第六十三話 イオリとオーダーメイドの魔道具
年内最後の投稿です。
昼を食べ終わった俺達は”馬の蹄亭”を出ると、ライアさんの魔道具店へと向かうことにする。
”馬の蹄亭”から大通りに戻り、ミンティアナさんに書いてもらった地図を取り出すと現在位置を見比べ、頭におおよその道順を思い浮かべる。
「なーなー。うちらが今から向かう魔道具店ってどんな所なんだ?」
「どんな所、ですか。そうですね、なんと言ったら良いのでしょう? お店らしくないと言いましょうか……」
「たしかに、そうだな。とりあえず……。売り物の魔道具が全くなかったな」
「全くない? それは注文されたら作るってことなのか?」
「もしかしたら、そう言うこともやっているのかもしれないけど。借金取りを目の敵にしてたみたいだから、たぶん、借金の形に全部持ってかれたんだと思う。あとは店主のライアさんはドワーフで、見た目より年上。そして、どうやら魔道具組合の組合長らしいな」
「組合長ですか? そういえば、確かにロベルトスさんがそんなようなことを言っていましたね」
組合長なのに借金で店に魔道具が置いていないってのはどうなんだろうな。
まあ、その借金の理由も、作ろうとしている魔道具が難しいって話だし、仕方ないのかもしれない。
ライアさんの腕を持ってしても、魔道具の制作に失敗して素材を駄目にするって、一体何を作ろうとしているんだか。
「えっと、この角を曲がって……。ああ、あったあった」
「ん? その魔道具店って、どこにあるんだ? うちには、どこも普通の家のように見えるけど」
「ああ、そう言えば看板はなかったな。そこだな、入り口に店の名前が書いてあったはず」
「入り口? ……たしかに『ライア魔道具店』って書いてあるな。ん? 一見さんお断り? なんだこれ?」
これから行くライアさんのお店について話しながら、大通りから路地裏へと進みしばらくするとライアさんが店主の魔道具店へと到着した。
あいつは、入り口に書かれている文字を見ると、首を傾げながらも流れるような動きでドアを開けようと、いや開けた。
「あっ! ちょ、ちょっと開けるのは待ってくださ……」
「へっ? どわぁ!」
フィーネが止める間もなく、入り口のドアを開けてしまったあいつは、ライアさんから、今度はハンマーではなく金床のような物の洗礼を受けてしまった。
借金取りと間違えられ、物を投げられ、そして、誤解が解けてライアさんが謝るまでがこの店でのお決まりのやり取りなんだろうか?
「ああ、すまんすまん。また、借金取りと勘違いしたわい。最近、儂のとこに来るのは借金取りぐらいしかいないからの」
「ん? ミンティアナさんとかはこないのか?」
「ああ、用事がある時は、この魔道具で連絡してもらって儂が出向くことにしているのじや。ほれ」
そう言って床に落ちていた石ころを渡されたが、これが魔道具なのだろうか?
とりあえず『鑑定』してみようか。
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名称:中距離相互連絡魔道具 擬態カスタム
通称:連絡取るぞう 石ころエディション
状態:待機中
耐久度:83/100
希少性:ユニーク・クラフト
魔力消費:起動時消費50、継続消費なし
概要:中規模の都市内の端から端まで端末同士で連絡を取ることが出来る魔道具。
詳細:
利用前には予めプリセットに連絡を取り合う魔道具の情報を相互に登録しておくことが必要で、登録がない場合は接続が拒否される。
この動作は変更が可能で、全ての端末に対して応答を受け付けるようにすることも可能。
ただ、いずれの場合でも連絡は一対一での接続のみ可能。
この魔道具は、ライアが道端に落ちている石ころに見えるようにカスタマイズしたもの。
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ふむふむ、なるほど。
説明からすると、携帯電話みたいなものだろうか?
とりあえず『鑑定』は終わったから、興味深そうに俺の手元を見ているソータに、この石ころ型魔道具を渡しておく。
「それで、今日は儂に何のようじゃ? 流石に昨日今日でドラゴンの素材が手に入ったってことはないのじゃろ?」
「ああ、今日はこの紹介状とこっちの魔石で魔道具をなにか作ってもらおうかと。流石にドラゴンの素材なん……」
「ん? どうしたのじゃ?」
そういえば、欲しいと言っていたドラゴンの素材は、たしか漆黒竜と獄炎竜だったか。
一瞬、リーンもドラゴンだし、と思ったけど種族の指定があるから、たぶんその種族じゃないといけない何かがあるのだろう。
鱗はともかく、爪や角とかをリーンに欲しいとは流石に言えないな、と思いリーンの方を見ると、何か感じるものがあったのかビクッっとするが、ただその理由がわからないようでキョロキョロしだす。
まあ、それはともかく。
「いや、なんでもない」
紹介状と袋に入れられた魔石を渡すとライアさんは、ふむふむと紹介状を広げ、一通り目を通した後、袋から魔石を一つ取り出し、それを灯りに翳したり、どこからか取り出した拡大鏡のようなもので覗き込んだりした後で、頷くと良い笑顔をしてこちらを向いてきた。
「ふむ、なかなあ上質な魔石じゃ。Cランクぐらいかのう」
「Cランクか。Cランクってどのぐらい何だ?」
「そうじゃの。とりあえず、見たところ傷や欠けはなし。魔石自体が透き通っている。まあ、ジェリー種は偏食をすることが多いから、まあ、この種族の特徴じゃな。あとは、大きさかの」
「なるほど」
「さらに、この魔石の大きさは小さいが、もとの魔物がジェリー種ということは、一体から取れた、全ての魔石が揃っていれば大きさは問題にならないの。むしろ、色々利用できるから少し色が付くこともありそうじゃ」
「色々ってのは?」
「そうじゃの、例えば、長距離の通信用の魔道具や、ある時は一纏まりの武器、ある時は、分割して使う武器、みたいな変わり種の武器にも使われているようじゃの。まあ、要するに、魔石同士の波長が一致しているから、それぞれが引き合うような性質をしているようじゃの」
なるほど、単体の魔道具に使うよりも、複数の魔道具、それも連携して利用するような魔道具の方が向いているのか。
はてさて、どんな魔道具を作ってもらおうかな。
「で、お主はどんな魔道具を作ってほしいんじゃ?」
「そうだな、じゃあ、こんなは作れるか?」
俺は『倉庫』から筆記具を取り出すと、目的とする魔道具の動きを簡単な図と箇条書きとしてまとめてライアさんに見せる。
渡されたライアさんは、俺から紙をひったくると、紙に穴が空くぐらいの勢いでジックリと内容を読み始めてしまった。
「……ライアさんはこんな感じだから、後の予定を決め……」
「お主、面白いことを考えるの。久しぶりに腕がなるわい! とりあえずじゃな、明後日、いや明日にまた来てくれ。試作品を作っておく」
後の予定でも話し合おうとしたが、俺達が話し始める前に、あっという間に内容を読み終わったライアさんが割り込んできた。
あ、価格の話をしてない、けどまあ何とかなるだろう。
「……とりあえず、待っててもしょうがないから、出ようか」
「ですね」
ただ、ライアさんは捲し立てる勢いで言いたいことを言うと、奥に引っ込んでしまったので、俺達は顔を見合わせ、ため息を付くと、店を出ることにした。
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もう一話は間に合いませんでした。
来年も「異世界のイオリと伊織」をよろしくお願いします。
では、良いお年を!




