第七十八話 イオリとリーン・ソフィー組の決着とソータの戦い
「くっ! ソ、ソフィー!? ま、まずいのじゃ!」
「他人の心配している場合じゃないっすよ?」
一瞬、ソフィーに気を取られるリーンと、そのすきを逃さず接近するエブヤさん。
まあ、攻撃前にリーンに教えるのは、優しさからくるものなのか、それとも混乱を呼ぶためなのか、まあ、どちらにしてもこれで決着のようだな。
「っ! いつの間にここまで来たのじゃ! くっ!」
「それそれそれっす!」
ガンッ!
「ガハッ!」
リーンの決着とほぼ同時に、ソフィーの方も決着がついたようだ。
ヴノバさんの攻撃をまともに受けてしまい、宙に放り出されている最中に、イシニナさんの魔法の集中砲火を受けてしまい、さらにごろごろと地面を転がる。
どうやら、攻撃を受けている最中に気を失ってしまったようで、頭から落ちることはなかったが、かなり全身を強く打っているようだ。
もっとも、この訓練場ではある程度の怪我は防止してくれるようなので、そこまで心配はしていない。
「いたい。むぅ、負けた」
しばらくすると、ソフィーは頭を一振りし体を起こすと腕を伸ばしたりしながら調子を確認している。
ソフィーが調子を確認していると、同じく近くに飛ばされ、先に起きていたリーンが、とことことソフィーの側へ寄り、手を伸ばし立ち上がるのを手伝っていた。
立ち上がったソフィーは、体中に付いた土を払い、中央で待っていたロベルトス支部長の元へと歩いていく。
おっと、記録はもういいな。
「おう、どうやら決着がついたようだな。『イーティングオーク』のエブヤ・ヴノバ組の勝ち、だな」
「いやー、ちょっと焦ったっす。流石に技は現状負けているつもりは無かったっすけど、対人戦の経験がもっとあったら、とか煽りに乗らないぐらい冷静だったら負けていたあもしれないっすね」
「むぅ。次は絶対、負けない。っ! その手、退ける!」
「く、悔しいのじゃ。今回は完全に相手に乗せられたのじゃ」
「うん、これからの成長が怖い新人が現れたでスね」
どうやら、リーンとソフィーの二人は気に入られたのか、軽いアドバイスをされている。
エブヤさんは、そのどさくさに紛れて、ソフィーの頭をなでるが、べしっと頭に乗っていた手を弾かれていた。
「流石に新人の二人は無茶苦茶じゃ…… お、おほん。さいごは『イーティングオーク』のイシニナと『ストレンジャーズ』のソータだな。双方、準備はいいか? ふむ、良さそうだな。では、始め!」
ソータと『イーティングオーク』のイシニナさんの試合だな。
「カンですが、あなたはなんか強そうです。なので先に仕掛けさしていただきますね! 『ファイヤーボール』!」
「なるほど、では『水球』」
ソータは、まるで合わせるかのように先に仕掛けたイシニナさんの放つ魔法と相反する属性の魔法を後から組み上げ打ち出す。
まあ実際の所、合わせるように、ではなくてワザと合わせているんだろうけど。
二人が組み上げた魔法は、打ち出されると訓練場のほぼ中央で衝突し、それぞれの魔法の強さが拮抗していたため、効果が打ち消し合い結果として弾け飛ぶ。
どうやら、意地の悪いことに、ソータは後出しで魔法を組み上げて全て相殺するつもりのようだ。
「くっ! その余裕、崩してみせます! 『ファイヤージャベリン』」
「『水槍』」
「これでどうです! 『ファイヤーストーム』」
「『暴風』」
「ならば――」
その後も、水属性の『ウオーターボール』や『ウオーターカッター』など、そして、その上位である氷属性の『アイスジャベリン』や『アイスストーム』などなどを放つが、そのいずれもソータが後出しで放つ別属性の魔法攻撃により、訓練場の中心で消滅している。
