第五十話 イオリと見張りの順番
「さてと。ソータ、今日は諦めてそろそろ寝ないか?」
「うーん、もうちょっと。もうちょっとで何か掴めそうなので、待って頂けないでしょうか」
ダメだこりゃ。
さっきから、もうちょっと、もうちょっと、と伸ばすこと数回、時間的にも深夜になると思うので、強制的に切り上げさせる。
洞窟の中だから、今が何時ごろなのか、おおよその時間しかわからないのが辛いな。
「てりゃ!」
「わひゃ! っ! イテテ、何するんですか、イオリくん」
「とりあえず今日は終了だ。根を詰めてもしょうがないぞ? 一旦中断して見張りの順番を決めよう。見張りの最中にでもまたやればいいさ」
「ふー。たしかに、傍から見ると、僕は面白そうなおもちゃを貰っていつまでも遊んでいようとする子供みたいでしたね……。分かりました」
「まあ、おもちゃというのは当たらずとも遠からず、かな」
さっきからこちらをチラチラと見ながら二人で話していたけど、いい加減に待ちくたびれていたフィーネ達に声を掛け見張りの順番を決める。
「とりあえず、二人一組でいいよな。それで、組み合わせをどうするかだけど」
「はい! はいっ! うち、フィーネと組みたい!」
「ん? まあ、フィーネやソータが問題ないならいいけど。てっきり、ソータと組むもんだと思ってたんだけど」
「まあ、それも悪くないけど。もっとフィーネと話しをしたいしな」
「それもって…… まあ、僕も問題ないです」
「私も構いません。もっとイオリさんとお話したいですですしね」
「じゃあ、俺とソータで組むとして、あとは見張りの順番か」
順番はともかく、途中の交代の時間をどうやって計るかだけど、そういえばと『倉庫』の中を思い出してみるけど、砂時計みたいなのは持ってなかったはずだし、どうしようかな。
もしかしたら『ミンティアナの雑貨屋』で探せばあったのかもしれないけど、あの時は思い付かなかったから、そもそもの話しで、売っているかどうかすら確認もしていなかった。
「えっと、順番は……」
「こういうので決めるのはどうでしょうか?」
さて、まずは順番をどうやって決めようかと思っていると、ソータが『アイテムボックス』からカラフルに色分けされたルーレットのような円盤を取り出し、それを俺達の目の前に置いた。
円盤の中央に指で回せるような突起が付いていて、それを回すと一緒に針も回るようで、どの場所で止まるかを予め決めておくことで見張りの順番を決めるようだ。
「僕が出したこの道具は、『審判神の回転板』って言って、中央のつまみをもってぐるっと回すと…… こんな感じに止まったところが分かる、まあ見ての通りの魔道具です。あとは、つまみが回ったあとに回転を加速する機能も持っていて止まる場所を操作できないようになっているんですよ」
「へー、なるほど。便利そうだな」
「色は分かるのですが、円周に沿って、えっと、一、二、……」
「色は七色で非均等に塗り分けられていて、マスの方は三十六等分されてそれぞれに数字が書かれています。なので、色々と利用できて便利なので僕はよく使っています」
色が非均等に分かれているのは何か意味が有るのだろうか。
ちょっと、使うような場面が想像できないな。
「えっ? この書かれている文字は数字なのですか?」
「うちには一から三十六までの数字が書かれているように見えるけど違うのか、ソータ?」
「いえ、イオリさんの言ったとおりですけど?」
あれ、漢数字みたいなものが書かれているかもと思ったけど、もしかしてアイツらの世界の数字が書かれているだけなのか?
