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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第五話 イオリと支部長

 カウンターに並んでいた人たちやその他の室内に居た人たちへ話を順番に聞くので待機しているよう支部長は指示を出し、ケーネさんにも昼休憩が終わった職員が戻り次第、手分けをして事情を聞くように指示をしているようだ。

 しばらくそれらを見ながら待っていたところで、いつの間にか指示を出し終えるとカウンター奥の通路に移動していた支部長は俺達に対してついて来るように言う。

 フィーネと顔を見合わせ同時に頷くと、支部長に続き天板が跳ね上げられているカウンターの横から奥へと進む。

 支部長の後ろを追って通路を僅かに行くと応接室に通され、座るように言われる。


「改めて、さっきは悪かったな。先に自己紹介をしておくぜ。おれはこの探索者組合ロブアグリードダンジョン支部長のロベルトスだ」


 ロベルトス支部長が言うにはここは、冒険者協会とか冒険者ギルドじゃなく、探索者の組合で探索者組合、そしてダンジョン支部ってことはダンジョンがこの待ちにあるらしいな。

 探索者……か、これはダンジョンを探索するから探索者ってことなんだろう。

 それに支部って付いているってことは、ここの他にもダンジョンやそれに付随する……のかは分からないけど、探索者組合も複数あるってことなんだろうな。


「はい、(はた)から見ると誤解されてもしょうがない状態だったので気にしないでください。では改めて、俺はイオリで、こっちはフィーネと言います。ちょっとお金がないので、えっと探索者でしたっけ、それに登録してお金を稼ごうと思っています」

「フィーネです。よろしくお願いいたします」


 改めて自己紹介を行うと、ちょうどケーネさんが書類と飲み物を持って応接室に入ってくる。


「失礼します、支部長。登録用紙、宝珠、あと、空の組合カードはこちらに。飲み物はこちらに置いておきますね」

「ありがとうございます」

「おう、わりーな。ってことで、これに記入をしてくれや、っと、字の読み書きはできるか?」

「はい……大丈夫だと思います」


 用紙を確認すると探索者組合までの道なりで見た看板などと同じく、登録用紙の文字が読めるし書くこともできそうだ。

 本当に『言語習得補助』の加護、様々だな。


「先程は助けていただき、ありがとうございます。私はこの組合で主に受付業務をしている職員のケーネと申します。今後ともよろしくお願いします」


 登録用紙などを持ってきてくれたケーネさんは俺たちに挨拶をするとすぐに応接室から出ていった。


「とりあえず、先に用紙を埋めてくれ。話を聞いている間に探索者カードが用意できる。本来は規則の説明が先だが……まあ、問題ないだろう。組合の規則はケーネからカードをもらう時に話してもらえ」

「わかりました」


 組合の規則なんてものも、やっぱりあるんだな。

 まあ、その規則は後でケーネさんから教えてもらえる、と。


「用紙の内容の説明をするぞ。名前は必須だが、個人を識別するためだけの情報だから、まあ偽名でも規則的に問題ないが、殆どが本名か、名前の一部、あとはそうだな、あだ名で登録している奴もたまに居たな。名前以外の年齢や出身地、戦い方も組合が管理や融通が聞きやすくなるってだけだから必ず埋めなければダメだという事ではないな。戦い方は、そうだな、前衛と書いている奴や、もっと詳しくトスラ流剣士とか流派を書いている奴もいる。あとはパーティーを組むならパーティー名を書いておいてくれ」


 うーん、パーティー名か……特に考えていなかったけど、イオリと愉快な仲間とか……。

 うん、ないなこれは、これはない。

 さて、どうしようかな。


「イオリ様と愉快な仲間……ではどうでしょう?」

「いや、それは俺も思ったけど、だめだろうそれは」


 バッサリと俺に否定されて、がっくしと、項垂れるフィーネだけど、同じ思考をしているなぁ、まあ、それにする事はないけど。


「ああ、パーティー名は後から変更可能だぞ。たまに若気の至りで、とんでもないパーティー名を付けたはいいが、しばらくしてから、別の名前に変える、まあ、ようするに通過儀礼だな。そういった事があるから変えれるようになっている」


