第五十八話 イオリと二人の探索者登録
「ここからが本題となります。報告というのは、この子達についてです」
「……お聞きします」
「それでですね、報告をといいつつ、実はすこし込み入った事情などがあって、あまり周りに話を広めたくないのですが」
「込み入った事情、ですか。……そうですね、では個室で伺いましょう。どうも、イオリ様達は厄介事に巻き込まれるようですので、今回もきっとそうなのでしょうね」
にっこりと、微笑みかけながら毒を吐かれたような気がする。
ケーネさんは手慣れた感じで受付の下から休憩中の札を出すと、どうぞこちらへ、と言いながら奥へと進み、俺達はケーネさんに遅れないように個室へと受付けの脇にある通路からその奥へと移動する。
「では、伺います」
「この子達を見つけた状況からお話します。まず、先に見つけたのは……」
俺は、その時の状況を、俺達に襲い掛かってきたことや魔法やスキルの状態、そして、“精神汚染”などを隠しつつ、ケーネさんに伝えた。
そして、ソフィーがカームラストダンジョンを拠点に活動してきたことや、探索者組合のカードをなくしているので再発行して欲しいことを伝えた。
ケーネさんは、再発行のために、登録時にも使った手の平に乗るぐらいの水晶玉、通称は『識別球』と読んでいるみたいだけど、その『識別球』で確認した後、カードの再発行のために部屋から出たが、やはり死亡扱いになっていたのか、かなり驚きながら部屋へ飛び込んできた。
「す、すいませんが、えっと…… その子、幽霊のたぐいじゃないですよね?」
「大丈夫です、ちゃんと生きていますよ?」
「あっ! すいません。大変失礼しました。それで、そちらの、ソフィーさん、で良いでしょうか」
「はい」
「残念ながら、組合間でやり取りしている共有情報上では死亡扱いになっているためにカードの再発行が出来ません」
「はい」
死亡扱いというところで、事前に分かっていたとは言え、あからさまに落ち込んでいるソフィーと、それを見て慌てるケーネさんと言う構図が出来上がる。
「わ、えっと、えっとですね。以前のカードは利用できなくなりますが、組合に再登録という形でカードを作り直すことが出来ます。ただ、以前のカードに関連付けていた実績や預けていたお金は戻ってきません。すいません」
「ん。あなたが謝ること、ない」
「はい。そう言っていいただけると、救われます。本当にごめんなさい」
「また、謝ってる」
なにやら、くすくすと笑いだしたソフィーとケーネさんを暫く見ていたい気もするけど、話が進まないので声を掛けて強制的に終了させる。
「ケーネさん。とりあえず次の話をしていいでしょうか?」
「あ、こ、これは失礼いたしました。はい、どうぞお願いします」
「こっちの、リーンの事についてですが……」
リーンについても、さっき大まかに伝えたが、今後の身の振り方として探索者に登録することと、俺達のパーティーにソフィーと共に入れたいことをケーネさんに伝え、手続きをお願いした。
ケーネさんは、見た目幼いリーンが探索者になるのを最初は若干渋っていたが、さすがに、この見た目で実は巨大なドラゴンですとか、わかんないよな、と思いつつ、あの手この手、というほどではないけど、俺達が説得した結果、渋々ながらも登録の手続きをしてくれた。
「とりあえず、問題なく登録できたな」
「うむ、妾は心配なぞしておらんじゃったがの」
「イオリ様、『倉庫』の中のものを買い取ってもらいましょう。そして、借金完済です」
ふんす、と鼻息が荒いフィーネに呆れ、どれだけ借金している状態が嫌だったんだ、と思いつつ、先程無事に探索者に登録し俺達のパーティーに加わった二人とともに買い取り窓口へと移動する。
「すいません。買い取りをお願いしたいのですが。あ、解体もお願いできますか?」
「ん? ああ、やっと来たか」
買い取り窓口に居たのは、力仕事が得意です、と全身で語っているよな感じの筋肉もりもりの大男だった。
