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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第五十二話 イオリと怪我人の秘密

 肩まである銀色の毛並みも、手入れをしたら触り心地が良さそうだし、いまは元気なく垂れ気味で頭についている狼耳も撫でたらすごそうだな。

 ただ、基本動物は耳に触れられるのを極端に嫌がるというし、獣人種も同じかもしれない。

 と、益体もないことを考えていたら、まつ毛がピクピクと動き、しばらくするとクリクリと可愛らしい眼がパッチリと開いた。

 瞳の色は青色だな。

 そういえば、この世界では瞳の色で差別されることはあるのだろうか?


「とりあえず、おはよう。怪我は治したけど、そのほかにどこか調子の悪いところはないか?」

「ん? えっと、おはようーございます?」


 どうやら、まだ、ぼんやりとしているようで首を傾げつつ挨拶を返してくる。

 声も若干幼く、少し話し方も舌足らずな感じなので、やはりまだ成人していないのかもしれない。

 どうやら、倒れていたのは、くりくり(まなこ)が可愛らしい狼獣人の少女だったようだ。

 と、あれ?

 瞳の色が、緋色(・・)と青色がぐるぐると混ざったような状態に変わってい……


「ぐっ!」


 瞳の色が変わっていることに気が付いた次の瞬間には、後方の壁に叩きつけられていた。

 一瞬何が起こったか分からずに隙を見せてしまったが、そんな状態でも半ば自動的に強敵に対する対応がなされていく。


「イオリ様!」

「なっ!」


 フィーネたちの悲鳴が聞こえるが今はそれに反応している余裕は残念ながら、ない。

 叩きつけられた瞬間に意識の加速が始まったようで、緋色(・・)の目をした魔狼が鋭利な爪を装備した右前足で俺を切り裂こうと上にから下へと、ゆっくりゆっくりとそして確実に目の前まで迫っているのが目に映る。

 壁に叩きつけられた時のダメージはというと、どうやら『替玉人形』の効果が未だに切れていなかったようで、俺が受けるはずだったダメージを肩代わりしてくれたようだ。

 ただ、ダメージをもう一度受けると効果が切れてしまうかもしれないな。

 さて、目下の所の問題は、目の前の前足さんだな。

 今の俺の状態なら、迫ってきている前足を切り飛ばすことも簡単に出来るとは思うけど、少し気になることがあるから『昏倒』で気絶させて動けなくしよう。


「グ、ガッ!」


 とりあえず気絶させるも、目の前に迫っていた前足での攻撃はさすがに防御が間に合わなかったが『替玉人形』で、今回もダメージなしだ。

 ただ、さすがにかなりのダメージを肩代わりしたためか、ガラスが割れるような音が聞こえ『替玉人形』の効果が消える。


「イ、イオリ様? だ、大丈夫でしょうか?」

「ちょっと、かなりざっくりといったと…… あれ? なんともなさそうですね」

「さすがに丈夫だな。うちも感心するぜ」

「いやいや、丈夫とかではなくて、怪我がないのは『替玉人形』が攻撃によって受けるダメージを肩代わりしてくれたのが理由だからな?」


 まあ、ともかくこの魔狼はどうしよう、と下に目を向けると、気絶し転がっているはずの魔狼が居らず、代わりに先ほど座り込んでいた探索者が、先程よりもボロボロの状態で倒れているのが目に映る。

 一瞬、今までどこに居たんだこの子は、とか、何でさっきよりもボロボロに、とか思ったけど、狼耳を見て気が付いた。


「うーん、もしかしてこの倒れている探索者がさっき俺に襲い掛かってきた魔浪の正体なのか?」

「えっ? そうなのですか? だとすると、許せません! お仕置きをしなければ!」


 なんか、フィーネが黒いフィーネへと進化しそうだったので宥めて落ち着かせる。


「この探索者ですが、どうしましょう? とりあえず縛っておかないとまた襲ってきたら危ないですよね」

「だな。でも何でアンタを襲ってきたんだろうな」


 ふーむ、縛って動けなくするのは決定事項として、目が覚めた直後は特に敵意はなかったような気がしたんだけど、その後にいきなり変身して襲ってきたのは何故か、が目下の所の問題だな。

 そういえば、瞳の色も青色から変な色に変わっていたけどそれも関連が有るのだろうか?


