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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第五十五話 イオリと新しい仲間

「うわぁー。えげつないな」

「……ですね」

「しょうがないですね、イオリ様は」


 外野がうるさいが、それを無視して気絶しているトカゲの状態を『鑑定』で確認し、背中で眠っているこの子と同じように、闇魔法の『幸運減少』と『昏倒』、そして光魔法の『状態異常完全回復』を順番に掛けていく。

 しかし、毎回順番を間違えずに魔法を掛けるのも面倒くさいし、あとで組み合わせて新しい魔法を作ってみるか?


「お? 状態異常が回復したようだな。じゃあ『完全(dzose)回復(kupora)』だ」


 どうやら、さっき見つけた組み合わせで問題なく呪いも解けたようなので、体力などを回復させる。

 未だに『結界』で捕らえたままなので、たとえ暴れられても問題ない。

 ソータ達は一瞬驚いた表情をしたけど、『結界』に捕らえたままなのを思い出したのか、納得したようでうなずいている。


「……グリュ? ! ガゥ!?」

「おーい、気がついたか? こっちの言っていることが分かるか?」


 なんか、目が覚めたと思ったら、俺を見た後、まるで怯える子犬のように尻尾をお腹に抱える。

 これがこの世界のエンシェントドラゴンっていうならとんだ名前負けだ、って…… そうだったそうだった、『鑑定』でも幼体って書かれていたな。


「……ガゥガゥ。グギュ!」

「いや、何を言っているのかわからないぞ?」


 っと、ここは『言語理解補助』の出番か、と対象に目の前のトカゲの喋っている言葉を含めようとしたタイミングで、目の前が光りだす。

 これは何かの攻撃か、といきり立つが、どうやら早とちりだったようだ。


「……これで、伝わるじゃろうか?」

「たしかに、分かるが……。 まあ、いいか」


 一瞬呆気にとられた俺は悪くないと思う。

 そういえば『鑑定』で確認した時に『人化』ってスキルがあったな。

 目の前には、黒を基調として所々に金色で刺繍がしてある日本で言う所の着物のようなもの、ただし、丈が膝上までしかなかったりと少し違うが、そんな服装をした幼女が『結界』に閉じ込められた状態でペタンと地面に座り込んでいた。


