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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第七十九話 イオリと強化合宿の始まり

 訓練場での試合を終えた俺達は、組合の二階で営業中の食堂で少し遅いお昼を食べることにする。

 本日のお勧めは二種類あり、『オークカレー』ともう片方は『オーク肉とピメントの味噌炒め』という、味噌を使った料理だった。

 始めて味噌が使われている料理を見たので、懐かしさもあり思わずこの料理を選んでしまった。

 あとで聞くと、どうやらアイツも俺と同じように思わず『オーク肉とピメントの味噌炒め』を押してしまったようだ。

 フィーネ達や『イーティングオーク』の面々はと言うと、お勧めのカレーやバーガーなどを思い思いに選び、支払いを済ませると料理が出てくるのを今か今かと待っていた。

 料理を受け取ると、俺達は適当なテーブルに集まって座る。


「ではでは」

「食べるとするか」


 出来たての『オーク肉とピメントの味噌炒め』を前に、期待に胸を膨らませて一口分を口に含む、がどうも思い描いていたような味噌の味ではなかった。

 味噌と名前がついていても、俺が昔食べたような日本の味噌とはちょっと味が違い、甘いのと苦いのとあとは形容しがたい味が混ざりあったなんとも不思議な味だった。

 アイツが言うには、蕗の薹(ふきのとう)を使った味噌に似ているような気もする、と言うことだけど、俺は食べたことがないから比較ができない。


「ふむ、流石にお勧めなだけあるな。ここの食堂の料理も捨てたものではない、か」


 試合後の何となくの流れで『イーティングオーク』の面々が同席するのは予想できたが、さもここにいるのが当然と言った顔でロベルトス支部長が居るのは何故なのだろうか?


「えっと、なぜ俺達と昼を? もしかして、暇なんですか?」

「まあ成り行き、だな。あと、暇なわけなかろう」

「サボりか」

「サボりですね」

「サボりでスか」

「……お前たちは、容赦ないな」


 俺達に非難されたためなのか、時間のない中で試合を見に来たためなのか、はーっとため息を吐き出すとオークカレーをばくばくと流し込むようにして食べ終えると、そそくさと食堂を出て行く。


「さて、おめー達は、これからどうするんだ?」

「そうですね。とりあえず、この二人を鍛えるために、また泊まりで潜ろうと思ってます」


 ふと、リーン達を見てみると、むふんと鼻息も荒く気合を入れているようだった。

 ……今からそんなに気合を入れて疲れないんだろうか。


「そうか。まあ、大丈夫だと思うが、気を付けて行けよ、魔物が日中潜るのとはまた違った行動を取ることもあるらしいからな」

「分かりました」


 ほほー、ダンジョン内の特に洞窟の場合は時間によって明るさが変わるわけではないようだけど、魔物は何かしら時間を計るすべを持っているのかもしれない。

 ソータもフィーネも、新たに知った情報に感心しているようだ。

 アイツは、まあ料理を食べるのに夢中で聞いているのかいないのか、まあ聞いていないんだろうな。

 食事を終えた俺達は、そのまま街へ行く予定の『イーティングオーク』の面々に情報をくれたお礼を言うが、気にするな、と言うとさっさと食堂を出ていってしまった。

 ドナドさんから、食事がてらダンジョンに関することなど色々な情報を聞いた俺達は、食事の後に食堂でこれからの計画を決めることにする。

 これもドナドさんが言うには、基本的には食堂は食事を食べ終わったら出るのが正しいが空いている時間帯であれば多少はお目こぼしをしてくれるらしい。


「さて、とりあえず四十五層から潜るのは決定だとして、どのぐらい潜るか、とか何を目標とするかを決めておこう」

「賛成! んじゃあ、うちは半月ぐらい潜ってたいな。あと、自由行動を所望するぜ!」

「たまに地上にも戻らないと、俺達はともかくリーン達は体調を崩すかもしれないから、却下だな。あと、自由行動も今のパーティーの人数じゃ、実態はどうあれトラブルを呼び込むから、なし」

