第七十三話 イオリと共同での野営
「ああ、さっきはみっともない所を見せたな。始めまして、で合ってるよな? 俺達は『デイブレイク』って、まあすこしは名の知れたパーティーの…… 知らんか、まあいい。で、俺はそのリーダーのゼインだ」
「私は副リーダーのダインです。よろしく」
「シオンといいます。魔法使いをしています」
「デキストだ。壁役をしている」
「デトリンだ。同じく」
「「俺達は双子だ。よろしく頼む」」
「リゥムです。前衛を支援する踊り子ってのやってます。よろしくお願いしますね?」
順に、スキンヘッドの二人がリーダーのゼインと副リーダーのダインで、フードを脱ぎこちらを見てくる銀髪で切れ長の目をした魔法使いの女性がシオン。
そして、全身鎧をそのままに、くぐもった声で息のあった自己紹介をした双子らしい男達がデキストとデトリン、最後に肩ぐらいで切りそろえられた黒髪をした妖艶と言うよりは可愛らしいと言った感じの踊り子の女性がリゥムと言うらしい。
さて、今のところは特に相手に不信感を持たせる必要もないので、俺達も自己紹介をする。
第一印象としては悪くはない、と言った感じだけど……。
ふーむ、どうやらシオンが無詠唱で何やら俺達に対して魔法を掛けているようだな。
まあ、抵抗されるか無効化されると思うから、それに気が付かないように『思考誘導』を掛けとこう。
魔法を掛けられた結果、リーン達二人は『替玉人形』の効果で抵抗し、俺も含めた残りは抵抗にとどまらず完全に無効化したようだ。
さてさて、使われた魔法は何だろうと思い、『鑑定』でシオンを見てみると、どうやら『思考誘導』に近い感じで、その効果は自分たちに親近感を持つようになるらしい。
「それで、『デイブレイク』さん達は、どこでドラゴンを? まだ、この付近の階層では竜種はもとより、亜竜すら出て来ないと……」
「ここから少し戻った所にある小部屋だな」
「小部屋に? さすがに小部屋にドラゴンが居るって聞いたことないですが、幻を見たのでは?」
「いやいや。あれは絶対にドラゴンだったはずだ! 見間違えるはずはない。なんなら小部屋に戻ってみるか?」
「いや……」
「まあまあ、ゼインも、えっと、イオリさん、いやイオリくんと言った方が良いでしょうか?」
「はぁ、どちらでもいいですよ」
「ではイオリくん、そちらはイオリさんで。二人居るのはややこしいですね。まあともかく、二人ともそう熱くならずに。とりあえず、野営の場所を探しませんか?」
ゼインがやけに意固地になっているようにも見えるが、スキンヘッドにしては丁寧な口調のダインの提案で、一旦鉾を収め今日の野営の場所を探すことにする。
メガネは掛けていないけど、何となく知的な感じが雰囲気からにじみ出ている気がする、まあ気がするだけだけど。
程なく広さがそこそこ有る、野営に適した場所を見つけたので、全会一致でそこが今日の野営場所として決まった。
野営の準備中もそれとなく警戒はしていたが、特に怪しい動きも今のところなさそうだな。
流石に勘違いとは思わないけど、仕掛けてくるにしても俺達が寝ている最中なのだろうか、とそんなことを思いながらも結界を張る作業を進める。
結界を張っている最中に視線を感じるも、意志の力でそれに反応しないよう押さえ込み周囲を探って見ると、どうやらリゥムがじっとこちらを見ているようだった。
しばらく黙々と作業を行い結界を張り終えた後、始めて気がついたようなふりをして振り返るが、気づかれた当人は特にこちらに何か言うわけでもなく、にへらと笑顔を見せこちらに手を振ってきたので、ため息で返事をしておく。
いったい何なんだろう?
