第八話 イオリと資料室
「さて、とりあえずどうしようか? ダンジョンへは今日から潜る?」
「今日はすでに昼を回っているようなのでダンジョンは明日にしませんか?」
「まあ、そうだよな。何も調べず、何も用意せず、とか無茶もいいところだし。とりあえず今日はフィーネの言う通りダンジョンに潜らずに、資料室でダンジョンなどについて調べ、そのあとで食事、足りない物を購入して、明日は朝から潜る、とこんな感じにするか」
年甲斐もなく明日のダンジョン探索についついワクワクしてしまう俺がいるが、まあ実際の活動は明日からにお預けだな。
どうやら昼を回っているようなので今日は準備日として、まずは組合の資料室に行こうと思う。
応接室から出てロビーに行く間に軽く確認し、今後の行動を決めロビーに出ると先程は受付に行列ができていたが今はほとんど並んでいない。
ダンジョンに潜りにでも行ったのだろうか?
そうだ、とキョロキョロと組合内の案内図が掲示してある場所を探しウロウロすると、そんなに探さなくてもすぐにわかる場所に案内図を見つける。
さっきケーネさんから説明があったように資料室も書かれている
ふむふむ、話にあった通り地下もあるのか。
・地下、訓練場(第三級以上の攻撃手段は使用禁止)
・一階、ロビー、受付、資料室(資料の持ち出し禁止)、応接室、職員室(関係者以外立ち入り禁止)、支部長室(関係者以外立ち入り禁止)
・二階、食堂兼酒場(7時から17時:食堂、17時から23時:酒場)
どうやら探索者組合は二階建てで、食堂以外の施設は二階ではなく一階部分や地下にあるようだな。
「資料室は、っと、一階にあるのか」
「イオリ様、いろいろ確認しないといけない内容もありそうですね」
「そうだな、ついでに調べられるといいんだけど」
第三級とか、たぶん魔法とかの等級なのだろうけど、三級と言われてもなんのことかわからないからな。
とりあえず、ダンジョンについてなども含めて確認をするために資料室へ向かう。
資料室に入るとまず目につくのは、入り口付近にある受付で、その奥にテーブルと椅子、そして、そのさらに奥には本棚が何列か天井付近まで並んでいるので、資料室と言いつつ小さな図書館並みの蔵書がありそうな感じだ。
すでに、フードを被った子供やムキムキマッチョなど何人か座って資料を確認している
室内は、それほど明るいというほどではないが、資料を確認するのに十分な光量に保たれており、また、埃が床に舞っている、と言った感じでもなさそうで、綺麗に清掃されている。
ここからは俺の持っていた、薄暗く埃をかぶり人があまり寄り付かない、といった資料室のイメージからいい意味で外れている。
「へー、なかなか綺麗な感じだな。資料室というよりは小さな図書館、と言ったかんじだけど」
「そうですね、もっとこじんまりとした感じを想像していたのですが」
受付に人が座っていると思ったが、手続きが必要なのかな。
まあ、これだけの蔵書を誇っているのであれば、ただ資料を置いて、どうぞ、というわけには行かないよな。
受付に座っているのは眠そうな目をした垂れ気味の耳をした犬耳少女なんだけど。
「こんにちは、資料室をはじめてのご利用ですか? 利用方法のご説明を致しましょうか?」
「はい、初めてなので説明をお願いします」
どうやら利用方法を説明してくれるらしい。
「はい、では簡単に利用方法と注意事項の説明を致します。あっ、失礼いたしました私はロニと申します……」
受付のロニさんが説明してくれた内容をまとめると
・利用時は代表者だけでなく全員が入室時と退出時に組合カードを受付に備え付けの装置に翳すこと。
・資料は原則持ち出し禁止で資料自体にも処理がされているのでアイテムボックスなどにも入らないし、入れようとした場合記録が残るので注意。
・受付では紙と筆記具の用意もあるので必要があれば購入して書き写してほしい
・資料は元あった場所に戻すこと。
・受付で貸し出される端末で軽く調べたり、もっと詳しい資料の場所を調べることができるので活用をしてほしい。
・資料室内では飲食禁止。
・他の利用者の迷惑になるので静かに利用をしてほしい。
だいたいこんなところで俺の思っていた一般的な図書館と思って利用すれば問題ない感じだ。
