第九十二話 イオリと最後に行くお店
「さて、まずは『ワトーキッチン』からかな」
「そうですね。ここから一番近いお店を順に回るのが効率が良いですね。ただ、私が行きたいステーキのお店は少し遠いのでそこだけは残念です」
フィーネが言う行きたいお店とは、どうやら『オーク・オーク』の事のようだ。
地図の上で現在位置とお店の場所とを比較すると、なるほど、たしかにかなり離れているな。
今いるお店と、『オーク・オーク』の位置関係は、ほぼ通りの端と端に位置しているので、順当に行くと回るのは後の方になりそうだな。
「まあ、とりあえず順番に回るしかないと思うぞ」
「そうですね。楽しみは後にとっておくことにします」
まずは、すぐ近くの『ワトーキッチン』だな。
距離は『ルエルルさんのスープ&シチュー屋』から、歩いて数十歩といった所で、本当に目と鼻の先だ。
あっという間に、『ワトーキッチン』に着く。
「らっしゃい! ご注文はお決まりで?」
「えっと、まだなんですが。って、そうではなく、テイクアウトをしたいのですが」
「テイクアウトね! では、このメニューから注文をどうぞ。そちらに腰掛けてじっくり選ぶといいね。うちのお勧めは『ダンジョンイサキフライのサンドイッチ』だけど、他のも美味しいよ!」
なんか、元気が空回りしているようなお店だだけど……
とりあえず見なかったことにしてメニューから料理を選ぶか。
「そうですね。あ、イオリ様これなんかどうでしょう? あ、これも良さそうです。迷ってしまいますね」
「お、これも美味しそうだ。うーん、ここから選ぶのはなかなか難しいな。って、そうだ。全部注文するのも手だな」
「たしかに、それもいいですね」
二人してちょっと悪い顔をしながら、良いことを思い付いたと頷き合う。
たしかに、元々大量に料理を仕入れるつもりではあったけど、まだまだ無意識に枷を嵌めていたようだ。
自重をしなくなった俺とフィーネは次々と店を回る。
途中、距離と時間の計算を間違えて危うく料理が冷めてしまう寸前だったり、注文したは良いけどお店がも素材がなくなり返金となったり、多少の問題は有ったけど、最後の一軒を除いて、一覧に挙げた全てのお店を回り終えたのだった。
ちなみに、この一件は後々に『双王の饗宴』と名付けられ伝説に成ったとか成らなかったとか。
まあ、そんな与太話は置いておく。
「よっ! うちらもだけど、もしかしてアンタらも、この店の料理を?」
「まあ、そうだな」
「このグルメマップによると、『オークの骨つきステーキ』がお勧めのようなのじゃ」
「とっても、美味しそう」
今にもヨダレが垂れてきそうなソフィーを筆頭に、『オーク・オーク』の店の前には、何故か俺達以外のパーティーメンバーが、そう全員が揃っていた。
ダンジョン前で別方向に別れたけど、回る所は幾つかの脇道を挟んだ別の大通り、そして、このお店もやや中央よりなので出会う可能性は無きにしもあらず、だった。
ただ、ソータの方は、どちらが主かは言うまでもないけど、魔道具を見つつ料理を探すという話だったから、この辺りで出会す事はないだろうと思ってたけど、何故だろう?
とりあえず、店の前で固まっていてもしょうがないので、さっさと『オーク・オーク』に入り、店内で料理を注文する事にしよう。
「へい、らっしゃい!」
「あ、はい。っと、テイクアウトで料理を注文したいのですが」
「テイクアウトだね! ちょい待ちな。そうだな、じゃあ奥に座ってくれ。壁際にある緑色のメニューを見て待っててくれ」
どうやら、すでに店内に居た人たちが注文した料理を作っていたらしい。
しばらくすると料理ができあがり、注文を持っていた簡素な格好をした女性二人組の前に、ドンッと料理が出てくる。
出てきた料理は、ここの店のもう一つの名物『オークサーロインステーキ』のようだけど、うちの女性たちは別として少し山に鳴ったような料理の量は食べ切れるのだろうか、と他人ながら心配になる。
そういえば、店員は居ないのかな?
