第五十四話 イオリと操られた古竜
ボス部屋に向かって進むと決めた途端、フィーネが勢い良く立ち上がったので、膝枕されていたこの子は、膝からころんと転がり地面とぶつかりそうだったので慌てて抱き上げる。
さすがに、状態異常が解けて敵対もしていないのに、雑な扱いはできないしな。
フィーネは、事が戦闘周りになると周りが見えなくなることが結構有るから、もうしょうがないとしか言えない。
「ところで、この子どうしよう?」
「まあ、僕達がなんとかするしかないでしょうね」
「はぁ。まあ、とりあえず、俺が背負うから、一応周囲の警戒は任せたぞ」
「分かりました。疲れたら交代しますね」
「まあ、大丈夫だろ。この子、軽いし、ボス部屋もそこまで遠くじゃないと思うしな」
と、ソータと話していたら、フィーネ達がこちらを見て、早く早くと催促していたので、フィーネの膝から転げても目を覚まさずくーくーと寝息を立てているこの子を背負い、立ち上がった俺たちをみて先を進み始めた二人を追いかけ、俺たちも進み始める。
さて、それほど距離は離れていなかったとはいえ、あっという間にボス部屋までやってきた訳だけど、結局、いや、もはや必然と言うべきかもしれないが、ボス部屋までの道のりは前を行くフィーネとアイツが出会う魔物という魔物を殲滅して進んで行くので問題が起こる前に解決してしまったので、そもそも問題にすらなっていなかった。
ボス部屋周辺には、他の探索者も含めた気配すら感じられないが、部屋の中からは何かしらの気配が感じられる。
まあ、ボス部屋の扉が開いていて中から気配がするということは、普通に考えたらボスがいる以外にないとは思う。
「とりあえず、ボスをさっさと倒して報告しよう」
「んじゃあ、早い者勝ちということで!」
「えっ?! あっ! イオリさん、卑怯ですよ!」
早い者勝ち、と口に出した瞬間に、懲りずに駆け出して行くアイツに引きずられ、なったフィーネも少し遅れながらもボス部屋へと入っていく。
それを見て、俺達も慌てて中に入るが、先に入ったフィーネ達が立ち止まりやや上を見ているのに気が付き首を捻る。
「何やってるんだ?」
「さー」
「おーい、さっさとボス倒さないのか?」
「……えっと、それがですね。どうやら出たみたいです」
「でた? 何が?」
「ドラゴンだよ、ドラゴン。あっ、でもちょっと違うのか?」
ドラゴン、と聞いて、首を捻り、前を向いて頷く。
うん、たしかにドラゴンみたいだけど、アイツの言うとおり何か辺だ。
魔物の種類がというよりも、魔物の状態が、という意味でだけど。
「これ、たしかにドラゴンですけど、エンシェントドラゴンの幼体みたいですね」
ソータのお陰で目の前の魔物の正体がわかったところで、どうやらこちらを敵と認定したようで、幼体とは思えない貫禄でもってギロッと睨まれた。
「キ゛ァ゛オ゛ー」
……そして、スキルか何かを使って威嚇してきたようだけど俺達四人には誰一人と効かなかったようだ。
そうそう、今のうちに『鑑定』っと。
長さ
フィト:約0.3メートル、おおよそ1フィトが肘から手を握った状態での先ぐらい
トーフィ:フィトの千倍
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名称:エンシェントドラゴン
固有名:リーン
種別:魔物
状態:精神汚染(操り人形:呪い)
関係性:敵対
全長:40フィト
体重:20ルトエ
脅威:パーティー討伐A級、ソロ討伐SS級
概要:ダンジョン内部では深層に分布する。地上では高山帯に生息するが竜人に似た姿に変化し地上で隠れて生息している場合も有る。
詳細:
エンシェントドラゴンは竜種の中でも上位種と位置づけられる。
体長は幼体が40フィト前後で、成体が90フィト前後となるが、数千年単位で生きている個体は150フィト前後となる場合が有る。
背中に一組の羽を持つが姿勢を保つ程度にしか利用しておらず基本的には体内の豊富な魔力を使い飛行を行う。
幼体も含めこの種は高い知能を持ち確立した自我を持っているために、他の種族に対しては非干渉で中立を保っているが、まれに縄張り内の生き物に対して契約を結び庇護することもある。
