第七十話 イオリとダンジョンでの二度目の野営
若干の反省すべき所はあったにせよ、ある程度、リーン達の力を測れたのは大きな収穫だったな。
さて、目下の問題は俺達の力がこの世界のどの辺りに位置しているかという所だけど、これはまあ、俺達自身の安全に関わることだからやはり気になってしまう。
俺達に、まあ、少なくとも俺に対して多少なりとも害をなすことは、戦闘時以外でという制限をするにしても不可能ではないと言う事が、ソフィーの件で判明した。
とは言え、後から考えると実際にはダメージ自体はほとんどなく、そのため、あの状態からでも十分反撃は出来たのではないかと思うので、少しぐらい気を引き締めようと思うが、それ以上は現状は気にし過ぎかなと思う。
まあ、そんなことをダンジョン内の探索中に考えれているのも、暇を持て余していることが理由な訳だけど。
そして、今現在はと言うと、今夜の泊まる場所を探して四十層を彷徨っているところだ。
「なあなあ、あの辺りはどうだ? ちょうどいいんじゃないか?」
「えっと? ああ、たしかに丁度良さそうだな。じゃあ、あそこで今晩は野営するか」
リーン達を先頭に魔物を倒しながら階層内を彷徨っていると、あいつが場所を指し示してくる。
広さは人が五十人は余裕で入れそうで、しかも全部で三箇所ある入り口が部屋の片側に集まっている。
泊まるにしろ戦闘を行うにしろ、常に四方を気にする必要がなさそうな作りは評価できるところだ。
もっとも、見方を変えれば袋小路なのだけど、少なくともこのダンジョンに限って言えば『離脱くん』があるから心配は無い。
突き詰めるとそもそもの話、これを使えば自由にダンジョンから脱出できる、という仕組みがどこから来ているのか、ということは少し気になる。
万が一にダンジョン自体の機能に依存している場合、ダンジョンマスターの類いが、もし仮に居るとすると、そいつらの考え一つで魔道具が使えなくなって阿鼻叫喚、ということは十分考えられるのが恐ろしいところだ。
とまれ現状は自力、要するに力押しでの脱出が問題なく出来るような階層に居るので気にする必要はないとは思っているけど。
「じゃあ、ここで設営だな」
「とりあず、テントを設置してしまいましょうか。あ、一応は僕達も同じようなテントを買ったのですが、どうします?」
「どうしますって、ぜひとも使いたいって顔に書いてあるんだけど」
「あっ、分かりますか?」
以前にテントを使った時にソータは珍しがっていたが、どうやら昨日の今日で自分たちも同じものを買っていたようだ。
まあ、テントを張る以外にもすることは色々あるので、弁当は半分づつの分担としてあとで出すこととソータと決めて俺は結界を周囲に設置することにする。
ソータは他のメンバーと協力してテントの設営をするようだ。
結界の設置は、前回と同じ轍を踏まないように、かなり力を入れて効果と強度を設定した。
が、設置が終わり、冷静になって考えると少しやりすぎたかもしれないと、思わなくも…… まあ、強度が無いよりはある方がいいか。
結界を設置している間に、テントの設営や、食器類やソータが持っている分の弁当など、夕食の用意は出来ていたようで、俺以外のパーティーメンバーは弁当などを中心にして集まり、すでに地面に座って待っていたようだ。
「待たせたか?」
「大丈夫ですよ、イオリ様」
「よっしゃ! 飯だぜ!」
「イオリさん、ちょっと落ち着いて下さい」
「おいしそう」
「妾もお腹が減ったのじゃ。さっさと座って食べるのじゃ」
体感的にはそんなに待たせていないと思ったのだけど、どうやら腹ペコ魔神がパーティー内に紛れていたようで、はやくはやくと急かしてくる。
ソータの弁当へ追加して、『倉庫』から弁当を出した俺は、皆と同じように地面に座る。
隣に座っていたフィーネが食器とフォークを渡そうとして来るが、それを断り、リーン達二人に異世界流というか異世界日本流の食前と食後の挨拶を教える。
教え終わると、納得した様子のフィーネから改めて食器とフォークを受け取り、食前の挨拶をする。
「「いただきます」」
