第四十九話 イオリとスキルや魔法の編集方法
「じゃあ、伝える前に一つ確認したいんだけど、ソータ達はスキルや魔法の選択をどういうやり方でやっているんだ?」
「スキルや魔法の選択ですか? えっと、普通に頭の中にスキルなり魔法なりの一覧を思い浮かべて、指で選択するようにしています。まあ、実際に指を動かしはしませんし、慣れれば対象のスキルや魔法そのものを選択するような感じになりますけど」
「なるほどね。そこは俺達と似たような感じなのか。じゃあ、スキルか魔法を選択する手順を意識的に、暫く、そうだな、俺が良いと言うまで選択し続けてくれ。あー、出来れば試すスキルあ魔法は効果が単純で間違って発動しても安全なもので試してみて欲しい」
「分かりました。魔法かスキルのどちらでもいいんですよね? では、えっと、暫くスキルを選択したままでしたっけ。やってみます」
この段階で躓くとしたら、そもそもの話で、ソータ達がスキルなり魔法なりを編集して別のものを作り出すことが出来ない、と言う事になるのかもしれない。
俺が気がついた方法以外にも方法が有るのかもしれないけど、それを探すのは大変だし、とりあえず俺はと言うと、すでに『編集モード』を表示することが出来ているので、別の方法を新たに探すと言うのは流石に遠慮願いたいものだ。
まあ、その時はその時で、ソータに丸投げすれば良いかもしれない。
うん、そうしよう。
しかし、あれだけ大口を叩いたのだから、うまく行くよな、いや、うまく行くはずだ。
「…… うーん、まだでしょうか?」
「まだ暫くだ」
うーん、三分ぐらい経っただろうか。
これだけ長い時間試しても選択肢が表示されていないようなので、流石にちょっと駄目かもしれないと思い始めている。
スキルや魔法の『編集モード』と俺が呼んでいる物を表示するための選択肢は、俺の場合、たしか約一分ぐらいで表示されたはずだ。
フィーネの生まれた世界では、いろんな人に試してもらったけど、平均して一分半、長くても二分半ぐらいで選択肢が出てきたから、もうそろそろ出てきても良い頃だと思うんだけどな。
ちなみに、この選択肢が表示されるまでの時間は、一番最初だけ特に時間が掛かるようで、鍵は開いたとばかりに次回以降は数秒で選択肢が表示される。
「……だめか。やはり魔法の体系が違うからかな」
「そうですね…… 残念で、えっ! あっ、ち、ちょっと待ってください……。 で、出来たみたいです。なんか、『手動編集』と『自動合成』、『自動分離』って選択肢が縦に並んで表示されてます」
「『自動合成』と『自動分離』だっけ? それは俺のにはないな。『手動編集』ってのは、『編集』のことかな? てっきりみんな同じ内容が表示されるものだと思ってたんだけど、世界が違うと内容も違うのか?」
「えっと、イオリくん?」
「ああ、ごめん。まあいいや。とりあえずは『手動編集』を選択してみてくれるか?」
魔法体系の違いで、選択肢の表示までにかかる時間や項目が変わるのだろうか?
その辺りはソータにしか選択肢が見えていない訳だし、俺にはどうにも出来ない話なので、まあ、ソータ自身に色々と試してもらうしかないかな。
「わっ! なんか、表示が目の前いっぱいに広がって文字が目一杯書かれた板が出てきましたよ! もしかして書かれているのは魔法を構成している文字ですか?」
「ああ、その広がった画面上で、その文字を変更したり追加したり、消したりして魔法やスキルを変えていくんだ」
そう、俺が『編集モード』と呼んでいる、その画面を出すまでの手順が俺が発見した部分だ。
そして、何故これを積極的に広めていこうとしているかと言うと、この先の魔法を構成する文字や記号が曲者で、教える教えない以前の問題で、どうやら、その人が考える魔法の構成が反映されるために俺には体系建てた教え方がうまくできなかった。
そういう訳で、まあ単純に誰かが確立してくれればいいし、そもそも、この発見自体もある意味単純な手順なので、俺が独占したとしても、そのうち誰かが見つけるだろうから、それなら別に隠しておくこともないかなと思い、独占しないことを条件にいろんな人へ積極的に教えていた。
ちなみに、俺の画面には、アルファベットや数字、ひらがな、カタカナ、そして漢字が複雑な連なりを持って、ただ、それだけではなく規則的な部分も有るような、頭がこんがらがる内容が表示されていたので、初めて見てから半日ぐらいはどうやっても理解ができなかったが、ある時を境に突如として理解しそれを使いこなせるようになったのは懐かしい話だ。
フィーネはと言うと、俺に教えられて、『編集モード』を表示した所、まず、その複雑さに目を回し、そして俺が出来るようになったので、俺に話を聞き、さらには頭から煙を出しながらも頑張ったが、結局使いこなせると言って良い状態までにはいかなかった。
「広がった画面の何処かに『動作確認』って書かれた部分がないか?」
「うーんと、あっ! 『動作確認』って書かれていて押せそうな部分が確かにありますね」
「それを押すと、作った魔法やスキルの確認が出来るんだ。作ってみたは良いけど、使ったら暴走しました、とかだったら嫌だろ? ある程度の確認が出来るから、中身を変えたら、時々試してみるといいと思う。ちなみに、書かれている文字や記号は、その人ごとに文法が違うみたいだから、残念だけど教えることが出来ない」
「なるほど。これは、たしかに、たとえ広めたとしてもどうしようもないですね。その人その人でやり方が違うから、結局のところ自分自身でなんとかするしかないですからね」
「まあ、そういうわけだ。誰かが系統建てて纏めてくれれば、と思うんだけどな」
ソータは、とりあえず試してみます、と言って目の前に出ているであろう画面を見ながら、あーでもない、こーでもないと、独り言をつぶやいている。
傍から見ると、ブツブツと呟いているその姿は完全に不審者に見えるな。
おっと、どうやらフィーネ達もこちらの様子に気がついたみたいだ。
「なあなあ、ソータは何をやってるんだ? 目の前の何かを見ているっぽいけど」
「ん? ああ、『編集モード』を教えたんだ」
「『編集モード』? なんだそりゃ? あれ? フィーネは知ってるのか? もしかして知らないのうちだけ?」
「えっとですね、『編集モード』と言うのは、イオリ様が発見したのですが、既存のスキルや魔法の内容を書き換えたり出来る技能、でしょうか。まあ、一言で言えば、そう言う類のスキルですね」
「ん? それを何でソータが知ってるんだ? あっ! もしかしてうちに内緒でアンタが教えたのか?」
「そういうことだな」
「えーソータだけなんてズルいぞ! うちも教えて欲しい!」
「まあ、待て待て。ソータが教えてくれるそうだから、それまでのお楽しみだ」
「しょーがないな。ん? フィーネは遠い目をしてどうしたんだ?」
「ええ。ちょっと、イオリ様に『編集モード』を教えていただいたときを思い出して。私にはちょっと使いこなせなかったです」
たしかに、フィーネに教えた当初は気合を入れて頑張っていたけど、思い通りにならない中で日に日にどんよりと、傍目から見ても落ち込んでいる様子がありありと分かる状況だった。
やはり向き不向きは有るようで、頭から湯気を出しながら頑張って頑張って、やっとの事で出来た成果が、水をぬるま湯にする魔法で、しかも温度も安定しないという有様だったので、完成した直後に魂が抜けたような状態のフィーネを宥めるのが大変だった。
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