そうだ、『言語理解補助』の加護を使ってみればいいのか。
フィーネも加護のことを思い出したのか、何かを考える仕草をした後、もう一度『審判神の回転板』を見て頷いている。
「……なるほど。たしかに数字だ。てっきり、この世界で買ったものだと思ってたから気が付かなかった」
「そういうことですか。たしかに、これは僕らが居た世界で購入して『アイテムボックス』に入れておいたものです」
「ん? うちにも分かるように言ってくれ」
「つまりは、こういうことだな」
俺は『倉庫』から、前の世界で手に入れた地図を取り出す。
これは、出発時に渡されたフィーネの父親が王として治めている王国内の地図で、軍の機密情報は含まれていないが、それ以外はほぼ全てが載っていると言っても良い詳細な地図だ。
「っと、これとか、これは読めるか?」
「うちがか? んっと、『ラメルシ』だろ、それに『ニボルト』だな」
「……そうか、ソータ達のは俺達のとは違ってどんな文字も加護の対象にしているのか。それはそれで便利だな。えっとだな、ソータ、その加護か何かって一時的に止められないのか?」
「えっと、加護と言うと『言語理解』の加護のことでしょうか? 止められますよ」
「じゃあ、止めた状態でこれを見てくれ」
「これですか……。読めないですね。なるほど。僕の知っている文字ではないようです。これがイオリくん達が居た世界の文字ですか」
「まあ、そういうことだ」
「なるほど?」
「イオリさん、つまりですね――」
ソータが、いまいち理解できていない様子のアイツに丁寧に説明をしている。
たしかに、コミュニケーションを取るための加護は、どんな国や地方、もしかしたら異世界の言葉や文字が常に理解できたほうが便利だと思う。
ただ、何らかの理由で加護が失われたら、読み書きや会話も全て出来なくなるから、そういう所は怖いな。
あとは、潜入とかでは、本来読めないはずのものが読めたりすると目立つし不味いから、そういう方向ではあまり向いていないあもしれないな。
まあ、俺やフィーネが持っている『言語理解補助』の加護の方は、名称に補助と含まれているだけあって、対象の言葉などの習得を補助することができる。
そういうわけなので、加護の対象者が意図しない言葉や文字に対しては加護の効果は及ばないので、区別がつくのだけど、そもそもの話で潜入とかの活動をすることはないから関係ない話だ。
「まあ、それはともかくだ。これを使ってどう分けるんだ?」
「そうですね。では、偶数だったら僕達、奇数だったらイオリさん達が先に見張りということにしましょう」
「わかった。フィーネ達もそれでいいか?」
「はい」
「大丈夫だぜ」
では、と言いながらソータは中央の摘みを掴み軽く回すと、ソータが回した勢い以上に回転が付いて回り始める。
しばらく針は回転すると、だんだんと勢いは落ち、最終的に二十三と書かれた黄色のマス目で止まり、枠が光る。
枠は、光っている箇所と消えている箇所が繰り返し連なっていて、一方向にぐるぐると、まるで縞模様の蛇が移動するように見える。
「えっと、二十三なので、奇数ですから、見張りはイオリさん達が先ということですね」
「了解したぜ。えっと、交代の時間は……」
「イオリさん、『アラート』を使いましょう。そうですね。五刻ぐらいでお願いします」
「おお。そうだそうだ。『アラート』があった。よし、設定できた」
ほうほう、『アラート』って魔法かスキルが有るのか?
ソータ達の扱いからすると、一定時間が経つと知らせてくれるんだろうか。
「とりあえず、俺達は寝るか。何かあれば叩き起こしてくれ」
「僕もそのようにお願いします。イオリさん、フィーネさん。おやすみなさい」
おっと、忘れずに『替玉人形』を掛けておこう。
これを掛けているのと掛けていないのだと安心感が違う、主に俺の。
フィーネはいつも笑って過保護だ、と言うけど、まあ、保険のようなものだからな。
「忘れるところだった。『替玉人形』っと」
「ん? その魔法はなんだ?」
「ああ、この魔法はある程度までのダメージを肩代わりしてくれる魔法だ。何もなければ一晩ぐらいは持つと思う」
「イオリ様は、過保護なのですよ」
「ふーん。まあ、分かった。ありがとな」
フィーネたち三人に魔法をかけた後、自身にも魔法を掛けて、もう一度フィーネ達におやすみ、と言うとテントに潜り込み、すぐに意識が闇に飲み込まれた。
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