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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
83/107

第八十三話 イオリと過去の話③


記述は


「口頭の会話文となります」

『思考共有での会話文です』


のような感じになっています。

 暫く呼びかけても返事がないので、さっきと同じように物理に訴えるか、と考える。

 頭にチョップを当てようと手をコイツの目の前に持ってきた所で慌てたように返事が返ってくる。


「おわっ! な、何だその手は、って、またやっちまった。作業しながらだと作業に集中しがちなんだよなぁ、うち。前から言われてたけど」

『えっとなんだっけ? そうそう。アンタの言った世界にうちが行っても知識チートは無理そうだなぁ。もっとも、そんなに知識はないけど』


 とりあえず、戻ってきたなら頭にチョップは勘弁してやろう。


「で、それはともかくとして、『ライト』は使えそうな感じか?」

『かもな。で、俺が呼ばれた理由は端的に言うと魔王のせいだな』

「難しいぜ。うちは、どっちかというと魔力の調整が得意じゃないからなぁ」

『ふーん、まあ珍しくもない理由だな。むしろ小説の中じゃありふれてるな』

「まあ、その辺りはソータに聞いたほうがいいかもな。世界が違うと魔力の運用も違う用な感じだし、まあ、あとは…… ソータが喜ぶからな」

『そうだな。ただ、魔王と言っても魔人達の王、ではなくて、“魔”と付くもう片方の種族、これは魔物って言うんだけど。それらの王らしい』

「まあ、そうするか。ソータがなんで喜ぶかわかんないけど」

『ん? 違うのか? あ、人が(もと)か、獣がが(もと)か、の違いか?』


 なかなか鋭い。

 フィーネの世界では、人から進化した、と言って良いのか分からないけど、人を(もと)にした種族は過去に色々あったにせよ、人として扱う事になっていた。

 この世界では、どうなんだろう?

 そもそも、そんなことを考えている余裕はない、とかそう言う理由で現状は棚に上げられてるかもしれないけど。


「じゃあ、俺はさっきの続きをするから。相槌は打てるから何か話すか、やりたいことがあればそれをやればいいけど寝るのはなしな」

『ああ、簡単に言うとそんな感じだ。魔人の国やそれの王様は別に居て、そっちとは過去は別として今は特に争いもない状態だったな』

「分かった。なあなあ。で、結局『編集モード』なんだよな。今は何を作ってるんだ?」

『魔王とかじゃなくて、魔物王とか魔物皇帝とかのほうが良かったんじゃないか、それ』


 寝ないように一応釘は刺す。

 ただ今の所、興味があるのは『編集モード』のようで、作業の内容が見える事に此れ幸いと質問してくる。


「作業の邪魔しないで欲しかったんだけど、寝られるよりはいいか。今は魔法で『鑑定』スキルの代わりになるようなのが作れないか、と思って」

『ああ、そう呼ぼうとしてたらしいけど。『人と混じった魔人とは違う、純粋な魔物の我こそが魔物の王である』って本人? が言ってたらしい』

「ん? その『鑑定』スキルだっけ? それじゃ駄目な時があるってのか?」

『ああ、自称な訳か。しかも意識して同じ呼び名にしてるってのは面倒だな』

「ああ。どうも『鑑定』スキルには『鑑定偽装』スキルみたいな、前者の効果を打ち消すスキルが必ずあるらしいからな」

『まあそう言う訳で、俺は勇者パーティーとしてフィーネ達と色んな国を巡りながら力を付けて、その魔王を倒した訳だ』

「打ち消すやつってのは、うちが持ってるような『鑑定阻害』みたいなのか?」

『へー。で、何でこの世界に来たんだ? 何となく想像がつかなくもないけど』


 なるほど、以前に『鑑定』した時に、一部が確認できなかったのはそれが原因か。

 と言うことは、異世界の間でもスキル同士は関連があると言うことなのだろうか?


「やっぱり持ってたか。まさしくそういう奴だ。で、それはどうやらどんな強力なスキルにもあるらしい。もっとも、スキルの強さが同等じゃないと打ち消せないけど、それでも厄介だな」

『ああ、どうも魔王が最後の足掻きで俺に対して送還魔法を掛けたらしいんだけど、フィーネが巻き込まれたというか自ら飛び込んできたというか、で気がついたらこの世界に居た感じだ』

「うーん? もしかして、スキルじゃなくて魔法であればそれがないと?」

『なるほどね。あ、でも送還魔法な訳だろ? 何でこの世界に来たんだ?』


 鋭い、と言うかまあ今の流れからすると分からんわけはないか。


「まあそう言う可能性が高いかなと。まあ実際にそんな魔法が出来るかどうかは分からないけどな」

『俺の推測になるけど、本来の送還魔法は魔王と言えども起動できないぐらいの魔力が必要なはず』

「なるほど」

『ふんふん』

「まあ、最終的には簡単なものが魔道具とかに出来れば売れるかな、という狸の皮算用も無きにしもあらず、という所」

『それで、起動できても一人に対して使うのがやっとの所、二人に増えたとしたら、何が起こってもおかしくない訳だ』

「なるほど。まあ、頑張れ。うちはソータに『ライト』教えてもらうまでは『編集モード』は御預けかなぁ」

『へー。今回は偶然(・・)この世界に来れたけど世界の(はざま)に飛ばされるって事も有りた訳か。あ、うちらもかな?』

「まあ、そうだな」

『かもしれないな』


 それからしばらく話しをしていたが、やはり思考を二つ以上に分割するのは苦手としているようで、終いには『思考共有』で話す方に集中し、口頭では思い出したように俺の作業について聞いたりするだけに落ち着いた。

 俺自身は『思考共有』での会話、たまに発生する口頭での会話、『編集モード』の操作、あとはそれらを纏めつつ周囲を警戒するために、と合計で思考を四つに分割している。

 以前に試した時には、思考を合計で三十個程度までは分割できた覚えがあるので、それを考えるとまだまだ余裕がある。

 そういえば、この思考を分割する手段を俺は、仮に『思考分割』と呼んではいるけど、『鑑定』で俺自身を見てもスキル欄には載っていないので、隠しスキルか何かなのだろうか?

 まあ、いくら分割しようと思考能力は元々の俺自身の思考が上限になるので、同じ事柄に対する思考を分割して思考能力の強化をするよりも、今回のように全く別のことをさせた方が有用だと俺は思う。

 ともかく、コイツの相手をしつつ、口頭での会話は殆ど相手をする必要がなくなったので、『魔力検知』の魔法を元にして『鑑定』が出来る魔法を作る作業に集中していると、いつの間にか『アラーム』で交代の時間が来たことを知る。


「どうやら、そろそろ交代の時間らしいな」

「おっ! もうそんなに経ったのか。なかなか面白い話が聞けたんで満足だぜ」


 交代の時間を把握するためにすこし早めに設定しておいた『アラーム』の知らせから、しばらくすると、ソータとソフィーが起きてきた。


「二人共おはようございます」

「少しねむい」

「おはよう。ソフィーはこれで顔を洗えばスッキリするぞ。じゃあ、ソータ次の見張り、よろしく」

「そんじゃあ、ソータ、おやすみ。ソフィーも」


 ソフィーはまだ眠いのか目を擦り、あくびを必死に我慢しているようだったので、『水球』を目の前に浮かべ、それで顔を洗うように勧める。

 ソフィーが顔を洗うのを確認しつつ、ソータに後を頼みテントに潜り込む。

 勿論、朝起きる時間に『アラーム』を設定しておくことは忘れずに、だ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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誤字や脱字の指摘もあればお願いします。


次の投稿は6月2日の予定です。

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