表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
51/107

第五十一話 イオリと見張りと襲撃

 ゆさゆさと、誰かに揺り動かされ意識が覚醒する。

 まあ、誰かも何も、フィーネとソータとアイツの三通りしか無いのだけれど。


「……様、イオリ様。交代の時間ですよ」

「んぁ? ふぁーぁ。ああ、よく寝た。おはよう、フィーネ。ソータは?」

「ソータさんは、この後に起こすところです」

「了解。じゃあ、俺が起こしておくから、アイツに伝えておいてくれ」

「分かりました」


 俺はソータを起こし、見張りをフィーネ達と交代する。

 どうやら、女性陣は色々と話が盛り上がったようで、なぜか肌がつやつやしているような感じがする。

 あいつら、話が盛り上がったのは良いけど、目が冴えて…… とかにならずに、ちゃんと寝られるのかな?

 まあ、それならそれで自業自得だし、寝られないようだったら魔法で強制睡眠だな。


「どうだ? 先からずっと唸ってるけど、使えそうか?」


 どうやらソータは、見張りの時間を『編集モード』を使いこなすための時間に当てることにしたようだ。


「何が何やらよく分からないです。イオリくんは、よくこれを理解できますね」

「まあ、ソータが今見ているものと俺が見ているものは多分違うと思うから、頑張れとしか言えないな」


 若干冷たいようだけど、実際問題として、その辺りの人それぞれで『編集モード』の中の記述が違うという問題が多少なりとも改善できれば習得のし易さが何段階か下がるとは思うんだけど、なかなかどうして世の中うまくはいかないもんだ。

 未だにソータは『編集モード』を思うように使えずに頭を抱えているが、流石に『編集モード』へ入る方法を知ってから数時間で完璧に使いこなせるようになったとしたら、それはそれで驚くべきことだろうと思う。

 そんなことになったらもはや、その才能に嫉妬する、なんて状態を通り越して、俺が持っていた自信がポッキリと折れてしまいそうだから勘弁して欲しいな。

 あっ、でも、この『編集モード』に関する様々な問題をスパッと解決してくれるのであれば、特に名誉欲なんてものもないし、それに乗るのも悪くないな。

 そんなソータを横目で見つつ俺は何をやっていたかと言うと、周囲の警戒や魔道具にしたい魔法のアイデアや既存の魔法の改良のアイデアを考え、そして時々ソータの質問に答え、見張りの時間を過ごしていた。

 そういえば、組合の資料室には探索者のための資料として本の体裁を取ったものは有ったけど、冒険譚や恋愛物語などの娯楽としての本はあったりするのだろうか?


「ん?」

「? どうかしましたか? あ、そろそろ朝でしょうか? イオリさん達を起こさないといけないですね」


 周囲を警戒していた所、一瞬反応があった気がしたんだけどな。

 俺のつぶやきで、ソータは集中し長時間同じ姿勢だったので体が凝り固まっている事に気がついたのか、うーん、と背伸びをして周囲を見回している。

 少なくとも座っている位置から、この広場を出た少し外ぐらいまでは俺の警戒範囲になっているが今は特に異常はないようだな。

 俺の気のせいか?

 と、一瞬気を緩めた瞬間に、ドンッと言う音がしそうなぐらい大きく結界の一部がうねる。

 続けて数回ほど結界に大きな反応があったが、しばらくすると攻撃を加えていた魔物らしき物の気配が消える。

 今さっきの襲撃では結界の一番外側の層も突破されて居ないようだ。

 俺が張っているこの結界は、対物理、対魔力、対神力、そしてそれぞれの組み合わせ、の七層構造になっていて、それぞれの層ですらこの階層の魔物では全く歯が立たないぐらいの防御力を持っているはずだ。

 層を組み合わせているのは、武器に魔法で属性を付与することで組み合わせて攻撃する方法があったためだ。

 そして、それぞれの層は相応の防御力を持っているが、負荷が高くなり貫通しそうな場合は攻撃が集中している部分に防御を集め抵抗や反撃をしようとする。

 この状態は複数箇所に同じような強さの攻撃が有った場合には破綻してしまうので、防げるとしてもある程度までだ。

 まあ、つまりは今さっきの結界のうねりは、今の階層の魔物の強さの想定が甘かったか、昼間に組合へ報告したアシッドジェリーのように、本来この階層にいない魔物が出てきたか、のどちらかだろう。

