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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第八十七話 イオリと特訓の終わり

「次が来たのじゃ」

「わかった」


 とりあえず、ダンジョンの考察については置いておき、今はリーン達を観察することにする。

 どうやら、昨日の野営時に指摘された部分は出来る限り直そうと努力しているようだ。

 逆にその事に気を取られてしまい、危ない場面が何度かあったが、今のところはそれぞれが助け合っているために俺達が慌てて助けに入る場面は幸いにしてない。

 もっとも、大事になりそうであれば過保護な俺達が助けに入るのは容易に想像できてしまうけど。


「よし、二人とも。そろそろ昼だから一旦、休憩にしよう。どこかいい場所を見つけてくれ」

「わかったのじゃ」

「リーンちゃん」

「ん? なんじゃ、ソフィーよ」

「少し前に通った道。その途中の小部屋は?」

「たしかに、そこが良さそうなのじゃ。イオリ兄様、どうなのじゃ?」


 えっと、少し戻った所の小部屋は、っと目の前に浮いている『自動地図』で確認する。

 なるほど、たしかに休憩するのに丁度良さそうだ。

 ソータも場所を確認し頷いているので問題はなさそうだ。


「じゃあそこにしよう。リーン、案内してくれ」

「わかったのじゃ」


 リーンが先頭、そのすぐ隣にソフィー、そしてその後ろに俺達が二人づつで並びもと来た道を戻る。

 暫くすると、目的地の小部屋が見えてきた。

 リーン達は小部屋が見えてくると、警戒しつつも慎重に進み部屋の中を確認する。

 ソフィーがこちらを振り向き頷くところを見ると問題なさそうとどうやら判断したようだ。

 手元の『自動地図』でも、生き物の反応やその他の怪しそうな反応も無いようなので、頷き返し問題ないことを伝える。


「お疲れさん。おかずとオニギリだ。水はまだあるか?」

「んー、もうちょっとで無くなりそうなのじゃ」

「わたしも」

「じゃあ、追加しておこう…… 『(mvura)(bhora)』」


 リーンとソフィーから携帯用の水筒を受け取り、水筒の口の蓋を開ける。

 そして、魔法で作った水でちゃぽんと中を満たす。

 ちなみに、リーン達が俺に渡してきた水筒はソータがこの町で買ってきたものだ。

 かなり乱暴に扱っても凹みもしないし壊れもしないほど頑丈に出来ているのに、思ったよりも軽いので掘り出し物だ、とソータは言っていた。

 丈夫なので魔物との戦闘時に適当に通路へ放り投げても問題はないけど、あまりボロボロにしたく無いとソフィーは思っているのか、余裕がある時はリーンに預けているようだ。

 余裕がないときは、なるべくそっと地面に置いているようだけど。


「このオニギリとおかずはたしかに美味しいのじゃが…… たまには別の物も食べたいと思ってしまうのじゃ。これは贅沢なのじゃろうか?」

「まあ、普通は贅沢だろうな。ただ、俺達は色々方法があるからな。とりあえず、特訓が終わったら、街でいろんな料理を調達しようか」

「やったのじゃ。言ってみるもんじゃの」

「たのしみ」

「わたしも、食堂で食べたような料理が恋しくなってきました。シチューやカレーの様な物が食べたいですね」

「まあ、毎回、お弁当のおかずとオニギリだと何日も潜ってると飽きるもんな。と言うか、うちも飽きたぜ」

「ですね。では、特訓が終わったら手分けして、今度は美味しいものを探しに行きましょう」


 とりあえず我慢は出来るけど、そろそろ別の料理が食べたい、と皆の意見は一致したので街で調達することに決まる。

 まあ、それもこれも特訓が終わってからだけど。


「『サンダー(tonitrua )ボルト(fulmine)』なのじゃ」

「リーンちゃん、この魔物には効き辛いよ?」

「ん? あ、間違えたのじゃ」


 それからも、俺達一行はダンジョン内を潜り続ける。

 最終的に、パーティーとして到達している階層までリーン達二人だけでも潜る事が出来るようになり、なおかつその階層のボスもある程度余裕を見て倒せる程度には強化が出来た。

