気合を新たにしている様なので、決まりだな。

 あとやることは、ロベルトスさんに返答するのと、持ってくものは…… 食料は最近買い込んだばかりだし特にないな。

 じゃあ、気合を入れて逃げた犯人を捕まえるとしますかね。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿は8月11日の予定です。

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