「えー。じゃあ、じゃあ、もっとパーティーに人を入れようぜ」

「それも暫く無しだ。だいたい、リーン達のような人がポンポン出てくるわけないだろ」


 なんとかして、自由行動を勝ち取ろうと無駄なあがきをするアイツをソータに任せてテキパキとリーン達の希望も参考にしながら予定を決めていく。

 今回のダンジョンの探索ではダンジョンの階層を深く潜ることはせず、リーン達の強化を主な目的として行動することにする。

 リーン達はだいたい五十層ぐらいが限界のようなので、まずはそのあたりで少し探索をしつつ魔物との戦闘に慣れてもらう。

 その後は、もう少し階層を潜り、戦闘の様子を見つつ探索を進める予定だ。

 俺達のパーティーでは、大怪我をしたところで直ぐに回復ができる治癒師の役割が出来る俺がいるし、戦闘に関してもアドバイスが出来る人員が四人、若干名教師に向いていなさそうな気もするけど、ともかく、普通から見るとかなり恵まれた環境ではないかと自画自賛になるけど、そう思う。

 

 どうやら、ソータの方もなんとかアイツを宥めすかすことに成功したようなので、これからの予定を確認する意味もあってソータ達に伝えた。


「じゃあ、出発だな!」

「まあ。弁当とかはすでに購入済みだしな。……ところで、ソータ? アイツ、やけにご機嫌なんだが何を約束したんだ?」


 場合によっては、もっと説得が必要になるかも、と暗に示してソータに伝えるも、問題ないとはぐらかされてしまった。

 まあ、問題ないというなら、多分大丈夫なんだろう。

 

 組合を出て、少し早歩きで移動するアイツを追いかけるようにしてダンジョン入口に付き、受付で手続きを済ますと早速ダンジョンに潜る。


「四十五層、ダン(et in)ジョンへ(carcere)


 さて、特に何もなく四十五層に付いたようだ。

 まあ、そう何度も何度もトラブルに巻き込まれるのは勘弁して欲しいし、流石に今回は大丈夫だろう、大丈夫だよな?

 四十五層は洞窟構造となっていて、この付近に出てくる魔物もだんだんと狡猾で小狡くなり、多くの中堅になりたての探索者は歯が立たなくなり、この階層の前後でしばらく足踏みをするようになる。

 そうそう、どうやらこのダンジョンはスケルトンやゾンビ、レイスなどの死霊系と呼ばれる魔物は出てこないようで、その事をもってこのダンジョンを選ぶ探索者も多いらしい。


「えい! リーン、そっち行った」

「うむ、こっちは任せるのじゃ」


 リスクとリターンを秤の片側に載せつつ、それでも安全側に倒してあるので、多少の怪我はしても、大怪我に繋がるような失敗はせずに順調に階層内を探索している。

 今回は、リーン達には『自動地図』を貸し与えず、自力でマッピングするように指示をしてある。

 あくまで『自動地図』は俺が使う、現状は俺だけの固有の魔法だ。

 なので、俺が居ないとこで迷った場合には、迷子になった挙句にそのまま迷宮の藻屑となりそうな未来が見えてしまったので、最初に地図の書き方などを教えた後は、普通の探索者と同じように自身で地図を書き、ダンジョンの中を探索させてみることにした。

 まあ、あまりに酷いようなら中断して、先に二人の強化を行う予定だったけど、途中結果を見る限り、地図を書くのが壊滅的にだめとかそういうことはなさそうだ。


「うーん?」

「ああ、今はここじゃから。次の加護を右に曲がって暫く行けば、多分ここと繋がるはずなのじゃ」

「わかった、次の目標は、ここ」

「うむ、進むのじゃ!」


 多少迷いつつも、なんとかぼボス部屋の前までたどり着いたリーン達と後ろを行く俺達。

 ボス部屋の前で、一旦休憩を入れるが、さすがにリーン達ではこの階層以降のボスと戦うには荷が重そうだ。

 なので、今回は元気の有り余っているアイツを投入しようと思う。


「よし、休憩は終わりだ」

「よし来た! うちが一番乗りだな!」

「あ、ちょっと待て、落ち着け」

「むぐっ。なにすんだ、急にうちの襟を掴むなよ!」

「ああ、すまん。まあ、とりあえず、一人で突っ走るなって事だ」


 だって待ち遠しかったんだからいいじゃん、とか言ってぷんすか怒っているアイツを見て、ちょっと考え直そうかと思いつつ、俺達はボス部屋の中に入る。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿は5月5日の予定です

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