 で、後者だとすると、現状は情報が少なすぎて何もできないが、このダンジョンで何か変わったことが起きようとしているのかもしれない。


「んー? なんか今さっき結界が攻撃されたみたいだ。けど、結界を突破できずに引き上げたのか、周囲に特に反応はないな」

「攻撃ですか? 相手は? えっと、この階層でイオリくんの結界を突破できそうな魔物は居なかったと思うのですが」

「そこそこ気合を入れたので大丈夫だと思ったんだけどな。流石に一点突破されると不味いかな。もうちょっと気合を入れて強化してみるか」

「あっ、僕も合わせて警戒用の魔法を設置しておきますね」

「ああ、分かった」


 現状、野営の陣地の防御を俺に任せきりという状態に今更ながら気がついたのか、ソータは設置型の周囲警戒魔法を結界の周辺に掛けて回っている。

 さてと、俺も結界の強度を上げて万全の状態にしておかなくては。


「ふぅ。さすがにこれはやり過ぎたかな」

「えっと、イオリくん? このとんでもない状態の結界は一体全体どんな魔物を想定しているのですか?」

「いや、ドラゴンとか? ま、まあ、ちょっと頑張りすぎた感じはする」

「…… まあ、魔力が空っぽでどうにもならない状態に、とかでなければ、安全なのは間違いないので問題ないのですが、大丈夫ですよね?」


 今結界を作るのに使ったのは。俺の魔力の数パーセントも使っていないので、まあ問題ないだろう。

 そもそも、貼り直した結界が破られるのであれば、貼り直すよりも打って出た方が勝算としては高いんじゃないかな。


「ああ、全く問題ないな」

「そうですか」


 ともかくとして、さっきの攻撃についての考察だ。


「姿形は俺が見逃しそうになるぐらいの速さだったけど、どうやら魔狼種みたいだ。ただ、この階層にいる魔狼種で、あれだけ素早くて、しかも俺の結界が揺らぐぐらいの攻撃力を持っている魔物なんて居たんだろうか」

「うーん、居なかったと思いますけどね。ただ、今日のアシッドジェリーみたいな例が有あるので、全く無いと考えるのは早計ですね」

「たしかにな」


 一回襲撃しただけで諦めて撤退していったのも気になるといえば気になる。

 朝にはもう少し早いということで、このまま警戒をしていたけど、結局はフィーネ達を起こすまでに二度目の襲撃が来ることは無かった。


「うーん? 結局、何だったんでしょうか?」

「さー?」

「まあ、とりあえず情報が少ないですし、気にしても仕方がないです」

「だな。さっさと次の階層に行こうぜ」


 とりあえず、頭の片隅に入れつつも気にしないことにして、まずはこの階層のボスの部屋を目指すことにした。

 広場を出て暫く進んだところで、壁に寄りかかり座り込んでいる探索者が居ることに気がついた。

 体付きは小柄なので、もしかしたら成人すらしていないのかもしれないが、ライアさんのような例もあるので、そこは触れないでおこう。

 身につけている衣服や布製の防具はボロボロで、見えている限りの体中にも擦り傷や焼け焦げた痕、そして血管が切れたようにじくじくと血が染み出しており痛々しい。

 たしか、この辺りには昨日は人が居なかったはずなのに、いつの間に此処に来たのだろう?

 まあ、広場からだと警戒範囲からは少し外れているから俺も気が付かなかったんだろう。


「どうしようか?」

「うーん、呼吸は有るみたいですが、反応がないので気を失っていのかもしれません。あと、結構傷だらけですね」


 まあ、助けを求められたわけじゃないけど、ここで見過ごすのもあとで後悔しそうだから、傷を治して起こすかな。


「とりあえず、『完全(dzose)回復(kupora)』で。よし。身体中に付いている傷や消耗していた体力は、これで治ったと思うからじきに目をさますと思う」

「さすがです、イオリ様」


ここまでお読みいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマークを頂けると励みになります。


次の投稿も一週間以内の予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