第八十九話 イオリとグルメマップ
丁度、一年前の7月1日から投稿を始めたこの小説も、八十九話となりました。
もう少し話数を進めたかったですがダメでしたね...
ま、まあ、ともかく、これからも完結までもうしばらくお付き合いください。
では、昨日に続き八十九話をご覧ください。
「意外と言ってよいのかわかりませんが、昼食を食べれる所が少なかったですね」
「だな」
「おや? お客さん達、知らないのかいー? こっち側は道具屋とかが多いんだよねー。ダンジョンの入口を挟んで反対側に行けばランチをやってる店も多いと思うよー?」
「あ、そうなんですか」
「そういえば、つい先日に新しいグルメマップが配られたから一枚あげるよー。ほら、ここがうちの店でー、ここが組合だねー」
そう言って、色鉛筆のような物で丸をつけた地図をジニーさんから渡された俺達は、丁度食べ終わったこともあり会計を済ますと店を出る。
この地図は料理の調達に丁度良いので、俺の魔法でもう一枚を複製し、俺とフィーネ、アイツとリーン達とで一枚ずつ持つことにする。
「じゃあ、とりあえずダンジョン付近までは一緒に行くか」
「そうだな。うーん、うちらはこのグルメマップのここから、こう右から探してくから、あんたとフィーネはこっちの左からで、どうかな?」
「ああ、いいぞ」
店を出た俺達はまず、ダンジョン入口付近まで行くことにした。
まあ、店の前で分かれても良かったけど、どうせ進む方向は同じだし、何となくそこで分かれたら、リーン達三人だけだと道に迷いそうな気がするんだよな。
一応、リーン達は今朝までダンジョン内で地図を作りながら探索していたので大丈夫だと思うけど、なんせコイツが実質リーダーなので、それに引っ張られて迷ってしまう可能性もありそうだ。
「リーン、念のため『自動地図』を使っておくぞ」
「ん? 流石に街の中で迷うことはないと思うのじゃが、まあ、分かったのじゃ」
暫くどんな料理を探すかや、何が食べたい、など他愛のない話をしながら歩くと、ダンジョンに到着する。
そこから、俺とフィーネは左に、そしてリーン達三人は右からお店を探すことにする。
「じゃあ、夕方に組合前、だな」
「行ってくるのじゃ」
「美味しい料理、見つける!」
「まあ、同じ辺りを彷徨くから、途中出会うかもな」
三人と別れた俺達は、まず貰った地図上で『オーク肉通り』と書かれている辺りを目指すことにした。
「イオリ様、私達も行きましょう」
「ああ」
それにしても、通りに名前が付いていてもおかしくはないとはいえ、随分と直接的な名前をつけたものだ。
グルメマップを見ると、大きな通りには他に『オーガスネ肉通り』や『スライムジャム通り』など、ダンジョン街らしく魔物にちなんだ名前が付いている。
小さい通りには特に書かれていないけど、もしかしたら地図には載ってはいないだけで、ダンジョンからかの道へ向かっているこの道にも名前が付いているのかもしれないな。
「そういえば、どんな料理を探すつもりなんだフィーネ? たしかシチューとか言ってた覚えもあるけど」
「そうですね、シチューやカレー? でしたっけ、それらに似たような料理があれば良いのですが…… まあ、じっくりと素材を煮込んだ料理があれば購入したいと思っています」
なるほど、フィーネは煮込み料理が食べたい、と。
そういえば、カレーは香辛料をたっぷり使っているんだっけ?