「またせたな。それで、注文は決まったか?」
「はい、『オークサーロインステーキ』と『オークの骨つきステーキ』と『一口鉄板焼きオークステーキ』と『切り落としオークステーキ』、あとは『オークミスジステーキ』をすべて六人分でお願いします」
「それは…… また剛毅だな。まあいい。量が量だから、少し時間を貰うが問題ないか?」
「はい。大丈夫です」
カードで料理の代金を前払いした後は、料理ができるまで待つだけだ。
ただ、話によると料理ができるまでは時間がかかる様で、その間は暇になる。
となれば、待っている間に今日の戦果の報告でもするかな?
まずはグルメマップを広げるのが最初か。
「じゃあ、待っている間に今日どんな店に行ったか報告をしないか?」
「賛成。あ、裏面のお店の紹介も一緒に見えるよう、うちが持ってる地図も広げるぜ」
そう言ってアイツは、ゴソゴソと地図を探し始める。
暫く待ってもまだゴソゴソしているが、どうやら地図が見つからないようでしきりに首を傾げている。
結局の所、リーンが地図を持っていたようで、地図を手渡されたアイツは、そうだった、と言いながら裏面が見えるようにテーブルの上に広げる。
グルメマップ自体は、ソータも何処で貰ったのか一枚持っているようだけど、表と裏を同時に見たいだけなので二枚あれば十分だ。
「えっと、うちらは分かれた後この辺りから回ってったんだ……」
と、アイツは地図を指し示しながら、通った道をたどる。
アイツらは、サンドイッチやハンバーガーなど軽食を主に探してお店を巡ったらしく、入ったお店のメニューを片っ端から購入していたらしい。
おいおい、いくらお金があるとはいえ、少しは自重しろよな。
途中、食材が足らずにすべての料理が用意できなかったり、あまりにも大量に注文するものだから注文内容を間違えられたり、など色々有ったらしい。
何処かで聞いたような話だ。
「あとなー、何かいつもより絡まれる回数が多かったようなきがするぜ」
「妾たちだけだと子供のお使いに見えるらしいのじゃ」
「えっ!? その子供って、もしかしてうちも入ってる?」
約一名はどうも自覚がないようだけど、見た目だけはそう見えるし、リーンとソフィーに至っては見た目は勿論のこと、実際にも子供だ。
もしかしなくても、絡まれたのは、自重せずに注文していたのも影響しているんじゃないか?
買い物に丁度良いと思って三人だけで行動させたけど、余計なトラブルに巻き込んでしまったようだな。
まあ、殆どは親切心などだと思うし、何かあればアイツは躊躇なくぶっ飛ばすのが目に見えているので安全上は問題なかったとは思うけど、今回のパーティー分けは結果から言うと失敗だったな。
せめて、フィーネが付いていれば、少なくとも子供だけのパーティーには見えなかったと思う。
ただ、その場合は女性に三人の少女が引率されているように見えるので、別の問を引き寄せそうなのがまた頭の痛いところだ。
「とりあえず諸々は置いておくとして、料理は調達できたんだな?」
「ああ、バッチリだ。うちらが厳選に厳選を加えた料理を……」
「いや、さっき片っ端から購入してたって言ってただろうが」
まあ、何はともあれ本来の目的自体は達成できたらしいので、その他もろもろは聞かなかったことにしておこう。
「じゃあ、次は俺達だな。まず最初は、この店に……」
アイツらと別れた後の事を、順番に地図上のお店を指し示し、時折フィーネから補足が入りつつも、話していく。
途中で自重を止めたことを離すと、アイツは呆れたような目をしていたが、人のことを言えないからな?
「料理はまだおないな。随分と時間が経った気がするけど……」
「そう、ですね。もしかして、また何かに巻き込まれるのでしょうか?」
縁起でもないことをフィーネが言っている。
そんな毎回毎回巻き込まれるような事があるわけない。
ないよな?
「どうします?」
「ま、まあ、もうちょっと待ってみるか」
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次の投稿は7月28日の予定です。




