第六十五話 イオリとパンケーキ
さて、とりあえず俺達が知っている弁当屋が二軒だけなので、ここで弁当屋巡りはここでおしまいだけど、この後どうするかな。
「イオリ様も、皆様も、ここでおやつを食べていきませんか? このお店、軽食だけではなくパンケーキもあるみたいです」
「パンケーキ!」
「ん? パンケーキとは何じゃ?」
「パンケーキってのは、こうふっくらとしてて――」
暫く前に昼を食べたので、ガッツリと食べるほどではないけど、たしかにおやつを食べながら、後の予定を決めるのはありかもしれない。
そうお思いながら、ソータの方を見ると苦笑しながらも頷いている。
女性陣は言わずもがなだな。
あれは、おやつを食べる、食べないの段階を通り越して、どれを食べようか迷っている、と言ったところだろうか?
「すいません、注文いいでしょうか?」
「あいよー。何にするかね――? この店おすすめは、このパンケーキと紅茶のセットだねー」
とりあえず、いつまでもカウンター前でワイワイガヤガヤしていてもしょうがないので、カウンター越しに俺達のことを微笑ましい目で見ていた店長さんに声を掛け、注文をする。
順番に注文し、商品を受け取った俺達は奥の席に集まり座る。
この店は、入り口のドアから入るとすぐ右側に注文カウンター、左側が店内で食べるための空間となっている。
左側の空間は、店の間取りとしては広く取ってあるけど、席の数自体は二十席分とそれほど多くない。
たぶん、お昼を食べた『馬の蹄亭』の半分ぐらいの広さだと思う。
席に座った俺達は、待ちきれない、とばかりに受け取ったパンケーキにナイフを入れ切り分け、そして口に放り込む。
「イオリ様、美味しいですね」
「だな。トッピングも美味しいそうだけど、まずはトッピングなしにこのシロップを掛けて食べるのが、俺は美味しいと思う」
「たしかに。うん、美味いぞこれ! あ、でもそっちのトッピングも美味しそうかも」
「だ、だめですよ、イオリさん。これは僕のですから」
「えー。ちょっとぐらいいいじゃんか」
俺達四人はワイワイガヤガヤと、そして嫌に静かだなとリーンとソフィーの方を見ると二人共が目を輝かせながら一心不乱にもぐもぐとパンケーキを食べているところだった。
リーンの方はナイフがうまく使えなかったようで横に避けてあるが、どうやらそれを見かねたソフィーがある程度パンケーキを切り分けてあげたようだ。
二人は俺の視線の先に気が付いたフィーネも、そして最終的には俺達四人が見守る中、最後まで食べきり、ああ、パンケーキ無くなっちゃったとでも言うように少し落ち込み、はっと気がついたように俺達の視線に気が付くと首まで赤くなってしまう。
まあ、本人たちには悪いと思うが、その仕草もまた可愛いと思ったのは俺達四人の共通認識だ。
「さて、この後どうする?」
「特に行きたいところは、今のところないですね」
「あっ、じゃあこの街を探検しようぜ? うちらこの街に来たばかりだから街の中に何があるかとか、まだよく知らないし」
「たしかに、それはいいと思います」
「この街の探検、興味ある」
「儂もじゃ。人間の作った街とは興味深いのう」
俺自身も、特に反対をする理由もないので、特に揉めることもなくおやつの後は街の探検をすることに決定した。
探検といいつつ俺達は探索者だから、街を探索すると考えるとそれはそれで面白いかもしれない。
「あ、そうだ。二人共、どんなふうに戦うんだ? 大まかでいいんだけど、俺は基本後衛でフィーネは前衛。アイツは前衛で、ソータが後衛、だな。武器が必要な戦い方をするなら、この際、鍛冶屋にも行って良さそうなのがあれば購入しようと思うのだけど」
どうかな、と二人に聞いてみる。
「わたしは、ナイフか、素手で戦ってきたので。ナイフは持っている……。あっ、全部無くしたんだった……」
「この形態の時は、肉弾戦でも良いが、どちらかと言うと魔法をどかどか放つのが儂は好きなのじゃ。なしでも魔法は打てるのじゃが魔法の補助をする杖などがあればもっと打てるのじゃ! でも、兄から街で杖を買うと高いと聞いたことがあるのじゃ」
ふむ、ソフィーはやはり前衛、リーンは前衛も出来るけど後衛と。
ソフィーはナイフか素手で戦うのということは、アイツのように拳で語り合っちゃったりするのだろうか?
そうすると、アイツは多分自前で素手を強化していると思うけど、ソフィーは無理だろうから篭手みたいなのがあると良いかもしれない。
そして、リーンは杖みたいな魔法の補助をする物が欲しい、と。
だとすると俺の『倉庫』の中を探せばあるかも、と思ったところで今の二人が使うならお店の商品のほうがいい、と考え直す。
なんせ、俺が持っているものといえば、少なくともレア、下手すればレジェンドに分類されてしまう物があったりもするので、それを渡しても結局は道具に振り回されてしまう、というのは想像に難くない。
まあ、それでも武器や道具が見つからないようであれば、『倉庫』に眠っている物を結局は渡してしまうのだろうけど。
「じゃあ、鍛冶屋と…… スタッフとかはどこに売っているのだろう? 魔道具店…… は何か違う気がする」
「さー? うちは前衛だし、よく知らない」
「うーん、たしか魔法関係を扱ったお店にあったと思いますが、たしかに魔道具店で扱っていないような気がしますね。僕もこの街では見たことないです」
「そうか」
「あ、そうだ。この後の予定、二組に分かれて行動しませんか? 僕とイオリさんとリーンさん、そちらはイオリくんとフィーネさんとソフィーさん、とこんな分け方で武器などを調達しつつ街を回るのはどうでしょう?」
「お、いいじゃんかそれ。じゃあ、競争して面白いお店とか見つけてみようぜ」
「面白そうですね。私もいいと思います」
なんか、トントン拍子に決まってしまったが、なるほど、まだこの街で見ていないところはありそうだし、たしかに面白そうだな。
パーティー全員でまとまって行くのもいいけど、今回のように手分けして回るのも有りだな。
「じゃあ、日が沈む頃に組合のロビーに集合で、いいか? あ、まてよ」
忘れてたが、俺とあいつの間には『思考共有』って方法があったな。
俺は、そういえば、と思い出した『思考共有』で、あいつに問いかけ連絡方法を決める。
『よ!』
『ん? ああ、思考共有か。んで、何の用?』
『ああ、組合に集合する件だけどな、これ使って、先についた方が連絡するってのはどうだ?』
まあ、『思念会話』って魔法もあるにはあるけど、これは双方が使えないと連絡が取れないし、そもそも常に使い続けていないといけないために、結果として魔力がどんどん減っていくので使い辛い。
「了解。うちはそれでいいぜ」
「イオリくん?」
「ああ、組合に着いたら『思考共有』で連絡取ろうって話」
「なるほど」
ああ、と納得したソータとフィーネに対して、リーン達はさっきからどんどんと話が進むので俺達の顔をキョロキョロと見ていて忙しない。
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