「やっと?」
「ああ、何かと話題の『ストレンジャーズ』だろ?」
「まあ、そうですけど」
なにか、俺たちのことが組合内で話題になっているようだな。
とりあえず、気を取り直してっと。
「まあ、それはいい。で、量はどんだけだ?」
「えっと、結構量が有りますけど。ゴブリンが六十二体に、ゴブリンソルジャーが二十九体に、ゴブリンメイジが……」
「は?」
とりあえず、個数が知りたいということだったので、目の前に『倉庫』内の内訳を表示し、つらつらと読み上げる。
俺が使っている『倉庫』は、収納すると勝手に大まかな種類ごとに目録としてまとめてくれる便利な機能があるので、こういうようなときにもすぐに対応できる。
まあ、種族ごとにとか、ナイフならナイフなど、本当に大まかにまとめるだけなので、特別扱いしたいときには収納する時に、特徴など検索用の情報を記録しておく必要が有るので、すこし惜しい感じだ。
ただ、検索機能は充実しているので、細かく条件を絞ればすぐに見つかるし、必要であればその時に情報を追加するので、普段は特に何も考えずに『倉庫』へ色々な物を放り込んでいる。
「ま、まてまて。そんなに一度に言われてもわからん。というか、よくそんなにも覚えているもんだ。は〜、まあいい。えっと…… ああこれだ、これだ。とりあえず、これに解体が必要な魔物の種類と数、おっと、もし依頼を受けているなら必要な数を除いて書いてくれ」
「依頼は特に受けてないですね」
ごそごそと、受付の下から何かを探していたと思ったら、紙と筆記具を渡された。
渡された紙を見ると記入欄が表形式になっていて、一番の行は記入例のようになっていて説明がなくても分かりやすい。
表の一行ごとに、太枠で解体が必要な魔物の種類や個数の記入欄があり、個数の記入欄は何故か複数記入できるようになっているが、記入例を見るとどうやら、パーティー内で荷物持ちが複数居た場合、うちの場合は俺とソータがそれに当たるが、それぞれで記入するためのものらしい。
臨時のパーティーの場合には分前の計算の参考にしたりするようだ。
あとは備考欄と組合の職員が記入するためなのか太枠の欄外にも細い枠で記入欄が有った。
表の枠外は少しの余白になっていて、上部にある余白には穴が空いているけど、これは用紙をまとめるためなのだろうと思う。
こういう専用の用紙が有るってことは大量持ち込みがそれなりの頻度であるのかな。
「ああ、どのみち解体時に数えるから、個数や魔物の種類をごまかしても無駄だぞ」
「……えっと、それって、これに記入する必要はあるんですか?」
「ああ、あるぜ。色々理由は有るが、主な理由は二つだ。魔物によっては解体するのに広い場所が必要だったり、解体に特殊な道具が必要だったりするが、それらの調整が一つ。もう一つは、探索者自身のためだな。魔物によっては姿形が少し違うだけで極端にランクが上がるものも居たりするから、倒した魔物がなんであるかを正確に把握することは必要だ」
「なるほど」
用紙に『倉庫』の目録を見つつ、魔物の種類や個数を記入した俺は、紙をソータに渡し記入をしてもらう。
ソータが記入し終わった紙を受け取った俺は、記入漏れがないかもう一度確認し、問題ないようなので、それを大男、ジンさんと言うようだけど、そのジンさんへ返却する。
受け取ったジンさんは、記入された内容を見て驚いた顔をするが、流石に声を出すことまでは何とか我慢したようで表情をすぐに元に戻す。
「……これは、間違いないんだな?」
「ええ、もしかしたら数匹の誤差があるかもしれませんが間違いないと思います」
「は〜。誤差は普通にあり得るが…… まあいい。まったく、この量だと……」
俺達に少し待つように伝えると、愚痴のようなことを小声でつぶやきながら一旦窓口の奥へと引っ込む。
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