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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第七十四話 イオリと予想された展開

 テントに入りしばらくすると、リーン達と何故かアイツの寝息が聞こえてくる。

 ソータが慌てて起こそうとするが、俺はソータの服を掴み無言で首を振ることで、それを止める。

 止めると同時に中で話をしても外へ漏れないように結界も張っておく。

 今回の結界は以前の遮音結界とは違い、グースカ寝ているアイツらのいびきだけはそのまま外に聞こえるようにしてあるので、結界を張ることで突然無音になり不審がられることもないはずだ。

 アイツに関しては今は寝かせておこう。

 危険が迫れば勝手に起きるだろうし、叩き起こした後で『思考共有』を使えば情報共有ができるのだから起こす必要もないだろう。


「さて、これからどうしますか、イオリ様?」

「そうだな、まあ、待つしかないだろうな」

「待っていればそのうち襲ってくると思いますよ。僕たちは睡眠薬で朝までグッスリ寝ていることになっているので」

「睡眠薬、ですか。とすると、言い訳できないですよね」

「だな」


 とりあえず待つことにしたが、あいつらが襲ってくるのを待っている間は、出来ることが少なく暇だ。

 暇なので、これまでに倒した魔物の戦果の計算や、今後の探索の進め方や、リーン達の教育方針や、俺やソータのみが現状使える魔法についての情報交換などを話し、時間を潰す。

 そうして、しばらく時間を潰していると、どうやらあいつらが動き出したらしい。

 結界があると、あいつらからの攻撃も、その逆の場合にも邪魔なので、ソータとフィーネに断りを入れて解除する。

 これから起きることを記録しておいたほうがいいか?

 そういえば『倉庫』の中に記録用の水晶が…… あったあった。

 それと『会議録音』と『映像記録』だったな、それを使って水晶に記録開始っと。


「おーい、起きてるか?」

「流石に起きていないでしょ」

「だよなー。あんだけ強力な睡眠薬に抵抗する、なんてことは百層のボスでも流石に無理だと思いますよ」


 寝ても居ないし、睡眠薬も完全に無効化していますよっと。

 どうやら、よっぽど盛った睡眠薬に自信があるのか無駄口を叩いている。


「よし、じゃあ。始めるか。すまんな、これも運が悪かったということで諦めてくれ」

「はぁ〜。ちっとも悪いとは思っていないくせに」

「まあ、な。しかし、こいつら始めて見る顔だよな」

「ですね。いつもは下層や組合内で一度は見ていると思うのですが、つい最近探索者になったのですかね?」

「まさか、この階層までたどり着けるんだから、そこそこやれるはずだ。まあ、偶然出会わなかったってだけの話だろ?」

「……まあ、考え過ぎですかね。如何にここまでたどり着けたとしても、睡眠薬一つでこのざまですから、この先に進むのは難しかったでしょうね」


 ……好き勝手なことを言ってるな。

 フィーネが、少しプルプルしているのは、笑っているのか怒っているのかどちらなんだろうか、と顔をそっと見るとどうも笑いをこらえているようだな。

 逃さないように周囲の結界を覆うように結界を構築するが、誰もそれに気がついては居ないようだ。


「それじゃあ、さよならだな」

「この世からですけどね。ははっ」


 ギンッ!

 ギャリッ! バキッ!

 

 あ、槍が折れた。


「な、なに!?」

「ああっ! 俺の槍が…… 高かったのに……」

「ば、馬鹿なっ!」

「はい、お疲れ様」

「へっ?」


 水晶への映像と音声の記録を止め、短距離の転移で背後に移動した俺は、全員を『昏倒』で気絶させようとするが、リゥムだけが、くっ、とか呻きながらも、少し抵抗(レジスト)しようとしたようだけど、まあ、それも最終的には失敗して、結局は他の五人と同じように気絶し地面に転がっている。

 気絶しているうちに、俺は逃げ出さないように全員を拘束する。

 そのついでに『離脱くん』やその他危険な魔道具を持っていないか確認し、持っていれば奪っておこう。

 魔道具を使われて逃げられたら間抜けだもんな。


「しかし、鮮やかなものですね」

「まあ、山賊や盗賊をさんざん相手にしてきたからなっと。ああ、『離脱くん』は一人一つは持っているみたいだな。準備が良いようだ」


 そういえば、魔法使いやパーティーリーダーが『昏倒』を抵抗(レジスト)できず、後衛で補助として踊り子をしているはずのリゥムが半ば抵抗(レジスト)したってのは意外だな。