さて、本日の夕飯も街で購入した弁当だ。
実は昼食も弁当だったのだけど、昼は一人づつに当人が選んだ弁当を渡し食べただけだ。
車座になった俺たちの中央に広げられたお弁当のうち、ソータが出した分は、昨日購入できなかった『隠された食事処』で購入した物のようだ。
俺が出した分は、当然『手作りお弁当屋さん』で購入した弁当だ。
「へー、この『オーク肉ステーキ弁当』も、イオリくんお勧めなだけあって美味しいですね」
「だな。ただ、この『魔狼のスライム炒め弁当』も意外と美味しいぞ」
「ん。こっちも美味しい」
「妾が選んだものが一番と思うのじゃが、『オーク肉角煮弁当』も捨てがたいのじゃ」
「私は『オーク肉かつ弁当』が一番美味しいと思います」
自分の選んだ弁当以外に目移りしているパーティーメンバーもいるけど、俺は『オーク肉ステーキ弁当』が一番だと思うんだけどな。
まあそれはともかく、今夜の見張りの順番や明日の探索の仕方、今日の反省点などなどを話しながら夕食を食べる。
弁当食べるのは良いけど、おかずだけが減って米やパンなどの主食がどうしても残ってしまうな。
俺達のパーティーでは今のところはお酒の類いを飲む人は居ないのでおかずと比べて明らかに残るということではないのだけど、オニギリなどにするか購入時におかずだけにしてもらった方が良かったのかもしれない。
次回、お弁当を購入する時には予約ついでに頼んでみるか。
そんなに無茶なお願いではないと思うし、聞くだけなら問題ないだろう。
「ふぅ〜、食った食った。これ以上は流石に無理だぜ」
「いくらなんでも、そんなに腹いっぱいになるまで食べるのは、食べ過ぎだな。吐いても知らんぞ?」
「なにお〜?」
アイツの食べ過ぎを咎めると、他の女性陣も思うところがあったのか恥ずかしそうに目を伏せる。
まあ、フィーネは食べ過ぎだけど、リーンとソフィーは問題ないと思う、と率直に伝えると、リーン達はホッとしたようで、逆にフィーネは、イオリ様酷いです、と言ってご機嫌斜めの様子。
慌ててフィーネを宥めている俺を、ソータは生暖かい目で見て来るのは我慢するとして、アイツはというと失礼なことに腹を抱えて笑っていた。
ちょっと癪に障ったので、大人気ないと思ったけど、半ば冗談、半ば本気で、ボスと戦う権利の剥奪をチラつかせると慌てて謝ってきたから、思わず今度は俺が笑ってしまい、逆にアイツが怒り出しそうになってしまった。
まあ、怒り出す前にソータが仲介に入り、事なきを得たけど。
「じゃあ、見張り、よろしく」
「がんば!」
「わかったのじゃ」
見張りの順番や組み合わせは、例のソータが所有している異世界の魔道具を使って決めることにする。
二回目ともなればソータも慣れたもので、リーン達が物珍しげに見ている中、サクサクと決める。
組み合わせの結果、見張りは二人組を三組として、俺とリーン、フィーネとソータ、そしてアイツとソフィー、とした。
見張りは三刻ごとに交代するとして、ソータ達が使っていた『アラート』を俺も覚えることで順番に見張りが出来る体制を整えた。
この『アラート』は正確な時間の概念があれば、意外と簡単に覚えられるようなので、俺はすぐに覚えてしまった。
魔法音痴に近い部分があるアイツも覚えているようだし、フィーネも少し時間がかかったが覚えることができたようだ。
リーンとソフィーは正確な時間の概念が曲者なのかすぐには覚えられなかったが、課題として見張りの最中にも練習をさせたところ、リーンは次の見張りの番になる前に無事覚えることができた。
見張りの最中はそんなリーンを眺めていたり、雑談したり、魔法を弄ったりをしつつ時間を潰し、交代の時間が来たので次のフィーネとソータと変わる。
見張りの番が終わったので、テントへ戻り寝転び、すぐに夢の中へと旅立ってしまったリーンの寝息を聞いていると、俺の方にも、すぐに睡魔が襲いかかり、その結果として同じように夢の中へと旅立っていった。
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