 なんか、ニヤッといい笑顔で言われたが、要するに、勢い余って所謂(いわゆる)厨二病的な痛い名前を付けて、黒歴史と化する事件があとを絶たないんだな。

 俺も、黒歴史にならないように気を付けよう、まあ、実際は前の世界で散々やったから、懲りたとも言う。

 さてはて、どんな名前にしようかな。


「うーん、『ストレンジャーズ』ってのはどうだろうか?」

「『ストレンジャーズ』ですか? 良い響きです。私はそれで良いと思いますけど、何か特別な意味があるのでしょうか?」

「えっとね、たしか、旅人って意味や異邦人って意味があったと思う。今の俺達にピッタリだと思わない?」

「たしかにそうです。今の私たちにピッタリです」


 ぱっと思いついたにしてはフィーネにも好評なようでよかった。


「おっ? パーティー名は決まったのか? まあ、気に入らなかったら、受付に言えば手続きしてくれるから覚えておけよ」


 ああ忘れてた、と言いながらロベルトス支部長は、ずずいーっと、とケーネさんが書類と一緒に持ってきた宝珠を俺たちの目の前に置く。

 そして、空の組合カード、とケーネさんが言っていた物を台座に差し込みむ事で登録の準備ができたようだ。


「この宝珠に手を(かざ)してくれ。それでカードへの個人の登録と賞罰が読み取れる。ちなみにこのカードに一度記録されたら書き換えは不可能だから気を付けろ」

「はい、わかりました」


 と言いフィーネに顔を向けると、お先にどうぞと言われたので、まずは俺から宝珠に手を(かざ)し登録を行うことにする。

 なんだか、どっかで聞いたことがあるような音が宝珠から鳴ると、ロベルトス支部長は、ふむふむと言いながらカードを取り出し、フィーネ用のカードに入れ替えると、フィーネの方を見て頷く。

 フィーネもそれに答え、俺と同じように宝珠に手を(かざ)し、登録が完了した。

 まず俺のカードの内容はこうだ。


----------------------------------------------------------------------

名前:イオリ

年齢:17歳

出身:(空欄)

戦い方:後衛、魔法使い

賞罰:(空欄)

パーティー:ストレンジャーズ

個人ランク:F

パーティーランク:F

----------------------------------------------------------------------


 そして、お願いしフィーネのカードの内容も見せてもらった。


----------------------------------------------------------------------

名前:フィーネ

年齢:18歳

出身:(空欄)

戦い方:前衛、剣士

賞罰:(空欄)

パーティー:ストレンジャーズ

個人ランク:F

パーティーランク:F

----------------------------------------------------------------------


 まあ、とりあえず、パーティー名は完全に思いつきで付けてしまったが、パーティー名を含めた登録内容はこのようにした。

 ちなみに、俺とフィーネは数ヶ月ほど誕生日が離れているらしく、出会ってしばらくはフィーネ自体が末っ子のためか、お姉さん風を吹かしていたのは懐かしい話だ、本人にこの話をすると顔が真っ赤になって恥ずかしがるんだよな。

 それはともかくとして、後衛で魔法使いと記入はしたけど、俺自体は実際は壁役は無理だけどアタッカーならできるし、フィーネも支援魔法を多少は使えるので、中衛でも通りそうな気がするが、まあ、そこは臨機応変に対応するということで。

 ちなみに、組合カード自体に通信機能が入っているようなことはないために、組合側でも記録の複製が必要とのことで、ロベルトス支部長が席を立ち、登録用紙と共にケーネさんに手渡しているのが、ドアの隙間から見えた。

 ところでケーネさんはずっと部屋の前に張り付いていたのだろうか?

 それともタイミングを見計らい部屋まで来たのだろうか?


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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