 ここまで来るのに大体二週間は経っているが、特訓は俺やソータなどが今の所は必要十分と判断したため、本日で特訓は一旦終了となった。

 ダンジョンの方は、さすがに特訓中もずっと潜り続けていた訳ではなく、途中で半日ほど中休みをしたり、ダンジョン探索計画の届け出を更新したりといった事もしていた。

 そして現在、俺達は探索者組合へ、カードの更新や昨日の出来事について報告に行く途中だ。


「そういえば、昨晩のあれは何だったんだ?」

「あれと言うと、魔物が大量に野営中の陣地に集まってきた事でしょうか、イオリ様?」

「そうそう、それ」

「僕が覚えている限り、昨日以前の探索中も、今朝も特に異常に増えたって感じは受けなかったですね。やはり、昨晩が異常だったのではないかとおもいます。リーンさん達はどう思いました?」

「うーん? 妾もソータ兄様と同じ感想なのじゃ」

「わたしも、同じ」

「うちも、だな」

「いや、お前はぐーすか寝てて昨日の夜のことは知らないだろ」


 いやー、そうだっけ、とすっとぼけるコイツは、置いておくとして昨晩のあれは本当に何だったんだろうか。

 昨晩、見張りが終わりぐっすりと寝ていると、ソフィーにゆさゆさと揺り起こされた。

 もう朝なのかと思ったが、どうやら俺が張った結界の周りに魔物が大量に集まっているので、どうしたものかと考えたソータの指示で起こしに来たようだった。

 結局、なぜ魔物が集まって来ているのか考えても、すぐに魔物が減るわけではないので、俺とソータで結界の中から魔法を放ち、魔物をさっさと殲滅する。

 魔物の死骸を回収し暫く待つも後続の魔物がやってくる事もなかったので、そのままソータとソフィーに後を任せて寝た。

 ソータ達以外といえば、アイツはぐーすかと寝ていたが、フィーネとリーンは少し騒がしかったためか途中で起きてきた。

 もっとも、二人に特別にやってほしいことも特になかったので、事情を軽く説明し、また休んでもらった。

 と、そんな出来事が昨晩にあった。


「まあ、組合に一応報告するとして、今日から数日は休息日しようと思うけど、どうだ?」

「僕は問題ないと思います」

「皆も、他に意見はなさそうだな。じゃあ、そういうことで。今日は食料を探しに行こうか」

「待ってたのじゃ」

「たのしみ」

「手分けして探す、と言うことでしたけど、どういう分け方にしましょう?」


 手分けするにしても、大量に買うとなると『倉庫』とか『アイテムボックス』の収納魔法の類いは必須だろうな。

 収納魔法は、まだリーン達には難しいだろうし、今回も二手に分かれるかな。


「そうだな、大量に買うなら俺とソータは別の方がいいかな。『倉庫』や『アイテムボックス』が使えるし。あ、お金も移しておこうか」

「そうですね。あっ、そうだ! 僕が持ってる、これを使うのはどうでしょう? この魔導袋を使えば僕とイオリくん、そしてもう一つのグループの三つに分けることが出来ます」

「それは…… 魔法の袋の類いか?」

「魔法の袋…… ですか。そういえば私も持っていた覚えが…… ああ、ありました」


 魔法の袋はその名の通り、外から見ると一見何の変哲もない袋なのだけど、内側が魔法で拡張されていて、その容量は大小様々あれど、その(いず)れも袋の容量以上のものを入れられるという魔道具の一種だ。

 まあ、たまに何故か袋の容量以下しかない物があって、ゴミ扱いされてたけど。

 そういえば、フィーネが持っている袋はたしか、国宝級のやつだったと思うし、おそらくソータのもそのぐらいはあるかもしれない。

 俺自身は『倉庫』があるし、フィーネもある程度は『収納』が使えるので、今まで忘れていたということだろう。


「まあ、僕やソータくん、フィーネさんは今のところ必要ないので、リーンさん達に預けておく事にしましょうか」

「そうですね、その方が私も有効活用していただけると思いますので」

「よ、よいのか? これは、結構なお宝のようなのじゃが」

「なくしそう。ちょっと怖い」


 あまり喜怒哀楽を示さないソフィーすらも、少し動揺しているようだ。

 ただ、自身の使う魔法で大量に物を収納することができる俺達にはもはや必要ないものだから、そこは動揺しようがなにしようが諦めて使ってもらうしかないだろう。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿は6月30日の予定です。

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