「よし! これで自由には動けないと思います」

「えっと。とりあえずだな、ソータ。なんで、重しの付いた腕輪や足輪を持っているのか突っ込まないほうがいいか?」

「特に深い意味はないですよ?」


 笑顔でソータはそう答えてくるが、その笑顔が逆に聞きづらい。

 まあ、俺達に影響がなければ別にいいか。

 おっと、とりあえず『鑑定』してみるか。


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名前:ソフィー

性別:女性

種族:狼系獣人種デミフェンリルヒューマン

年齢:14歳

称号:なし

状態:重傷・気絶・精神汚染(操り人形:呪い)

ステータス:

体力:17/100

魔力:0/30(利用不可:封印状態)

魔法:『ファイヤーボール(利用不可:封印状態)』『咆哮(利用不可:封印状態)』

スキル:『獣化』『神狼化(利用不可:封印状態)』『身体強化(利用不可:封印状態)』『身体機能全力全開(強制付与)』『痛覚無効(強制付与)』

加護:『フェンリルの導き(利用不可:封印状態)』

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 ふーん、魔狼みたいになったのは、たぶん『獣化』のスキルが原因だな。

 フィーネの世界でも同じ名前のスキルを持っていると自身の系統に連なる獣の姿を取ることが出来るらしい。

 ちなみに、『獣化』を使うと、服は不思議な効果で何処かに収納され、解除されるともとの状態になるそうだ。

 俺としては、『獣化』の効果で服が仕舞われるのではなくて、同じ魂を持つ体がスキルで入れ替わっている説が正解じゃないかと、勝手に思っている。

 それはさておき、スキルの欄などに書かれている、“封印状態”や“強制付与”ってのは何なんだろう、何となく嫌な感じがする。

 状態の欄には、まず、大怪我をしているために重傷と、そして、俺が『昏倒』を使ったために気絶と書かれているのは分かるが、それ以外にも精神汚染と書かれている。

 もしかしたら、俺に襲い掛かってきたのはこれが原因なのかもしれない。


「とりあえず、『鑑定』で見てみたけど、色々と気になる無いようがあった」

「気になる、とは? どのような内容なのでしょう、イオリ様?」

「ああ、とりあえず、コイツはスキルや魔法、加護を何個か持っているようだけど、ほとんど“封印状態”と書かれて使えなくなっているみたいだな。あと、魔狼のように変身したのは獣化のスキルだと思う」


 とりあえず『鑑定』で確認できた内容は他の人には確認出来ないのでフィーネ達に伝える。

 ソータは少し考える仕草をした後、一度頷くと話し始める。


「……なるほど、“封印状態”ですか。以前に眉唾ものの噂程度ですが、魔法や呪いなどで相手の魂を縛りスキルなどを制限する方法があると聞いたことがあります」

「ああ、あれか。でも、うちが聞いた話だと、あれって能力を制限できても一時的で、しかも回復魔法を使えば制限が解除されるって話もあって、結局は拘束系の魔法なんじゃないかって話で有耶無耶になったんじゃなかったっけ?」

「へー、俺達が居た世界ではそんな話は聞いたことなかったな。おっと、後は、『身体機能全力全開』や『痛覚無効』ってスキルに“強制付与”って書かれているけど、こっちも何か知ってるか?」

「うーん、スキル名も“強制付与”というのも聞いたことないですね。スキルの方は名前からすると筋力とか体力とかその辺りに関係するのかもしれないですね。『痛覚無効』なんて名前が付いたスキルからは不穏な感じしかしませんね。“強制付与”の方は、誰かからスキルを押し付けられたってことでしょうか? でも、スキルを他人が与えられるなんて聞いたことないですね」


 あと気になるのは、状態の欄に精神汚染と呪いと書かれている部分か。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿も一週間以内の予定です。


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