 リゥムに『鑑定』をしていなかったかと思い出し確認してみた所、意外なことがわかった。


----------------------------------------------------------------

名前:ナムリス

性別:女性

年齢:22歳

所属:『デイブレイク』、『暁の解放者』

称号:無音殺傷者、逆境を耐える者

状態:昏睡

ステータス:

体力:70/100

魔力:95/100

魔法:拘束(liga)雷撃(fulminis)戦意高揚(exaltate)属性(specific-)付与(fascinare)遅鈍(troiae-)付与(fascinare)機敏(agilitas-)付与(fascinare)睡眠(somnus)

スキル:無詠唱、舞踊家、無音殺傷

加護:なし

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 まず、偽名を使っていたのか名前が違う。

 それにスキルや魔法の構成を見ると、どうも踊り子(ダンサー)というよりは付与魔術師(エンチャンター)、それも高位のそれに近い気がする。

 あとは、暗殺者が持っているような魔法や称号もある。

 さらには『暁の解放者』所属とも書いてあるな。

 まあとりあえず詳しい考察は後にして、この騒ぎでも一向に目を覚ましてこないアイツを含めた三人を起こすことにするか。


「んぅ? もう朝かの。ふぁぁ〜。まだ眠いのじゃ」

「んんっ。むぅ、眠い」


 ゆさゆさと揺り起こすと、アイツ以外は目をこすりながらも何とか起きてくる。

 ただ、アイツは同じように揺すっても、テントの中から引っ張り出しても未だに目を覚まさないので、しびれを切らした俺は最終手段を取る(魔法で水を掛ける)ことにした。

 それ、ザバーっとな。


「あばばばばば。 ……げほっ、げほっ。 し、死ぬかと思った。 ……おまえか犯人は! ふんっ!」

「おっと、危ない。起きないのが悪いんじゃないか」

「……まあいいや。んで、このミノムシみたいに転がってるのは何さ?」

「ああ、俺達を明確な殺意を持って襲ってきたから返り討ちにした」

「ふーん? で、どうするんだ、こいつら」


 とりあえず、返り討ちにして簀巻にしたは良いけど…… 現状で選べる選択肢は、三つぐらいかな。


「そうだな。何とかして組合に連れて行く。身ぐるみ剥いで放っておく。このまま殺す。さあ、どれにする?」

「簀巻の状態の奴らを殺すってのは、うちは弱いもの虐めみたいで選択肢から除外したいなぁ」

「まあ、それは俺も分からないでもないかな。それに、どうもこのリゥム、じゃなかったナムリスって本当は言うらしいけど、そのナムリスが『暁の解放者』にも所属しているらしいんだよな」

「ん? その『暁の解放者』ってのは、なんなんだ? うちは初めて聞くんだけど」

「ああ、俺達がこの街に来た初日に――」


 どうも、アイツらやリーン達は初日の爆弾騒ぎを知らなかったようなので、俺が知っていることを順を追って伝える。

 爆弾の威力を話すと、リーン達は目を丸くして驚いていたが、アイツらはそこまで驚いては居ないようだ。

 話を終えた俺は改めて、簀巻の奴らをどうするか決を取ると、とりあえず組合まで連れて行こう、という事になった。


「じゃあ、六十階層まで速度を上げて突っ切るぜ! な、いいよな?」

「イオリさんは、しょうがないですね。私もお手伝いします」

「じゃあ、運ぶのが楽なように円柱型の結界に押し込めるか。で、転がしていこう」

「あ、それだとぐるぐる回って、そのうち吐いて窒息死しそうなので…… 荷車とかに載せて運びませんか? えっと、たしか……」


 なにやらソータは考える仕草をしたと思ったら『アイテムボックス』の中を探していたようで、目の前に荷車とそれを引く小型の狼型のゴーレムのようなものが現れた。

 俺は、目の前に現れたそれのゴーレムを狼型の魔物の姿に『幻影』魔法で変えたので見た目では魔物を使役しているように見えるはずだ。

 で、地面に簀巻で転がっている『デイブレイク』の面々を全員で手分けして荷台に載せ、念のためと荷台を『結界』で覆っておく。


「じゃあ、出発だな」

「ああ、突撃!!!」


 その日、六十階層付近では笑い声を上げ砂埃を巻き上げながら魔物を屠る集団が目撃されたとかされなかったとか。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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誤字や脱字の指摘もあればお願いします。


次の投稿は3月31日の予定です。


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