俺達のパーティーの方を見ると、アイツはうんうんと何やら頷いていて、フィーネは興味深そうに見ているが、リーンとソフィーは口をあんぐり開けている。
「ひ、人はあそこまで魔法をうまく使えるものなのじゃろうか?」
「す、すごい」
ちなみに、口をあんぐり開けているのは、『イーティングオーク』の面々とロベルトス支部長も同じくだ。
さてはて、ソータはこれの決着をどう付けるつもりだろうか。
「はぁ、はぁ、はぁ。な、なんで全然、当たらないのよ! というか、あなたちょっと遊んでるでしょ、真面目に、やりなさいよ!」
「あはは。流石に気が付いちゃいましたか。では、ちょっと本気を出しますから、あれなら怪我しないうちに降参した方がいいですよ?」
「っ!」
すこし、気合を入れたソータに、怯み一歩後ろへ下がってしまうイシニナさんだけど、途中で何とか踏みとどまる。
まあ、ソータも別に虐めているつもりはないんだろうけど、傍から見ると虐めているようにしか思えないなぁ。
「では、行きますよ」
ソータがそう宣言し、わざわざ発動させる魔法の魔法陣を見せる。
ちなみに、俺が以前居た世界では、魔法陣を出さないと魔法が発動できないのは三流の証だった。
何故ならば、魔法陣が表に出ていると発動までの時間も掛かるし、どの属性の魔法が来るかや、対峙する魔法使いの腕によってはどんな魔法を使うかまでカンパされることも有り、また、同じく腕次第だけど、魔法の起動途中で割り込まれ破壊されたり、書き換えられてしまうので、それらを纏めると要するには未熟者、というわけだ。
まあ、最初は誰しも魔法陣が必要だし、儀式魔法と呼ばれる類の魔法では、魔法陣がないとかなり難易度が高くなるのでしょうがない部分もある。
「は、はは。そ、そんなのハッタリに決まってるだろ」
「では、受けてみます? 僕としてはどちらでもいいのですけど」
ただ、今現在ソータが魔法陣を出して居るのは、たぶん相手に威圧をかけるためのハッタリなのだろう。
知り合ったのはつい最近だけど、俺は会った当初からソータの実力は買っているので、さすがに、あの程度の魔法が魔法陣を出さないと放てない、ということはないと思う。
ソータ達の居た世界の魔法大系がどうなっているのか詳しく知らないが、少なくとも、今ソータの周囲に見えている魔法陣であれば干渉が容易にできそうな感じなので、それから考えると流石にソータのような一流の魔法使いが魔法陣無しで魔法を構築できないということはないように思う。
「ちょ、ちょっと、まっ!」
ソータが出している魔法陣は、中央に人の身の丈の二倍程の白く輝く魔法陣を核として、その前後に核とする魔法陣の半分程度の大きさで数個の魔法陣が連なっている。
以前の世界では、たしか積層型魔法陣と名付けられていたはずだ。
「降参しないなら、避けるか防ぐか、してくださいね?」
「えっ? はっ! こ、降参、降参する!」
さすがに、魔法陣の圧にビビったのか、イシニナさんは降参をした。
降参の声を聞いて魔法陣をサクッと消滅させるソータと、それを見てあからさまにほっとするイシニナさん。
そして、未だに口をあんぐりと開けた状態で呆け審判の責務を放棄している、ロベルトス支部長。
あ、アイツがつかつかとロベルトス支部長の後ろまで行って、尻を蹴り上げた。
「へぶぅ! はっ! な、何が起こった?」
「いや、何が、とかじゃなくて、試合終わったみたいだぞ?」
「お、おう。えっと、『ストレンジャーズ』のソータの勝ちじゃ。で、良かったんだよな?」
「……審判なのに見てなかったのかよ!」
「お、おう。すまんすまん」
どうやら、決着を見逃したことへの後ろめたさからか、アイツが尻を蹴り上げたことは有耶無耶になったようだ。
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