「なるほどね。カレーは、と言うよりも匂いの強いものは見つけたとしても止めたほうがいいかもしれないな。まあ、ダンジョン内で食べなければ問題ないとは思うけど」
「それは、何故でしょうか?」
「食事中は多分結界を張るから問題ないと思うけど、匂いの強い料理は食べ終わってからも暫くは服などに匂いが残るから、魔物を帯び寄せてしまうかもしれないだろ?」
「まあ、そうかもしれないですが…… 問題、ありますか?」
そうフィーネに問われて、よくよく考えると問題ない気がするな。
匂いは『洗浄』の魔法で消せば良いし、もしそれを忘れても、今のところは俺達のパーティーであればいくら魔物が来ようとなんとかなる、と思う。
「たしかに、言われてみればそうかもしれないな」
「えっと…… 話を戻しますね。私はその辺りの料理を探してみようかと思っています。イオリ様は何かお決まりですか?」
「俺は、そうだな。サンドイッチとかの軽食を探してみるかな」
「サンドイッチやハンバーガーなどは、イオリさん達が探すようですよ? あと、ソータさんはパスタのような麺料理を探すようですね」
サンドイッチや麺類などは、すでに取られていたか。
そうだな、じゃあ何を探そうかな。
「それじゃあ、俺はご飯を使った丼物を探すか。オニギリもあるぐらいだから、丼物もあるはずだ、と思う。まあ、なければ、具になりそうなものを探すかな」
「分かりました」
道を歩きながら話していると、いつの間にか十字路に差し掛かる。
どうやら件の『オーク肉通り』の入り口に着いたようだ。
俺たちが何故気が付いたのか?
答えを言ってしまえば簡単なことで、十字路の角に『ここよりオーク肉通り。来たれ挑戦者よ』と書かれた石で出来た目印があったからだ。
ところで、挑戦者って何の挑戦者なのだろうか?
まあ、それはともかくとして、その目印以外にも『オーク肉通り』に近づくにつれて、服装が探索者がダンジョンに潜るための服装ではなく、ミンティアナさんやポーラさんの様な普段着の人が多くなっていたので、目印が無くても気が付いていたとは思う。
「イオリ様、どうやらこの辺は探索者が少ないようですね」
「まあ、ちらほら探索する時の装備のままの人たちも居るし、もしかしたら普段着で来ている探索者も混じっているかもしれないな」
たしかにそうですね、と納得するフィーネを横目に、そういえば俺達の服装はどうだろうか、と考える。
考えて見た結果、周囲の雰囲気と比べてもほとんど違和感なく溶け込めているので問題ないだろうと判断する。
今、俺達が着ている装備の見た目は、この町で見る一般的な探索者の装備と普段着の中間あたりの格好となっているはずだ、たぶん。
ただし、その性能はと言うと、そこらで売っている武器などでは一切傷を付ける事が出来ず、下手をすると武器の方がポッキリと折れてしまうかもしれない。
まあ、それもこれも前の世界で魔王の討伐をしていた時に必要となり集めた装備を身に付けているためなんだけどな。
「とりあえずはっ、と…… その辺の店に入ってみるか」
「そうですね。先程から良い匂いがしています」
さて、料理の調達をするか、と考えてすぐ目の前の店に入る。
店に入ると、いらっしゃいませ、と少し幼いながらも元気の良い声で挨拶が聞こえる。
と、そこで、そういえば、持ち帰りの料理はできるのだろうか、と根本的な問題に気が付く。
「そういえば、料理の持ち帰りって出来るのか?」
「そうですね、わからないですが、まずは店員さんに聞いてみましょうか。すいません!」
席に座らずに入り口で立ち止まっている俺達を不思議そうに見ていた、先程元気に挨拶をしたウサギ耳の少女は、フィーネの呼びかけに、とてとてと近づいてきた。
「はい、如何致しましたでしょうか?」
「えっと、料理の持ち帰り、はできますか?」
「料理の持ち帰り? ああ、テイクアウトですね。はい、可能です」
持ち帰り――ここではテイクアウトと読んでいる――それが出来ると聞き、フィーネと顔を合わせほっとする俺達。
それを見た、店員の少女は、ぽふっと効果音がしそうな感じで両手を叩く。
「もしかして、お客様は、このあたり来るのは初めてでしょうか?」
「はい、そうですが、何故それを?」
「実は、テイクアウトの可否はお店の看板の下に目印があるのですが、お客様はご存知なかったようなので、もしかして、と。あ、持っているそれは最新版のグルメマップでしょうか? そちらにも載っていますよ。お時間があれば、そちらに座っていただき、グルメマップを広げて頂けますでしょうか」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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次の投稿は7月7日の予定です。