「さてと。だいたい準備できたようだし飯にするか。俺達は一応弁当を持ってるし、そこそこ余裕があるから提供も出来るけど……」
「ああ、俺達もダンジョン内で調達した食料があるから大丈夫だ。そして……」
「そして?」
「これが、俺達秘伝の調味料だ!」
「へー」
「あっ、疑ってるな? これを一振りすると、固くて不味い魔物の肉でも冷えて不味くなった弁当も、それはもう何でも美味くなるって寸法さ! ほれ、残り少ないが何なら丸ごとやるから使ってみろ」
ゼインが勿体ぶって取り出したのは、どうやら自家製の調味料のようだ。
透明な容器に入ったそれは、見た目はふりかけのようにも見えるが『鑑定』すると、名称が『オリジナル調味料(睡眠薬入り)』となっている。
ここで睡眠薬が入った調味料を勧めてくるということは、俺達の就寝中に襲うことはほぼ確定かな。
もっとも、睡眠薬などでの強制睡眠は状態異常と判定されるのかよっぽど強力なもの、例えば爪の先程度で一般人を昏倒させるぐらいの薬をプール一杯分、とかでなければ少なうとも俺は何事もなく無効化するんだけどな。
まあ、それも前の世界での話だし、念のため『鑑定』で確認しつつ弁当を食べるか。
ほんと、食事するときぐらいは余計な気は回さずに食べたいのだけど。
「ふーん、そこまで言うのなら。どれどれっと」
睡眠薬入り調味料を弁当にふりかけ、ソータに目配せとともに調味料の入った瓶を渡す。
どうやら魔力の動きからソータも調味料を調べたらしいが、それを顔に出さず俺と同じように弁当へふりかけると、フィーネに渡す。
フィーネやアイツ、リーン達も特に気にせずに弁当にふりかけていく。
アイツはどうも気が付いてはなさそうだけど、これまでそれでよく死ななかったなと思ったが、野性的なカンで危険を避けるので、結果としてこれまで何もなかったのかもしれない。
弁当を一口、二口と食べると、確かに自慢するだけあって弁当がいつもよりも美味しい気がするが、それもこれも睡眠薬入りという所が台無しにしている。
今のところ『鑑定』の結果も俺の意識の上でも眠気は起きていないようだし、他のメンバーも特に眠そうにしていることもないようだ。
リーン達の『鑑定』結果にも今のところは状態異常としての睡眠状態は付与されていないようだ。
魔道具と同じように『替玉人形』にも耐久度が存在しているが、それを見ると二人共が95/100となっていて、暫く見ていると少しづつ減っている。
どうやら、『替玉人形』は、すくなくとも薬が原因の睡眠は状態異常と見做され抵抗するようだな。
「なるほど、たしかにいつもより美味しい、ような気がするな」
「だろ!」
「あっ、そうだ! 食べながらでいいですけど、今晩の見張りの順番を決めませんか?」
「……決めるのは問題ないけど、どんな順番に?」
「じゃあ、パーティーごとで分担するってことで、先に俺達のパーティーが見張りをするから、その次に、でどうだ?」
「まあ…… 疲れているのかなんだか眠むいし、有り難い提案だけど、いいのか?」
「……実は情けないことに、さっきまでドラゴンに追われてたから目が冴えてしょうがないのさ」
「なるほど。まあ、そういうことなら先に休ませてもらうよ」
ゼインとダインからの提案を受けて俺達は先に休むことにする。
言葉では眠たいと伝えたが、もちろん疲れてもいないし眠くもない。
リーン達は疑問に思っても口には出さなかったし、アイツも危うく口に出そうになったが、俺が『思考共有』を使って黙らせるよりも前に、ソータが弁当の余りを使い物理的に口をふさいだので事なきを得た。
まあ、その行動に対してリゥムが首を傾げていたけど、その後、痴話喧嘩のたぐいと思われたのかしきりに頷いていたぐらいだな。
「じゃあ、その砂時計が落ちたら起こしてくれ」
「ああ、この砂時は、だいたい三刻ぐらいだから、なんならそれぐらいに起きてきてもいいぜ」
「起きてこなかったら、まあ、申し訳ないですが叩き起こしますので、それまでゆっくりとお休み下さい」
「ああ、じゃあよろしく」
そう言って、俺達は自分たちのテントへと入り横になる。
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