ただし、幼体や庇護されているものに対して敵意が向いた場合は苛烈に反撃を加えることが確認されている。
竜種は体内で魔力を生み出す魔石の出力が大きく他の種族に比べ魔法が得意だが、エンシェントドラゴンは他の竜種に比べ利用する魔法の属性が片寄ることなく全ての属性の魔法を高い知能もあり高い練度で使うことが出来る。
加護:『エンシェントドラゴンロードの庇護』
スキル:『古竜の咆哮』『飛行(利用不可:封印状態)』『人化』
魔法:『ウインドーカッター(利用不可:封印状態)』『ウインドーシールド(利用不可:封印状態)』『マッドボール(利用不可:封印状態)』『ファイヤーアアロー』『ファイヤーウォール』『ウォーターボール(利用不可:封印状態)』『ウオーターアロー』『サンダーストーム』『フレイムランス(利用不可:封印状態)』『メタルレイン(利用不可:封印状態)』『アイスニードル(利用不可:封印状態)』
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なるほど、どうやらこのエンシェントドラゴンも呪いやら、魔法やスキルの封印がされているようだ。
ただまあ、そうは言っても、ドラゴン自体の基礎体力や『古竜の咆哮』などの一部のs魔法やスキルは使えるので、この階層をメインにしている探索者にとっては悪夢には違いないと思う。
思わず『鑑定』してしまったけど、なんか最近、使う頻度が上がっているような気がする。
と、悠長に結果を確認していたところで、背中のこの子の様子がおかしいことに気が付いた。
どうも、さすがにドラゴンだけあったようで、俺の背中で気絶するように眠っているはずのこの子には先程のスキルでの『古竜の咆哮』は効いたようでガチガチと歯を鳴らし始め、俺のすぐ横に見える顔の色も悪いようだ。
状態を確認すると、恐慌と集中力低下、そして戦意喪失と、状態異常のオンパレードになっていたので『状態異常完全回復』を掛けてやると、すぐにクークーと規則正しい寝息立て始めた。
ちなみに『完全回復』を掛けると、大丈夫とは思うけど目が醒めてしまうかもしれないのでやめておいた。
さっきの状態異常になった状態で目が醒めていると言うのはさすがに結構辛いと思う。
これは、エンシェントドラゴンの幼体、いや、もう巨大なトカゲでいいや。
たとえ操られているとしても、このトカゲにはやったことに責任を取ってもらわないとな。
「……とりあえず、あのトカゲは、俺が倒してもいいか?」
「えっ? ……はい、どうぞ」
「……なにか、その子にありました?」
「ああ、さっき、あのトカゲが放ったスキルでちょっとな」
うーん、しかし、倒すとは言ってもあの巨体だし中途半端に攻撃して暴れられても困るよな。
とりあえず、『結界』で囲って水攻めにしてみるか。
「よし、まずは対物理と対魔法の『結界』でっと」
目の前の巨大なトカゲは、なにか魔法か何かを放つために溜めを作っていたようが、俺は関係ないとばかりに『結界』で囲む。
対魔法は念のためだけど、対物理はこれから殺ることに、おっと間違えた、やる事には絶対必要だ。
そして、目の前のトカゲから吐き出される前に、別の魔法を使う。
「仕上げは『水球』、だな」
水系統の初級魔法であるところの『水球』も、予想通り、どうやら予想した通りに威力が大幅に上がっているようで、『結界』で囲った中を僅かな時間を使い水で満す。
巨大なトカゲはと言うと、囲われたことに一瞬動揺し魔法が失敗、そして、目の前に現れた水球がみるみる間に大きくなる様子に呆気にとられ、次の行動に移す前に『結界』内が水で満たされ、そのまま満たされた状態でさらに『水球』によって発生する水が追加されたことで、水圧が掛かり肺の中の空気が強制的に吐き出される。
その結果として、もがき苦しんだ後で、最終的に結界にもたれ掛かる様な状態で気絶した。
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