「……じっと見てきて、なんだ?」

「決めたのじゃ!」

「はっ?」

「ぬし、妾の、リーンの婿になるのじゃ! む、そこのおのこも妾よりも強そうだの、ぬしでもよいのじゃ!」


 どうやら、油断していたらとんでもない爆弾を落としてきたようだ。


「イオリ様! ちょっと『結界』を、いえ、なんでもありません。私達でなんとかしますので」

「えっ? あっ、はい。ん? 私達?」

「あれ? イオリさんは?」

「……あそこだな」


 いつの間にか『結界』の前に移動したフィーネ達は、手でコンコンと軽く叩くと、二人して頷きあう。

 なんかすごい嫌な予感がするんだけど。


「あの二人の、この後の行動が予想できてしまうのですが。……えっと、あの結界って壊せるんですか?」

「どうだろう。普通の人には壊せないと思うけど、以前フィーネは同じような強度の『結界』を壊したことがあったような……」


 そんなことをソータと話していると、せーの、と声がした後、決して女性が出してはいけないような声がした。

 そして、その直後にガラスが割れるような澄んだ音、その後に『結界』がそれは綺麗に消し飛んだ。

 もちろん、対物理、対魔法両方共に、だ。


「うーん、もっと強度を出しておくべきだったか?」

「えっと、そういう話ではないような? あっ、あのドラゴンを捕まえてこっちに着ますよ?」


 巨大トカゲ改めリーンはじたばたと暴れているようだが、フィーネ達女性二人は物ともせずにこちらに半ば引きずり連れてくる。


「おぬしら離すのじゃ! 離すのじゃ! こうなれば変化(へんげ)を解いて…… !? な、なぜじゃ? 変化(へんげ)が解けぬぞ」

「イオリ様、少しお時間をいただきたいのですが」

「ソータも少し待っててくれ、このドラゴンにうちらがちょっと教育をしてくるぜ」

「……ああ」

「は、はい。どうぞ、どうぞ」


 なにか鬼気迫る感じで、口を挟むのは躊躇われる。

 いや違うな、口を挟むとこちらにまで飛び火しそうだから、なんとかは危うきに近寄らず、だ。

 ソータも、同じように考えたのか、特に反対はないようだ。


「フィーネは相変わらず、独占欲と言うかが強いなぁ。もうちょっと余裕があってもいいのに」

「イオリさんの方は、前からかなりグイグイと来てましたからね。僕がこの世界に来たのもイオリさんに連れられて、と言った感じなので」

「ソータの方は、それでいいのか?」

「ええ、まあ」

「フィーネの方も、思えばフィーネのほうが積極的だったな。あとは、この世界、知り合いが最初は俺ぐらいだったから、なおさらかもしれないな」


 ソータと、色々話していたところ、いつの間にかフィーネ達が戻ってきている気配を感じて振り返ると、思わず目が点になる。


「お待たせいたしました」

「……一体何をやったん、いや、何でもない」

「迂闊ですよ、イオリくん」

「ん? なんか言ったか?」

「……」


 リーンを見ると、先程の威勢は何だったのかと思えるような感じで、両手は前でぎゅっと握り、ぷるぷると肩を震わせて、もう今すぐにでも泣き出しそうな雰囲気だった。


「……ひっぐ、ひっぐ。うゎーん」


 いや、泣き出した。

 そして、泣きながら俺の方へと駆けて来て、俺のそばでくるっと回ると俺の足にしっかと抱きつき、ぷるぷると震えている。

 ただし、完全には隠れておらず、俺の足の横から少しだけ顔を出して目の前のフィーネやアイツをじっと見ている。


「ひどいのじゃ、ひどいのじゃ。あのオバ、ひっ! あ、あのおなごたちが、妾を(いじ)めるのじゃ」

「むっ!」

「なっ! ……これはちょっと教育が足らないようですね」

「だな」


 ちょっと、俺を挟んで睨み合うのはやめてほしいな。

 ソータも二人を見て呆れ、そして(ほお)を掴み引っ引っ張りながら説教を始めた。

 俺もソータに(なら)うとしよう。


「ていっ!」

「っ! 痛いです。イオリ様」

「ちょっとやりすぎだ、フィーネ。相手がたとえドラゴンでも子供にやることじゃないだろ?」

「うー、はい。すいません」


 アイツはアイツでソータに怒られている。

 フィーネは、視線を合わせるために腰を落とすと、頭を撫でながら俺の後ろに居たリーンに謝っている。


「ごめんなさい。少しやりすぎてしましました」

「うー、わかったのじゃ。あのおのこをくれるならゆる、いひゃい。なにをするのじゃ」

「イオリ様は、ものではありません。あと、誰にも渡しません!」


 いやいや、フィーネも俺の扱いは似たようなものじゃないか?

 まあいいや。

 アイツの方もリーンに謝って、やはり同じようなやり取りをしている。

 フィーネ達もフィーネ達だけど、リーンもリーンで懲りないな。


「……とりあえず、だ。リーンはどうしたい? このダンジョンの魔物ってわけじゃないんだろ?」

「む、そうじゃ。妾は、気がついたらここに居たのじゃ。帰りとーても、帰る場所もわからん。おぬしら、暫く養ってもらえぬじゃろうか」


 すこし俯きながらも、しっかりと言葉で伝えてくる。


「だ、そうだけど、フィーネたちはどうしたい?」

「うーん、私は特に反対はないです」

「うちも、別に一人増えようが二人増えようが問題ないぞ」

「ソータは?」

「問題ないと僕も思います。ここまで来るのに、ダンジョンの魔物を結構な量を狩ってますから、保護期間の天引き分も何とかなるんじゃないでしょうか?」

「ああ、たしかにそんなのがあったな。俺も問題ないと思う。というわけだ、ようこそ、俺達のパーティーに」

「っ! ありがとうなのじゃ!」


 ぱーっと、まるで花が咲いたように、顔を上げて笑顔になると、そのまま俺に抱きついてきた。

 まあ、本来の姿はドラゴンとは言え、今の仕草は年相応の幼い子供だな。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿も一週間以内の予定です。


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