しかし、組合カードは色々便利に使えるようだ。
まあ、便利なのは探索者の管理が楽になる組合側もしれないけど。
「わかりました、これに入室時と退室時にカードをかざせばいいんですね」
「はい、そうです。資料をメモするための筆記具や紙はご利用ですか? 組合の売店でも売っているのでそちらで買ったものをご利用いただいても結構です」
「いえ、大丈夫です」
なるほど、組合の売店では筆記用具や紙なども売っているのか。
あとで、どんなものが売っているか確認してみよう。
「端末は一台でよろしいでしょうか?」
「はい、一台でお願いします」
ついでに端末とやらも一台借りる。
「端末の使い方についてご説明は必要でしょうか?」
「お願いします」
「では、簡単にご説明いたします。こちらの端末に喋りかけると端末内のキャラクターの吹き出しに答えが表示されます」
「はい」
「それだけです」
「それだけ?」
「はい、それだけです。えっと、例えばですね、ダンジョンについて教えて?」
例えば、と話しつつ端末に対して喋りかけるロニさん。
ちょっと痛い人なのだろうか、と一瞬思ったけどそうではないようだ。
「そうすると、このように端末に返答があります」
「どれどれ。おー、なるほど。これは便利ですね」
「わっ! この子可愛いですよ、イオリ様!」
「他に分からないことはありますか?」
「あっ、大丈夫です」
「では、何か分からない事がありましたら、気軽に聞いてくださいね」
ロニさんから端末を借り資料室でダンジョンなどについて調べ始める。
えっと、端末で本の場所を調べられる、と言うことらしいので確認してみようかな。
とりあえずは資料室の真ん中にあるテーブルにフィーネと向かい合って腰を掛ける。
「えっと、この端末に調べたいことを喋ると返答してくれるんだよな?」
「そういう話ですね」
端末は、長方形で左右の端以外のほとんどの部分が半透明となっていて、中央に三等身のキャラクターが表示されている。
キャラクターの吹き出しには、捜し物はなんですか? と表示されている。
とりあえず、このキャラクターの名前を聞いてみようか?
「じゃあ、とりあえず名前を教えてくれるかな?」
そうすると、『正式名称は探索者組合ロブアグリードダンジョン支部所属資料室端末三号です。トリアとお呼びください』と、答えが帰ってくる。
「おお! これは便利だ。あっ、でも静かにしないといけないのに話し掛ければ質問に答えてくれるってどうなんだろう?」
「たしかに静かに利用してくださいって説明されたはずだったと思うのですが」
「うーん、なんか説明と矛盾しているような気がするけど」
辺りを見回すと、先に資料室に来て調べ物をしている人の口が動いているが声が何も聞こえないことに今更だけど気が付いた。
「もしかして、この端末の辺りで喋っても周りには聞こえないのかな?」
単なる独り言で特に答えなど求めていなかったが予想外のところから答えが返ってきた。
「! イオリ様、端末を見てください!」
「え? おお! えっと、なになに? 端末の周辺の3フィトで喋る限りその周囲にのみ声が聞こえる状態になります、か。なんか変に凝ってるな」
しかも、また声を拾ったのか、『えっへん』と表示されていていて、端末内のトリアと普通に会話できてる。
ところで3フィトってどのぐらいなのだろうか?
この世界の常識とかも調べたておきたいな。
「はぅー、便利ですしなんか可愛いです。私も一台ほしいです!」
「まあまあ、兎にも角にもダンジョンについて調べようか」
なんか可愛いものを見たせいでフィーネのテンションが変になっているけど、とりあえず本来の目的に戻ろう。
「そうだな、とりあえず、ダンジョンに関しては、ダンジョン自体や、ダンジョン内の生態、ぐらいか?」
「ダンジョンでできる金策ついても調べましょう! お金は大事です」
たしかに、お金は大事だな。
ダンジョンで討伐したモンスターから換金可能な素材が取れるのだろうか?
じゃあ、それを調べてみようか、と端末を見るとすでに結果が出ていた、これは便利だ。
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